AIインフラの「新時代」を築く:Modal CEOが語る推論市場の深層と未来戦略
AI革命は、私たちの働き方、ビジネスのあり方、そして社会そのものを根底から変えようとしています。この未曾有の変革の最前線で、AIアプリケーションの基盤を支える「新しいクラウド」を構築しているのが、Modalという企業です。共同創業者兼CEOのエリックは、わずか5年でModalを年間経常収益(ARR)10億ドル規模、評価額157.5億ドルという驚異的な成長を遂げさせました。最近ではAccel主導で7.5億ドルの資金調達も発表し、その勢いはとどまるところを知りません。
この記事では、エリックが語る推論市場の深層、ModalがどのようにしてAIインフラの課題を解決し、未来を切り開いているのかを詳細に分析します。彼のユニークな起業家哲学、GPU供給の現実、競争環境、オープンソースLLMの役割、そしてAIが社会にもたらす広範な影響について、多角的な視点から掘り下げていきます。
1. 序章:AI革命の最前線に立つModalとそのビジョン
ChatGPTの登場以来、私たちはAIがもたらす可能性の片鱗を垣間見てきました。この技術革新は単なる一過性のトレンドではなく、インターネットの登場に匹敵する、あるいはそれ以上の社会変革を引き起こす「新しいクラウド」の時代を告げています。Modalは、このAI革命の隠れた立役者として、AIアプリケーションの実行基盤となるインフラストラクチャを提供しています。
AI時代の幕開けとModalの台頭
Modalの成長曲線は目を見張るものがあります。設立からわずか5年でARR10億ドルを達成し、評価額は157.5億ドルに達しています。最近発表されたAccel主導による7.5億ドルの資金調達は、その潜在的な市場規模とModalへの期待の表れと言えるでしょう。この急速な成長は、AIインフラに対する計り知れない需要を浮き彫りにしています。エリック自身も、この市場が自身の予想を10倍、いや100倍も上回る規模に拡大していることに驚きを隠しません。彼は、この巨大な機会こそが「1000億ドル規模の企業を inference (推論) の専門モデルで創出する機会」であると確信しています。
Modal CEO Ericの人物像と哲学
エリックのキャリアは、8歳でプログラミングを始めた1992年にまで遡ります。Mac Plusでゲームを作り始めた少年が、やがてAIインフラの最前線を走る企業のCEOになるとは、当時想像だにしなかったでしょう。彼は、自身の「趣味」であったプログラミングが、今や多大な収益を生み出していることに「クレイジー」だと感じつつも、テクノロジーへの愛と感謝を忘れていません。
彼の起業家としての道のりは、一般的な成功譚とは少し異なります。スタンフォードの21歳で起業するような若者とは異なり、エリックがModalを創業したのは36歳か37歳の時でした。彼自身の言葉によれば、「一貫して自信が足りなかった」ことが起業を遅らせた理由だと語ります。しかし、市場に「誰もやっていない、あまりにも明白な大きな機会」を見出したことが、彼を起業へと駆り立てました。「もしかしたら、私が会社を始めるべきなのかもしれない」という思いから始まったModalは、5年後に目覚ましい成功を収めることになります。彼は、理想的な起業年齢を「32歳くらい」と見ており、ある程度の経験が人との付き合い方、採用、解雇といったビジネス運営に必要なスキルを育むと考えています。
エリックの仕事に対する価値観も独特です。彼は、起業が「ガラスを食べるようなもの」という一般的な見方に強く反論します。もし毎日が苦痛ならば、なぜ続けるのか?彼は、その苦痛の先に「魔法のような大きな報酬」を期待するような考え方を理解できないと言います。エリックにとって、仕事は日々の楽しみであり、会社を売却して一過性の利益を得るよりも、20年、30年、40年、50年とこの会社で働き続けたいという情熱を抱いています。「会社を売却しても、またModal 2を始めるだけだろう」と語るほど、彼はModalでの仕事に夢中になっています。
金銭的な価値観についても、彼はスウェーデン人としての視点を示します。アメリカではお金が最優先されがちですが、エリックにとってはお金そのものよりも「自己実現」、つまり自分が本当に楽しめることを追求することこそが最高のプレステージであると考えます。もちろん、資金調達は重要であり、特に「ネオクラウド」と呼ばれる企業が金融工学に長けていることにも敬意を表しますが、Modalでは「必要な以上の資金は調達しない」という方針を貫いています。VCは常により多くの資金を投入したがるが、それは創業者の希薄化を招くため、むしろ「少ない資金でVCを次のラウンドに向けて飢えさせておく」方が良いとさえ考えています。唯一嫌いな仕事として資金調達を挙げ、ピッチデックを作ったこともないと語るエピソードからも、彼のユニークなアプローチが伺えます。
本記事の目的
本記事では、このようなエリックの哲学とModalの事業戦略を深く掘り下げます。私たちは以下の問いに対する答えを探ります。
- Modalはどのような技術的アプローチでAIインフラの課題を解決しているのか?
- エリックが語る推論市場の「見過ごされている真実」とは何か?
- GPU供給の狂乱の時代に、Modalはいかにして容量を確保し、効率的に運用しているのか?
- オープンソースLLMとフロンティアモデルの競争と共存の未来は?
- AIエージェントの普及は、ソフトウェアエンジニアの仕事にどのような影響を与えるのか?
これらの分析を通じて、読者がAI時代のインフラの重要性、具体的な機能、ビジネスへの影響、そして将来性を理解できるよう、詳細で説得力のある情報を提供することを目指します。
2. Modalの核心技術とAIインフラ再構築への挑戦
Modalの成功の根幹には、既存のクラウドインフラの常識を覆す、大胆かつ革新的な技術的アプローチがあります。彼らは単なるAIモデルのホスティングサービスではなく、AIワークロードに最適化された「新しいクラウド」そのものをゼロから再構築しています。
「新しいクラウド」の創造
従来のクラウドコンピューティングは、汎用的なワークロードに対応するために設計されたKubernetesやDockerのようなコンテナオーケストレーションシステムに大きく依存してきました。しかし、AIワークロード、特に大規模な推論や学習は、極めて特殊な要求を持っています。高並列性、バースト的な需要、そして何よりもGPUといった専用ハードウェアへの最適化が不可欠です。
エリックは、これらの課題に対応するため、Modalでは既存のKubernetesやDockerといった技術を使用せず、独自のスタックを構築したと明言します。具体的には、自社開発のコンテナファイル、ファイルシステム、コンテナランタイム、そしてスケジューラを運用しています。このアプローチは、AIワークロードの特性に完璧に合致するように設計されており、既存の技術ではなし得ないレベルのパフォーマンスと効率性を実現しています。
なぜ、これほどまでに複雑な独自スタックを構築する必要があったのでしょうか?その理由は、AI時代の「ソフトウェア」の定義そのものにあります。従来のソフトウェアがCPU上で動作し、比較的予測可能なリソース消費パターンを持っていたのに対し、AIアプリケーションはGPUのような特殊なハードウェアを必要とし、その利用パターンは非常に動的で不規則です。この根本的な違いに対応するためには、既存のインフラを流用するだけでは不十分であり、AIファーストの思想に基づいた全く新しい基盤が必要だったのです。この技術的深さが、競合他社が容易に模倣できないModalの「堀(moat)」となり、市場での強力な競争優位性を築いています。エリックは、Ben Thompsonの「ジンジャーブレッドマン戦略」を引用し、「私たちは堀を持っていない。ただ速く走るだけだ」と謙遜しますが、この独自スタックの構築は、彼らが誰よりも速く走り続けるための強力な足場を提供していると言えるでしょう。
GPUオーケストレーションの魔術師
AI時代の最大のボトルネックの一つは、GPUの供給です。エリックは、NVIDIAの大型カンファレンスであるGTCを「オープンエアのドラッグマーケット(青空麻薬市場)」になぞらえ、GPU調達の狂乱ぶりをユーモラスに表現しています。500ものクラウドベンダーと交渉し、「GPUはありますか?」と問い詰めるような状況は、この市場がいかにクレイジーであるかを示しています。
Modalは、この狂乱の市場でGPUを確保し、最大限に活用するための独自の戦略を確立しています。彼らは現在、25以上の「ネオクラウド」プロバイダーと提携し、世界中のGPU容量を集約しています。この集約されたコンピュートリソースを「一つの巨大なプールとして扱う」というビジョンこそが、ModalのGPUオーケストレーションの中核をなしています。
彼らのシステムは、数千もの顧客が抱える極めて予測不可能なAIワークロードを、全体として「滑らかな」需要曲線として管理することができます。個々の顧客のワークロードは、日中や時間帯によって大きく変動し、バースト的な需要が生じますが、これらをプール全体で平均化することで、GPUの利用効率を劇的に向上させています。
この効率的な需給管理は、顧客にとって計り知れない価値を提供します。
- 容量計画不要(No Capacity Planning):AI開発者は、将来どれだけのGPUが必要になるかを正確に予測する必要がありません。Modalがその負担を肩代わりします。
- 従量課金(Pay-as-you-go):顧客はGPUを「GPU秒」単位で利用した分だけ料金を支払います。これにより、未使用のGPUに対する無駄なコストが発生しません。
- 急なスケールアップに対応(Rapid Scaling):予期せぬ需要の急増にも、Modalは自動的に大量のGPUを供給できます。
このスケーラビリティと柔軟性を象徴する成功事例として、エリックはType Safeのケースを挙げます。Type SafeはModal上で一夜にして製品をローンチし、Modal側が意識しないうちに自動的に大量のGPUを供給され、急成長を遂げました。この「魔法」のような体験こそが、Modalが顧客に提供する価値の核心です。
GPU市場の現実と将来予測
GPUの調達リードタイムは現在3~4ヶ月に及びます。Modalは、全顧客の需要を総合的に見て、月間30~40%という驚異的な成長率に基づいて、3~4ヶ月先の需要を指数関数的に予測し、必要な容量を先行して確保しています。この大胆な投資は、将来の需要に対する強い自信の表れです。
GPU容量不足に関する一般的な認識に対し、エリックは「NVIDIAは毎月、信じられないほどの量のGPUを出荷している」と指摘し、容量不足は必ずしも絶対的なものではないと示唆します。「他者より多く支払う意思があれば、大量のGPUを得ることができる」という発言は、現在のGPU市場が高値でも買い手が殺到する「供給者優位」の状態であることを示しています。
GPUの価格動向については、エリックは「ハードウェア価格は重力のように、非常に長い目で見れば必ず下落する」と述べつつも、現状は供給不足により価格が高騰していることを認めます。この状況が1年続くのか、2年続くのか、あるいは5年続くのかは不明ですが、最終的には価格は落ち着くという長期的な視点を持っています。しかし、「今後5年間は過剰供給になることはないだろう」という彼の見解は、AIのコンピューティング需要が計り知れないほど大きいことを示唆しています。
このGPUに関する戦略と洞察は、Modalが単なる技術企業ではなく、資本市場のダイナミクス、サプライチェーンの複雑性、そして未来の需要予測といった多岐にわたる側面を深く理解していることを示しています。彼らは、AI時代のインフラを支える上で、技術革新と同時に、このような「汚い仕事」を厭わない実務的なアプローチが不可欠であることを知っているのです。
3. 推論市場の深層:Ericが語る「見過ごされている真実」
エリックは、推論市場が持つ真の可能性と、一般にはあまり認識されていないその深層について、いくつかの重要な洞察を提示しています。彼の視点は、この市場を単なるハードウェアや基本サービスの提供にとどまらない、より戦略的で多角的なものとして捉えています。
計り知れない市場規模:新しいクラウドとしての推論
エリックは、推論市場が「新しいクラウド」であると断言します。そして、その規模は彼自身の当初の予想を10倍、いや100倍も上回る、文字通り「途方もなく巨大な市場」になっていると語ります。これは、AIアプリケーションの普及が単なる既存サービスの置き換えに留まらず、全く新しいユースケースを創出し、コンピューティング需要を爆発的に増大させている「ジェボンズのパラドックス」的現象が起きていることを意味します。
彼が例に挙げるのは、彼自身のInstinctの利用状況です。コンサートチケットの購入から番組の企画、母親の投薬管理まで、100以上の自動化をInstinctで実行していると言います。彼一人のコンピューティング使用量が「ジェボンズのパラドックスの100倍」であるとすれば、社会全体にこの傾向が波及した際、コンピューティング需要がどこまで伸びるかは想像を絶します。エリックは「私たちはまだ非常に初期段階にいる」と強調し、今後5年間は供給過剰になることはないだろうと予測しています。
コモディティ化からの脱却:周辺サービスの重要性
推論市場が拡大するにつれて、多くの企業が参入し、単に「トークンをドルで売る」だけのサービスはコモディティ化のリスクに直面します。このような市場では、価格競争が激化し、「底辺への競争(race to the bottom)」に陥りがちです。
Modalは、このコモディティ化を避けるため、推論サービスを単体で提供するのではなく、周辺の多種多様なプロダクトと組み合わせた包括的なプラットフォームとして提供する戦略を採っています。エリックが特に強調するのは、以下の要素です。
- ポストトレーニング(Post-training):モデルの最終的な最適化や微調整。
- サンドボックス(Sandboxes):安全な環境でのコード実行やエージェントのテスト。
- エージェント機能(Agentic stuff):自律的にタスクを実行するAIエージェントのサポート。
- ワークフロー(Workflows):複雑なAIタスクのオーケストレーション。
- 強化学習(Reinforcement Learning):試行錯誤を通じてモデルを改善する手法。
- 低遅延推論(Low-latency inference):リアルタイム応答が求められるアプリケーション向け。
- バッチ推論(Batch inference):大量のデータをまとめて処理する効率的な推論。
顧客が本当に求めているのは、「単一のトリックしか使えないポニー」ではなく、「素晴らしいAIアプリケーションを構築するためのツール群のポートフォリオ」なのです。これらの周辺サービスをインフラレベルで提供することで、Modalは単なる推論プロバイダーを超え、強力なスイッチングコストと高い顧客粘着性を生み出しています。エリックは、これら全てのプロダクトを支えるインフラストラクチャを構築すること自体が非常に難しく、複製が困難な差別化要因となると語ります。Modalが過去5年間この分野で積み上げてきた技術的資産は、容易に追いつけるものではありません。
粗利の機会:従来のソフトウェアモデルとの違い
かつてのシリコンバレーでは、90%以上の粗利率を誇る「ソフトウェアマージン」が一般的でした。しかし、エリックは「今日の企業はほとんどソフトウェアマージンを持っていない」と断言します。その理由は、AIスタックの「トポロジー的」な性質にあります。
AIアプリケーションのスタックは、以下の層から構成されます。
- アプリケーション(Applications)
- モデル(Models)
- インフラ(Infrastructure)
- クラウド(Cloud)
- NVIDIA(NVIDIA)
顧客が最上位のアプリケーションに1ドル支払うと、そのお金はこれらの多層構造を流れ、各層で20~30%程度の粗利が計上されます。これにより、最上位のレイヤーが受け取る最終的なマージンは大幅に圧縮されます。
しかし、エリックはそれでもなお、AIインフラ市場には「非常に多くの粗利機会」があると主張します。Modalが周辺サービスを包括的に提供することで、スタック内でより多くの価値を捕捉し、顧客の支払う1ドルからより多くの利益を確保できると見ています。Modalは、長期的に40~50%、さらには60%の粗利率を目指しており、従来の「ソフトウェアマージン」には届かないものの、非常に収益性の高いビジネスモデルを構築できると考えています。この洞察は、単なる技術力だけでなく、ビジネスモデルと経済学への深い理解に基づいています。
市場の専門分化とModalの対応
推論市場の規模が巨大化するにつれて、ニーズも多様化し、市場は「多くの異なるものに分裂していく」とエリックは予測します。低遅延推論、高遅延推論、さまざまな種類のファインチューニングやポストトレーニングなど、特定のニッチに特化したソリューションが求められるようになるでしょう。新しいハードウェアやリソース効率の高い技術も登場する可能性があります。
この専門分化は、一見すると包括的なプラットフォーム戦略と矛盾するように思えるかもしれません。しかし、エリックはこれを「製品による専門化」と捉えています。Modalは、これら多様な専門化されたプロダクトを、全てModalプラットフォーム上で構築し、ホストすることで対応します。
例えば、ある企業は低遅延推論を必要とし、別の企業はバッチ推論を必要とし、さらに別の企業はサンドボックスや独自の事前学習モデル(例:特殊なオーディオモデル)を必要とするかもしれません。Modalは、LLM推論だけでなく、これらの多様なAIワークロード全てに対応することで、AI時代のクラウドを「再構築し、再構築する」という壮大なビジョンを追求しています。これは、従来のクラウドが提供してきた汎用的なサービスを、AIの文脈に合わせて解体し、再構築するプロセスだと言えるでしょう。
4. 競争優位性とブランド戦略
激化するAIインフラ市場において、Modalはどのようにして競争優位を確立し、その地位を揺るぎないものにしているのでしょうか。エリックは、技術的な深堀り、スピード、そして独自のブランド構築の重要性を強調します。
技術的「堀」の深さ
エリックは、Modalが過去5年間で築き上げてきたインフラスタックの複雑性と深さが、競合他社にとって容易には模倣できない強固な「堀」となっていると語ります。独自のファイルシステム、コンテナランタイム、スケジューラなど、これら全てをゼロから構築し、毎分数百万ものサンドボックスを配置し、数千ものGPUをスケールアップ・ダウンさせ、数十万ものタスクを同時に実行できるシステムは、一朝一夕には真似できません。エリック自身が「インフラオタク」であることを自認し、これらの「難しいエンジニアリング問題」に取り組むことを楽しんでいることからも、その技術への深いコミットメントが伺えます。
彼はまた、ベン・トンプソンがSnapについて語った「ジンジャーブレッドマン戦略」に言及します。Snapは明確な「堀」を持たないが、「他の誰よりも速く走る」ことで競争優位を保っているという考え方です。エリックは、この戦略が今日のほとんどのスタートアップに当てはまると考えており、Modalもまた、絶えず進化し、誰よりも速く市場の変化に対応することで、優位性を維持しようとしています。これは、技術的優位性を不断の努力によって維持していくという、動的な競争戦略を示唆しています。
ブランドとコミュニティの力
技術的優位性だけでなく、エリックは「ブランド」の価値が近年大きく高まっていると指摘します。彼は、Spotifyでの消費者向けプロダクト開発の経験が、ModalのようなB2Bの技術企業において「開発者体験」と「ブランド」を重視する現在の戦略に繋がっていると語ります。
Modalのブランド戦略は、ウェブサイトへのアクセスから製品の試用に至るまで、「異なる」と感じさせる「マジックモーメント」を創造することにあります。ビジュアルアイデンティティ、製品のパッケージング、イベントを通じて「良い雰囲気(good vibes)」を作り出し、オンラインコミュニティでの活発な議論を促しています。エリック自身、「私は究極のオンライン人間だ」と語り、競合他社の動向やツイートを常にチェックし、Modalを取り巻くコミュニティの感情を敏感に捉えています。
彼は、Type SafeのJeff Deanのような「個性」を持つことの重要性を強調します。Jeff Deanがピンクの毛皮のコートを着て、熱狂的に「Jevolution(ジェイブォリューション)」について語る姿は、単なる技術的な優位性だけでなく、人々に「ムーブメント」や「コミュニティ感覚」を抱かせ、「クールな製品」という認識を生み出します。エリックは、Modalもそのような「クールな製品」でありたいと願い、開発者が「Modalを試した?かなりクールだよ」と語り合うようなブランドを築くことを目指しています。
彼自身、初期のModalの成長においては、Twitterでの積極的な「クソ投稿(shitposting)」が大きな役割を果たしたと認めています。自分たちが何を構築しているかをツイートし、人々に製品を試すよう促し、多くの人々がエンジェル投資家やサポーターになったと言います。これは、伝統的なマーケティング手法とは一線を画す、AI時代におけるボトムアップ型のPLG(プロダクト・レッド・グロース)戦略であり、コミュニティの熱狂をビジネス成長の原動力とするアプローチです。
NVIDIAエコシステムの支配力
AIハードウェア市場におけるNVIDIAの支配力は圧倒的です。エリックは、CUDAが単なるプログラミングモデル以上の「エコシステム」として機能していることを強調します。CUDA自体は「扱いにくいプログラミングモデル」であると認めつつも、その周囲に築かれたカーネル最適化、PyTorchなどのフレームワークにおけるNVIDIA優先のサポート、VLMやSLANといったオープンソースエンジンとの連携が、NVIDIAの揺るぎない地位を確立しています。
彼は過去15年間、「来年こそは非NVIDIA系アクセラレータの年だ」と予測し続けてきたが、常に間違ってきたとユーモラスに語ります。Tranium、TPUs、AMDといった競合も追い上げてはいるものの、NVIDIAのリードは依然として大きいという認識です。
NVIDIAがオープンソースモデルのエコシステムに注力していることについては、「非常に賢明な戦略」だと評価しています。オープンソースモデルは開発に多大なリソースを必要とし、NVIDIAはそれらの企業を買収したり支援したりすることで、「アメリカ製モデル」のエコシステムを育成し、自社のハードウェアへの需要をさらに喚起しています。これは、プラットフォーム企業がエコシステム全体を支配する上で不可欠な戦略であり、NVIDIAの先見の明を示すものです。
ネオクラウドとの複雑な関係:友人か、それとも敵か?
AIインフラ市場には、NebiusやCoreWeaveのような「ネオクラウド」と呼ばれる企業も台頭しています。エリックは、彼らがModalのパートナーであると同時に、潜在的な競合でもあるという「奇妙な関係」にあると語ります。「スタートアップ界では皆が友人であり敵」という彼の言葉は、この複雑なエコシステムをよく表しています。
ネオクラウドの中には、Modalのように推論レイヤーへの進出を試みる企業もあります。しかし、エリックは、Modalが過去5年間で構築してきた「信じられないほど複雑なインフラスタック」を彼らが容易に複製できるかについては懐疑的です。
CoreWeaveについては、彼らの「金融工学」における卓越した能力を高く評価しています。長期顧客契約を確保し、それを担保に大規模な資金調達を行い、チップを購入し、サービスを提供し、債務を返済するという一連の「金融的ダンス」をCoreWeaveは非常に巧みに実行しています。これは、AIインフラ企業が技術力だけでなく、資本調達と資金管理の面でも優れている必要があることを示唆しています。
Modalは、ネオクラウドが提供するGPUリソースを活用しつつ、彼らが上流に進出しようとしても、Modalが持つ独自技術の深さと効率性で差別化を図るという戦略をとっています。
5. オープンソースLLMとフロンティアモデルの共存と進化
AIモデルの世界では、OpenAIやAnthropicのような企業が開発する「フロンティアモデル」と、Llamaのようなコミュニティによって開発される「オープンソースモデル」という二つの潮流が存在します。エリックは、この両者が互いに競争しながらも共存し、市場全体を拡大させていくという見方を示しています。
オープンソースの永続的な価値
エリックは、オープンソースモデルが「常に素晴らしいモデルを生み出し続けるだろう」と確信しています。フロンティアモデルの性能向上や低コスト化が進む中でも、オープンソースモデルには固有の価値があります。
- 制御性(Control):企業はモデルのパラメーターを微調整し、独自の要件に合わせて最適化できます。
- ファインチューニング(Fine-tuning):特定のデータセットでモデルを学習させ、業界特化の高性能モデルを構築できます。
- 低遅延・高スループット(Low-latency, High-throughput):特定のユースケースに最適化されたモデルを実行し、フロンティアモデルでは実現しにくいパフォーマンスを追求できます。
- 透明性と安定性(Transparency & Stability):基盤モデルの変更に左右されず、一貫した動作を保証できます。これは、フロンティアラボが予告なく基盤モデルを変更し、既存のアプリケーションに影響を与える可能性があるのと対照的です。
エリックは、オープンソースモデルが「ライセンスモデル」へと移行しつつあることにも注目しています。これにより、オープンソース開発者はモデルの価値を収益化し、より優れたモデルを開発するための資金を得ることが可能になります。これは、オープンソースエコシステムの持続可能性を高め、さらなるイノベーションを促進するでしょう。
地政学的な視点から見ても、エリックはオープンソースモデルの多様性が重要であると強調します。中国のラボが非常に優れたモデルを開発していることを認めつつも、「より多くの力が分散されることが世界にとって良い状況だ」と語り、ヨーロッパやアメリカ発の競争力のあるモデルの登場を期待しています。ヨーロッパは人材(ヒューマンキャピタル)が豊富であるものの、それを大規模な企業に集約し、巨額の資金を調達する能力に課題があることを指摘しています。
フロンティアモデルの台頭とコスト効率
HaikuやAnthropicの最新モデルが「信じられないほど高性能で信じられないほど安い」という事実は、フロンティアモデルの競争力を高めています。これにより、「オープンソースLLM推論の利用はピークに達し、フロンティアモデルが市場を席巻する」という見方(Jason Laninの説)も存在します。
しかし、エリックはこの見方に異議を唱え、「それはパイのサイズが固定されているという考え方だ」と反論します。彼は、推論市場全体が今後12ヶ月で5倍、10倍、20倍と成長すると予測しており、フロンティアモデルもオープンソースモデルも両方とも大きく成長する余地があると考えています。市場が全体として爆発的に拡大する中で、どちらかが一方を淘汰するというよりは、それぞれ異なるニーズに応えながら共存・成長していくという見方です。
企業が「自社の知能(own their own intelligence)」を所有すべきかという問いに対して、エリックは「全ての場合にそうであるわけではない」と現実的な見方を示します。特定のユースケース、例えばオープンソースモデルをファインチューニングすることで、非常に優れたパフォーマンスと制御性を得られる場合は、自社で知能を持つことが理にかなっています。しかし、レイテンシ、コスト、パフォーマンス、ハッカビリティ、そしてModalのような包括的なプラットフォームの利用といった、他にも多くの重要な要素が存在します。
Modalのビジネスモデルは、この多様性を支持します。Modalは汎用プラットフォームであり、オープンソースモデルを利用したい顧客も、Type Safeのように独自のプロプライエタリモデルをホスティングしたい顧客も、どちらもサポートします。「Open Sourceモデルを使いたいなら、素晴らしい。我々が手助けしよう。プロプライエタリモデルを使いたいなら、それも素晴らしい。我々が手助けしよう」というスタンスは、Modalが特定のモデルタイプに依存せず、AIアプリケーション開発者全体を支援するインフラを提供するという、柔軟で強力なビジネスモデルを持っていることを示しています。
モデルのアンバンドリングと専門化
推論市場の巨大化は、モデルの「アンバンドリング(unbundling)」、すなわち機能ごとの専門化を促進します。市場規模が数十億ドルから数百億ドル規模に拡大すると、その中に多くの異なるサブマーケットが形成されます。例えば、Type Safeが分類や回帰といった特定のタスクで非常に優れているように、特定の機能に特化したモデルが、そのニッチ市場で大きな価値を生み出す機会が生まれます。
このような専門化は、Modalがプラットフォームとして提供する多様な製品とシームレスに連携します。Modalは、これら多様な専門化されたモデルが効率的に動作するための基盤を提供し、AIエコシステム全体の多様性とイノベーションを促進する役割を担っています。
6. Modalの未来戦略:製品の多角化と市場の拡大
Modalの現在の成功は、単なる推論サービスに留まらない、多角的な製品戦略と長期的なビジョンによって支えられています。エリックは、短期的な市場のトレンドに流されることなく、将来的に不可欠となる「ビルディングブロック」を先行して構築するという、インフラ企業ならではの哲学を持っています。
第二、第三のプロダクトの育成
Modalの製品ポートフォリオの中で、最も驚異的な成長を遂げたのが「サンドボックス」です。2023年にローンチされたこの製品は、初期にはそこまで大きな成功を収めませんでした。しかし、転機となったのは2025年夏に起こった「大規模言語モデル(LLM)によるコード生成能力の爆発的な向上」でした。エリックは、「Claude 4.5のようなモデルがコード生成とアプリ構築の能力で本当に良くなった時、サンドボックスの利用が爆発的に増えた」と語ります。現在、サンドボックスは年間3億ドル規模のビジネスへと成長し、Modalの総収益の約3分の1を占めています。
このサンドボックスの成功は、Modalの「ビルディングブロック」哲学の正しさを証明しています。エリックは、インフラ企業であることの利点と課題について次のように語ります。「インフラでは、重要なプリミティブ(基本要素)とは何かを直感で信じ、素晴らしいビルディングブロックを構築するしかない」。エンジニアの個々の要望に耳を傾けすぎると「あらゆる種類のランダムなもの」を要求されるため、それらを「ビルディングブロック」という本質的なニーズに昇華させることが重要だと考えています。
Modalは、2021年にサーバーレス関数製品をリリースしましたが、その時点では「Stable Diffusion」のようなキラーアプリの登場を予期していませんでした。しかし、2022年のStable DiffusionとChatGPTの登場が、このサーバーレス関数に「Gen AI推論」という最大のユースケースをもたらしました。同様に、2023年にサンドボックス製品をリリースした時点では、LLMによるコード生成がこれほどまでに普及することを完全に予測していませんでしたが、結果的にこれがキラーアプリとなりました。エリックは、この「タイミング」において「非常に幸運だった」ことを認めつつも、「将来に役立つと予測される製品」を構築するという信念と直感の重要性を強調しています。
新たな成長ドライバー
サンドボックスの成功に続き、Modalはさらなる製品の多角化を進めています。エリックが特に期待しているのが、最近ローンチした「トレーニング製品」です。これは今後6〜12ヶ月で年間1億ドル規模のビジネスに成長する可能性があると見ています。
その他にも、以下のような製品や領域への拡張を構想しています。
- バッチジョブ(Batch jobs):大量のデータを非同期的に処理する。
- 強化学習(Reinforcement Learning):試行錯誤を通じて最適な行動を学習する。
- ポストトレーニング(Post-training):モデルの最終調整と最適化。
- データウェアハウジング(Data warehousing):大規模データの保存と分析。
- データベース(Databases):AIアプリケーションのデータ管理。
- ワークフローオーケストレーション(Workflow orchestration):複雑なAIパイプラインの自動化。
- 特徴量ストア(Feature stores):機械学習モデルの特徴量を管理。
- ベクトルデータベース(Vector databases):エンベディングの保存と検索。
- 継続的インテグレーション(CI: Continuous Integration):ソフトウェア開発プロセスの自動化。
- エージェントハーネス(Agent harnesses):AIエージェントの実行環境。
- モデルトレーニング(Model training):独自のAIモデルの学習。
エリックは「私はアイデアに事欠かない」と語るほど、これらの「自然な隣接性」を持つ領域に強い興奮を覚えています。彼の「ADHD脳はあらゆる方向に走りたがる」と表現するほど、多くの可能性を見出していますが、同時に「優先順位付けとリソース配分において極めて冷酷であること」の重要性も認識しています。多角化戦略は、リソースが分散し、コア事業が希薄化するリスクも伴うため、このバランスが成功の鍵となります。LLM推論へのリソース配分が初期段階で不足していたことへの反省も語っており、常に市場の動向を正確に捉え、迅速に戦略を調整していく柔軟性も持ち合わせています。
モデルルーティングの展望
「モデルルーティング(Model Routing)」は、複数のAIモデルの中から最適なものを選択し、トラフィックを振り分けるサービスです。エリックは、これが単体で「成功するビジネスを構築することは可能だ」と考えており、自身もOpenRouterに個人投資し、その成功を目の当たりにしています。
しかし、彼の長期的な視点では、「より包括的なプラットフォームの一部である必要がある」と見ています。モデルルーティングだけでは、顧客はモデルの評価、ファインチューニング、パフォーマンス(遅延、スループット)のより深い制御、そして多様な隣接サービスを求めるようになるため、単一の機能では限界があると感じています。これは、Modalの包括的なプラットフォーム戦略と一貫しており、あらゆるAI関連サービスが統合されたエコシステムの中で提供されるべきであるという彼の信念を反映しています。
7. AIが描く社会の未来と人間の役割
AIの急速な進化は、社会のあらゆる側面に深い影響を与え、特に労働市場や産業構造に大きな変革をもたらすことが予想されます。エリックは、この未来に対して強い楽観主義を抱きつつ、いくつかの重要な洞察を提供しています。
ソフトウェアエンジニアの変革と進化
AI、特にAIエージェントによるコード生成能力の向上は、「ソフトウェアエンジニアの仕事はなくなるのか?」という問いを頻繁に引き起こします。エリックは、30年にわたるコーディング経験を持つプログラマーとして、この問いに対し明確な「ノー」を突きつけます。彼は、歴史が示すように、「プログラマーがより効率的になるたびに、ソフトウェアへの需要は増大してきた」と強調します。
彼は、AIによる効率化がソフトウェアエンジニアの役割を「スタックの上層」へとシフトさせると見ています。60年代にはアセンブリ言語やパンチカードでコードを書いていたが、コボル、C++、Pythonと進化し、そして今やエージェントへと移り変わっています。この進化は、プログラマーがより低レベルな実装の詳細から解放され、より抽象的で高レベルな問題解決、すなわち「人間とのインターフェース」としての役割を強化することを意味します。
「開発者の仕事は英語からコードへの翻訳ではない」とエリックは指摘します。その核心は、「まず要件を理解すること」であり、人間が求めるもの(プロセス、ワークフローなど)をソフトウェアに落とし込むことです。AIエージェントはコード生成を効率化しますが、その基盤となる「何を構築すべきか」という要件定義と設計の役割は、依然として人間のエンジニアに委ねられます。エリックは、この傾向が今後10年、20年と続き、ソフトウェアエンジニアの需要は堅調に推移すると極めて楽観的な見通しを示しています。
AIエージェントの社内活用と未来
Modalは、社内でも積極的にAIエージェントを活用しています。現在、Modalがコーディングエージェントに費やす費用は月額約50万ドルに上ります。これは、150人規模のエンジニアリングチームを抱える同社にとって決して少なくない額ですが、エリックは「もっと使われるべきだ」と考えています。彼は、AnthropicのClaude Codeや類似のツールがもたらすコスト効率化が、最終的にはエンジニアのワークフローをより多く取り込み、全体としてのコンピューティング需要を増大させると予測しています。
「何かをより効率的で強力にするたびに、それは5つの新しいユースケースを解き放ち、最終的に需要は増大する」という彼の言葉は、過去50年にわたるコンピューターとソフトウェアの歴史が示してきた真理です。AIエージェントは、ソフトウェア開発の生産性を向上させると同時に、これまで想像もできなかったような新しいソフトウェアやアプリケーションの開発を可能にし、結果としてコンピューティングリソース全体の消費量を押し上げるでしょう。
データ市場の重要性と進化
AIモデルの学習と推論を支える「データ」は、AIエコシステムにおいて極めて重要な要素です。エリックは、「20歳で大金を稼ぎたければ、データ企業を立ち上げてフロンティアラボにデータを売るべきだ」と語るほど、データ市場の収益性を強調しています。彼は、この領域で「非常に多くの金が稼げる」と指摘し、実際に多くのスタートアップがこの分野で成功を収めていることを確認しています。
しかし、エリックは、長期的な観点から見ると、単にデータを売るだけのビジネスは「ベンチャートレッドミルに乗るべきではないかもしれない」と忠告します。真に持続可能なビジネスを構築するためには、「データ取得から展開、実装、評価、モニタリングまで」の「フルライフサイクル」をカバーし、企業に「エンタープライズハンドホールディング能力」を提供することが不可欠であると見ています。これにより、マージンを拡大し、長期的なビジネスとしての「堀」を築くことができるでしょう。
データセットの販売は、短期的には「極めて良いキャッシュフロー」を生み出すビジネスですが、長期的な価値創出のためには、より深く顧客のニーズに寄り添い、ソリューション全体を提供する能力が求められるということです。
ポストトレーニングの可能性と限界
AIモデルの学習において、「事前学習(pre-training)」から「ポストトレーニング(post-training)」への重点のシフトが注目されています。ポストトレーニング、特に強化学習は、特定のタスクにおいて非常に効果を発揮します。
エリックは、ポストトレーニングが成功する分野として、フィードバックメカニズムが比較的明確で、完了までの時間が短いタスクを挙げます。
- コーディング:サンドボックス内でコードを実行し、その結果に基づいてモデルを改善できるため、強化学習と非常に相性が良い。多くのラボがModalのサンドボックスをこの目的で使用している。
- サイバーセキュリティ:攻撃と防御のパターンを学習させる。
- 数学(Leanなど):証明問題の解決。
- 法律(ある程度):評価を通じてモデルを改善できる。
これらのタスクでは、AIエージェントやLLMが「人間が伝統的に行っていたタスク」を「手の届く範囲」に収めています。しかし、エリックは、フィードバックループがはるかに長いタスク、例えば人間にとって6ヶ月かかるようなタスクに強化学習を適用することには「限界があるかもしれない」という可能性も示唆しています。彼は、自身の過去の予測が何度も外れてきたことを認めつつも、この領域の今後の進展に注目しています。
AIがもたらす広範な影響への期待
エリックの楽観主義は、テクノロジー全般に及びます。彼は、AIがドラッグディスカバリー(新薬発見)のような分野にもたらす影響に強い期待を寄せています。彼は冗談めかして「AI生成の薬を飲みたい」と語り、自身の老化や体調の悩みを解決してくれるAI開発の薬に大きな希望を抱いています。
もちろん、FDAのような規制当局の承認プロセスがあるため、普及には時間がかかると認識しつつも、AIによる薬物設計の分野で「信じられないほどの進歩」が起きていることを強調しています。これは、AIが単にビジネスの効率化に貢献するだけでなく、人間の健康や生活の質そのものを向上させる可能性を秘めているという、より広範な社会的影響への期待を示しています。
8. 結びに:持続的な成長とAIの未来への貢献
Modalの物語は、単なるAIスタートアップの成功事例以上のものです。それは、創業者エリック・ビースバーグの深い技術への情熱、市場への鋭い洞察、そして何よりも仕事と人生に対するユニークな哲学によって紡ぎ出されています。
彼のリーダーシップの下、Modalは既存のクラウドインフラの限界を打ち破り、AIワークロードに最適化された独自のインフラスタックを構築しました。GPU調達の狂乱の中にあっても、世界中のコンピュートリソースを一つの巨大なプールとして効率的に管理する能力は、Modalの揺るぎない競争優位性となっています。また、単なる推論サービスに留まらず、サンドボックス、トレーニング、強化学習といった包括的な周辺サービスを提供することで、コモディティ化を回避し、高い粗利機会を追求する戦略は、AI時代の新しいビジネスモデルを提示しています。
エリックは、AI市場が今後一時的な「プルバック(後退)」を経験する可能性を認識しています。しかし、彼はその先に計り知れないほど巨大な長期的な機会が広がっていると確信しており、その楽観主義はModalの成長戦略の原動力となっています。ソフトウェアエンジニアの未来に対する彼の見解もまた、AIが人間の仕事を奪うのではなく、その役割をより高次元へと進化させるという、希望に満ちたものです。
Modalは、その「新しいクラウド」インフラを通じて、AIアプリケーション開発の障壁を下げ、イノベーションを加速させる存在となるでしょう。エリックの言葉が示すように、AIの未来はまだ始まったばかりであり、Modalはその最前線で新たな歴史を刻んでいくことになります。彼のビジョンと情熱は、AI革命がもたらす計り知れない可能性を信じる私たちにとって、大きな希望とインスピレーションを与えてくれるものです。