事業成長にコミットするCFOの条件:変革の時代を牽引する経営者の「流儀」
現代のビジネス環境は、かつてないスピードで変化し、企業には持続的な成長と変革が求められています。その中で、単なる財務の番人としてではなく、事業のアクセルを踏み込み、成長戦略を牽引する重要な役割を担うのがCFO(最高財務責任者)です。彼らは資金調達、M&A、投資判断といった財務領域だけでなく、時にプロダクト開発や新規事業立ち上げまでをもリードし、企業価値向上に深くコミットしています。
今回は、スタートアップ・アクアリウム2025で開催されたパネルディスカッション「【CFOの流儀・前編】『アクセルの踏みどころを見極める』事業成長にコミットするCFOの条件」の内容を深く掘り下げ、現代のCFOに求められる資質、具体的な役割、そしてその「流儀」を紐解いていきます。登壇された三名のCFO――株式会社スマートHR取締役CFOの森さん、株式会社アンドパッドCFOの小野さん、株式会社テックタッチCFO/CPO/AIセントラル責任者の中瀬さん――それぞれの多様なキャリアパスと哲学から、未来を創造するCFO像を探ります。
第1章:CFOへの多様なキャリアパスと、その経験が織りなす「流儀」の原点
CFOと聞くと、会計士や投資銀行出身といったプロフェッショナルファーム経由のキャリアを想像しがちですが、今回の登壇者三名のキャリアは驚くほど多様です。彼らがどのようにしてCFOという重責を担うに至ったのか、その道のりと、過去の経験が現在の「流儀」にどう生きているのかを見ていきましょう。
1.1. 事業会社で「ケツを持つ」経営者メンタリティを培ったCFO:森さん(スマートHR)
森さんは、新卒で楽天株式会社に入社し、IR(投資家向け広報)、ファイナンス、M&Aといったコーポレート業務を約4年間幅広く経験されました。その後、2020年3月に株式会社スマートHRにファイナンスIRの1メンバーとして入社し、2023年10月には取締役CFOに就任されています。
彼のキャリアの原点には、楽天での経験が色濃く影響しています。森さんは楽天で4年間、二人のCFOに仕え、彼らの働きを間近で見てきました。当時の楽天は、急成長かつグローバルでカオスな環境。特に、社長の三木谷氏が携帯電話事業への参入を宣言し、1兆円規模に及ぶ巨額の設備投資を決断した時期にIRとしてその最前線にいました。
森さんが語るCFOの「ケツを持つ」メンタリティは、この経験から培われたものです。楽天は当時、Eコマースの利益率低下などで株価が低迷する中、数千億円もの資金をどう集めるかという課題に直面していました。自己資本比率が連結で2~3%にまで追い込まれるほどのアセットヘビーな事業投資を、会社を潰さないよう、かつ社長の描く未来を実現するために、いかに資金調達すべきか。この過酷な状況下で、伝説的なCFOたちが平然と、しかし「波々ならぬハードシングス」を乗り越えていく姿を目の当たりにしました。
この経験は、森さんに単なるファイナンススキル以上のものを与えました。それは、上場企業という責任ある立場にありながら、大胆な投資決断を下し、会社の未来を背負う経営者としての覚悟と覇気です。財務状況が極限まで攻め込まれる中でも、会社を存続させつつ成長を追求するCFOの姿は、「ハイグロース企業でCFOをやるって、結局なんかどういうことなのか。最後やっぱりちゃんとケツを持つ」という森さんの言葉に集約されています。
スマートHR入社後、森さんはその経験を活かし、シリーズDで海外投資家から126億円もの資金調達を実現しました。楽天での海外投資家対応の経験と、M&Aで培ったディール進行のプロジェクトマネジメント力が、未上場企業の大型資金調達という難しい局面で見事に結実したのです。
さらに、森さんのキャリアでは「サクセッション(後継者育成)」の重要性も強調されます。彼は、前任CFOから「次を任せたい」と1年半前に告げられたことで、CFOとしての判断をシミュレーションし、準備する期間を得ました。このサクセッションプランが、彼をスムーズにCFOへと導いたのです。「サクセッションを考えられているCFOを探して、その直下で学んでどこかで引き継ぐというキャリアもあるのかな」という彼の示唆は、将来CFOを目指す人々にとって貴重なヒントとなるでしょう。
1.2. 異色のキャリアから「お金の哲学」を体現するCFO:小野さん(アンドパッド)
小野さんのキャリアは、今回の登壇者の中でも特に異彩を放っています。20代をニートやトレーダーとして過ごした後、30歳でマクロミルのCFOに就任し、東証一部市場最速での上場に貢献。その後、Jマジック(ミクシィに買収されるスタートアップ)のCFOを経て、ミクシィ本体のCFOに就任。そして2020年からは、現在の株式会社アンドパッドのCFOを務めています。上場企業とスタートアップを交互に経験する、ユニークなキャリアパスです。
彼の「流儀」の根幹にあるのは、「めちゃくちゃお金が好き」というストレートな告白と、そこから派生する徹底した「消費か投資か」という哲学です。彼は「消費が嫌い」であり、あらゆる支出を「消費か投資か」という視点で厳しく評価します。この思考は、彼が過去にCFOを務めた各社のビジネスモデル選択やコスト構造改革に深く反映されています。
例えば、マクロミルでは当時一般的だったインターネットリサーチ会社の営業利益率が5〜6%程度だったのに対し、40%近い利益率を実現。ミクシィも売上2000億円、営業利益1000億円、利益率50%という驚異的な数値を叩き出しました。現在のアンドパッドも、粗利で80%以上という高収益体質を築いています。
小野さんの「お金の哲学」は、単にコストを削ることではありません。「極限まで削り切って、でも事業成長、その余ったお金は何なのっていうと成長を止めるために削ってんじゃなくて、その余ったお金って全部成長に使えるじゃないですか」という言葉に、彼の真意が凝縮されています。彼は、生み出された利益をさらに大きな成長投資へと転換させることを喜びとしています。
そして、CFOは資金調達を通じて、営業利益だけでは賄えない大規模な投資も実現できると小野さんは語ります。さらに重要なのは、単に投資するだけでなく、「何に投資するかまで意思決定したい」という強い意志です。現在、彼は新規事業開発室の室長も兼務し、4つの新規事業を同時に立ち上げています。アンドパッドでシリーズDとして120億円を調達した際も、社長が必要とした50億円に加え、彼自身が新規事業に70億円を投じたいと主張し、それを実現しました。
この「消費か投資か」という軸で、会社のあらゆる資源配分を最適化し、最大のリターンを生み出そうとする姿勢こそが、小野さんのCFOとしての「流儀」であり、彼の異色のキャリアを支える揺るぎない哲学なのです。
1.3. 金融のプロから「経営にざす」CFO/CPO:中瀬さん(テックタッチ)
中瀬さんは、野村証券でM&Aに携わった後、MITのMBAを取得。その後は世界的プライベートエクイティファンドのカーライルグループで活躍し、約4年前にテックタッチに入社しました。現在ではCFOに加え、CPO(最高プロダクト責任者)とAIセントラルの責任者も兼務するという、金融のプロフェッショナルから事業の最前線へと踏み込んだ稀有なキャリアを歩んでいます。
彼が、外資系金融機関の高給を捨ててスタートアップを選んだ理由は、「経営にざしたかったから」という明確なものでした。中瀬さんは、日本のCFOの腕の見せ所はまだまだ少ないと感じています。数億円から数十億円の資金調達では、「誰でもできる」という辛辣な意見を述べ、本当のCFOの腕は数百億円から千億円規模のM&Aや資金を使いながらグロースさせる局面で鳴ると考えています。だからこそ、大企業で経営に携わるのが難しい現状において、スタートアップで「本当の意味で経営にざす」ことに大きな価値を見出したのです。
中瀬さんの「流儀」は、投資家としての冷徹な視点と、プロダクト開発者としてのユーザーへの深い理解が融合している点にあります。CFOとCPOの兼任という異色の役割について、彼はCPOの仕事の半分はCFOと変わらないと語ります。それは、「新規でプロダクトがどこに当たりそうか」という投資領域の決定です。どこに資金(お金と人)を「貼る」かを決めるプロセスは、まさにCFOの投資判断そのものだというのです。
しかし、CPOとしてのもう一つの重要な側面は、「ユーザーインタビューやユーザーのことを理解して、ユーザーに激刺さりする製品を作る」ことです。これはCFOの経験だけでは身につかない領域ですが、中瀬さんはスタートアップに入ってからの4年間、95%の時間をユーザーとの対話に費やしたと語ります。その結果、ユーザーの潜在ニーズを引き出す能力を培い、CPOとしてプロダクト開発をリードするまでに至りました。
カーライルグループでの投資経験は、彼に「貼る場所を決める」という戦略的な視点を与え、スタートアップでのユーザーとの対話は、その「貼った」リソースを具体的なプロダクト価値へと転換させるための深い洞察力を養いました。中瀬さんのキャリアは、CFOが単なる財務担当に留まらず、事業戦略、投資、そしてプロダクト開発といった経営のあらゆる側面に深く関与し、自ら事業を創造していく可能性を示しています。
第2章:事業成長にコミットするCFOの「流儀」:アクセルとブレーキ、そして投資の極意
三者三様のキャリアを持つCFOたちが、共通して持っているのは「事業成長への飽くなきコミットメント」です。彼らはどのようにして、そのコミットメントを具現化し、企業価値向上を実現しているのでしょうか。その具体的な「流儀」を深掘りします。
2.1. 「アクセルの踏みどころを見極める」:成長戦略とリスク管理のバランス
CFOの役割としてよく語られるのが、事業の「アクセルとブレーキ」のコントロールです。しかし、今回のディスカッションでは、「とにかく事業成長に貢献できないといる意味ない」という言葉に代表されるように、ブレーキではなく「アクセル」をいかに踏み込むかに焦点が当たっていました。
森さんは、楽天でのCFOたちの姿から、「自己資本比率が1%とか2%まで会社を追い込む」ような大胆なアクセルの踏み方を目の当たりにしました。これは、単にリスクを無視するのではなく、社長が描く未来の実現に向けて、財務的な制約の中でいかに最適な資金調達と投資を実行するかという、極限まで攻めた戦略的意思決定です。スマートHRで126億円の大型資金調達を成功させたのも、この「アクセルの踏みどころ」を見極める能力の表れと言えるでしょう。楽天での大規模なデッドファイナンスやエクイティ調達の経験が、未上場スタートアップでの海外投資家との交渉、ディール組成において大いに活かされたのです。
小野さんは、自身の「消費か投資か」という哲学に基づき、徹底的に事業の無駄を削ぎ落とし、その分を成長投資という「アクセル」に回します。利益率の高いビジネスモデルを追求し、その上で営業利益だけでは賄いきれない大規模な新規事業投資のために、自ら120億円規模の資金調達を主導します。彼にとっての「アクセル」とは、企業が生み出すキャッシュフローと外部からの資金を、最もリターンが高いと見込んだ成長機会に惜しみなく投下することなのです。その投資が単なる投機に終わらないよう、彼自身が新規事業開発の責任者として「何に投資するか」を深く意思決定することで、リスクを管理しつつ成長を最大化する「アクセル」を踏み込んでいます。
中瀬さんのCFO/CPOとしての役割も、「アクセルの踏みどころ」を見極める視点に直結しています。彼はCPOの仕事の半分がCFOと同じ「投資領域を決める」ことだと語ります。プロダクト開発は、未来への最も重要な投資の一つであり、その投資対象(プロダクトが「当たりそうか」)を見極め、そこに「お金と人」というリソースを「貼る」ことが彼のCPOとしての「アクセル」です。外資系PEファンドでの経験は、まさにこの「投資判断」の精度を磨く上で、彼に強固な基盤を与えています。彼は単に財務リスクを管理するブレーキ役ではなく、むしろ「どこに、どれだけアクセルを踏むべきか」を能動的に決定し、事業の成長を直接的に推進する存在なのです。
2.2. 事業計画へのコミット:山の高さと登る速さを決めるリーダーシップ
モデレーターが最後に触れた「事業計画にコミットする」というCFOの役割は、単に予算を策定する以上の深い意味を持っています。それは「目標とする山の高さを決めるのと、その山を登る速さを決める」ことだとされています。この言葉は、CFOが企業の戦略策定の中心にいることを示唆しています。
森さんの楽天での経験は、まさにこの「山の高さと登る速さ」をCFOが主導する例です。1兆円規模の携帯電話事業投資という「山の高さ」を社長と共に設定し、その巨大な山をいかに短期間で登り切るか(=資金を調達し、事業を立ち上げるか)という「速さ」を、CFOが財務戦略で担保していました。スマートHRでのサクセッションも、CFOとして「自分がもしCFOだったらどうする」というシミュレーションを重ね、新たな「山の高さと登る速さ」を自ら設定する準備期間となりました。
小野さんのアンドパッドでの新規事業開発は、彼自身が「山」を設定し、その「登る速さ」までコントロールする典型です。彼は新規事業のために70億円の資金を要求し、4つの事業を同時に立ち上げています。これは、彼が投資家として「投資できる領域」を明確に定め、その中で最も効率的かつインパクトのある方法で「山を登り切る」という意思の表れです。徹底した利益追求で得られたキャッシュと、大型資金調達で得た資本を、最適な「山の高さ」と「登る速さ」に投下することで、企業価値を最大化しようとしています。
中瀬さんのCFO/CPO兼任という役割は、さらに直接的に「事業計画へのコミットメント」を体現しています。彼はファイナンスのヘッドとプロダクトのヘッドを兼ね、さらにAIセントラルという新規事業の責任者も務めています。これは、資金計画(山の高さと速さ)と、それを実現する事業の中身(プロダクト開発、新規事業そのもの)を、一人の人間が責任を持って統括している状態です。金融のプロとして「貼るべき投資先」を見極め、プロダクトのプロとして「ユーザーに刺さる製品」を開発することで、彼自身が「山」を創造し、その「登頂ルート」を設計し、実現する責任を負っています。
このように、現代のCFOは、事業計画という羅針盤を単に作成するだけでなく、その「山」のビジョンを経営陣と共有し、具体的な登頂戦略(財務戦略、事業戦略、プロダクト戦略)を策定し、実行までコミットする、真の経営リーダーとしての役割を担っているのです。
2.3. 「ファイナンスのスキル」を超えた「経営者としての総合力」
登壇者全員が示しているのは、CFOに求められるのが、単なる会計や財務の知識・スキルに留まらない、より広範な「経営者としての総合力」であるということです。
森さんが楽天で学んだ「ケツを持つ」メンタリティは、まさに経営者としての覚悟そのものです。大規模な資金調達やM&Aを成功させるためには、ファイナンスの知識はもちろん必要ですが、それ以上に、社長のビジョンを理解し、社内外のステークホルダーと信頼関係を築き、困難な局面を乗り越える「人間力」と「胆力」が求められます。彼は「孤立されがちな管理部」のCFOではなく、積極的に「みんながディスカッションする場に飛び込む」ことの重要性を強調しました。
小野さんの「お金の哲学」は、ビジネスモデルの根本を理解し、事業の利益構造を深く洞察する能力を意味します。これは、単に財務諸表を読むだけでなく、その背後にある事業の本質、市場の動向、競合との差別化要因までを見抜く「事業理解力」です。そして、その理解に基づいて、成長投資として最も効率的な新規事業を選び、自ら立ち上げる「事業創造力」へと繋がっています。
中瀬さんのCPO兼任というキャリアは、CFOが「プロダクト」という事業の最も重要な源泉にまでコミットする姿勢を示しています。彼は「ファイナンスのヘッドとプロダクトのヘッドを両方兼ねている」と語り、その上でユーザーヒアリングの重要性を強調しました。これは、資金の流れだけでなく、顧客価値創造の源泉までを理解し、財務と事業の両面から企業価値向上をドライブする「事業統括力」とも言えるでしょう。彼は、スタートアップに来て「いろんなことできるようになった経営者としてめちゃくちゃ強くなる」という経験を積んだことで、ファイナンスの枠を超えた経営者としての成長を実感しています。
これらの事例が示すのは、現代のCFOが、企業の成長戦略の策定から実行までをリードし、財務、事業、プロダクト、組織といった多岐にわたる領域を横断的に理解し、影響力を行使する「変革のリーダー」であるという事実です。
第3章:未来を創造するCFO像:テクノロジー、サステナビリティ、そして挑戦
これまでの議論を踏まえ、未来のCFOに求められる資質や役割はさらに進化していくことでしょう。テクノロジーの急速な進歩、持続可能性への高まり、そしてグローバルな競争環境の中で、CFOはどのような存在になるのでしょうか。
3.1. テクノロジーを操り、自ら事業を創造するCFO
中瀬さんの「AIセントラル」責任者としての役割は、未来のCFO像を象徴しています。彼はCFOとして資金調達をリードする傍ら、AIという最先端技術を用いた新規事業の立ち上げを自ら行っています。これは、単にテクノロジーを活用して業務効率を改善するだけでなく、CFOがテクノロジーの可能性を深く理解し、それを用いて新たな事業価値を創造するプレイヤーとなることを意味します。
データ分析能力はCFOにとって不可欠ですが、今後はAIや機械学習を活用した高度な予測分析、リスク管理、そして新たな収益源の特定が求められるでしょう。CFOがテクノロジー部門と密接に連携し、あるいは自ら技術的な知見を持ち、デジタル変革の旗振り役となることで、企業の成長エンジンとしての役割をさらに強化することができます。
3.2. サステナビリティと長期的な企業価値向上へのコミットメント
今回のディスカッションでは直接触れられませんでしたが、現代そして未来のCFOには、ESG(環境、社会、ガバナンス)要素やSDGs(持続可能な開発目標)といったサステナビリティへの配慮が不可欠となります。短期的な利益追求だけでなく、長期的な企業価値向上を見据えた投資判断、非財務情報の開示、そして持続可能なビジネスモデルの構築にも財務面から貢献することが求められるでしょう。
楽天での「アセットヘビーな事業」への投資や、スマートHRでの社会課題解決型SaaS事業へのコミットメントは、間接的ではありますが、企業が社会に対してどのような価値を提供していくかという視点と無関係ではありません。CFOは、単なる資金の調達・運用だけでなく、企業のパーパス(存在意義)と財務戦略を結びつけ、持続可能な成長を実現する役割を担うことになります。
3.3. 次世代CFO育成と「サクセッション」の重要性
森さんが強調した「サクセッション」の概念は、未来のCFOが直面する課題解決において極めて重要です。CFOの役割が高度化・多様化するにつれて、その知識や経験を次世代に継承することは、企業の持続的な成長に不可欠となります。
CFOを目指す若手にとっては、CFOが「いないところ」を選ぶだけでなく、森さんのように「サクセッションを考えられているCFO」の直下で働き、実践的に学ぶキャリアパスも有効な選択肢となります。メンターシップ、体系的な知識・スキル習得プログラム、そして意思決定への早期関与を通じて、次世代のCFOが育つ土壌を企業側も整備していく必要があるでしょう。
CFO自身の視点からも、自分の経験を言語化し、体系化して伝える能力が求められます。自らの「流儀」を次世代に継承し、企業全体の財務リテラシーと経営者視点を高めることも、未来のCFOの重要なミッションとなるはずです。
3.4. 挑戦を恐れない「好奇心と胆力」
今回の三名のCFOのキャリアを俯瞰すると、共通しているのは「知的好奇心」と「胆力」、そして「挑戦を恐れない姿勢」です。
森さんは、楽天という巨大企業での過酷な経験から「ケツを持つ」覚悟を学び、スマートHRでその手腕を発揮しました。小野さんは、ニートからCFOへという異色の経歴を持ち、常に「お金の哲学」に基づき、最も効率的な成長投資を追求しています。中瀬さんは、安定した金融キャリアを捨ててスタートアップに飛び込み、CFOの枠を超えてCPOとしてプロダクト開発の最前線に立っています。
彼らのキャリアは、与えられた役割に安住せず、自らの影響範囲を広げ、常に新しい挑戦を求めてきた結果です。特にスタートアップ環境においては、不確実性の中で迅速かつ大胆な意思決定が求められます。そのためには、既成概念にとらわれず、未知の領域にも積極的に踏み込んでいく「知的好奇心」と、困難な局面でも揺るがない「胆力」が不可欠なのです。
結論:CFOは「変革のリーダー」である
今回のパネルディスカッションは、現代そして未来のCFOが、単なる財務の専門家ではなく、「変革のリーダー」として企業の成長を牽引する存在であることを強く印象付けました。
彼らは:
- 多様なキャリアバックグラウンドを持ちながらも、共通して「経営者としての視点」を追求する。
- **「アクセルの踏みどころを見極める」**ことで、成長戦略とリスク管理の最適なバランスを追求し、大胆な資金調達と投資判断を実行する。
- **「消費か投資か」**という哲学に基づき、徹底したコスト意識と同時に、最もリターンの高い成長機会に積極的に投資する。
- ファイナンスの枠を超えて、プロダクト開発や新規事業立ち上げにまでコミットし、事業そのものを創造・推進する。
- **「事業計画にコミットする」**ことによって、目標とする「山の高さ」を設定し、その「登る速さ」を戦略的にコントロールする。
「事業成長にコミットするCFO」とは、まさにこのような、財務の専門知識を礎に、事業全体を見通し、未来を描き、そしてその実現のために自ら汗をかく、真の経営者であると言えるでしょう。彼らの「流儀」は、これからの時代を生き抜く企業にとって、そしてビジネスパーソンにとって、計り知れない示唆とインスピレーションを与えてくれるはずです。