T最新テックトレンド

Crusoe CEOが語る:GPU減価償却とAIエネルギーコストにまつわる誤解、そしてAIインフラの未来

20VC with Harry Stebbings

0:00--:--

AIが社会のあらゆる側面を変革する「特異点」を迎えようとしている現代において、その基盤を支えるインフラストラクチャの進化は、私たちの未来を形作る上で極めて重要な要素です。しかし、この急速な変革の裏側で、多くの誤解や見過ごされがちな真実が存在します。AIインフラは中央集権化されるべきなのか?エネルギーコストは本当に上昇しているのか?GPUの減価償却リスクは過大評価されていないか?

今回、私たちはAIインフラの最前線で革新を牽引する企業、Crusoe EnergyのCEO、チェイス・ロックミラー氏への独占インタビューを通じて、これらの問いに対する深い洞察を得ることができました。ロックミラー氏は、伝統的な常識を覆す大胆なビジョンと、複雑な課題を解き明かす明晰な思考で、AI時代のインフラ構築における新たな道を切り開いています。

本記事では、彼の言葉を深く掘り下げ、Crusoe Energyが描くAIインフラの未来像、その具体的な戦略、ビジネスへの影響、そして社会全体が直面する課題と可能性について、詳細かつ説得力のあるレポートブログ記事としてお届けします。


1. AIインフラのパラダイムシフト:分散型とエネルギーの真実

AIの進化は、私たちに新たなインフラのあり方を問いかけています。従来のデータセンターモデルは、中央集権的なハブに依存し、主要なインターネットバックボーンの近くに集積されてきました。しかし、チェイス・ロックミラー氏は、このモデルがAI時代には根本的に変わるだろうと断言します。

1.1. 中央集権から分散型へ:AIワークロードの特性

ロックミラー氏は、AIを支えるインフラが中央集権的にはならないという衝撃的な見解を提示します。その根拠は、AIのニューラルネットワーク処理の特性にあります。AIワークロードの時間の大部分は、データセンター内での計算に費やされ、データセンターへの到達時間(レイテンシ)は、必ずしも決定的なボトルネックではないのです。この特性が意味するのは、AI計算リソースは必ずしも主要な都市やインターネットハブの近くにある必要はない、ということです。

代わりに、AIインフラは「エネルギーが安価で豊富な場所」に分散されることになります。これは、これまで経済的に利用が困難だった遠隔地のエネルギー資源や、廃棄されていたエネルギー源をAI計算能力に転換するという、Crusoe Energyの根幹をなすビジョンでもあります。

1.2. 逆説:エネルギー価格は「下がっている」

「語られている物語とは、実際には正反対なんだ。」ロックミラー氏のこの発言は、AIインフラにおけるエネルギーコストに関する一般的な認識に一石を投じます。多くの人々は、AIによる電力需要の急増がエネルギー価格を押し上げると懸念していますが、彼はデータに基づいた異なる見解を示します。

Crusoe Energyが大規模なデータセンターに投資し、建設を行った地域では、一般的にエネルギー価格が下がっているというのです。なぜでしょうか?それは、データセンターのような大規模な建設プロジェクトが、新たなエネルギー発電技術や発電容量への投資を促進するからです。結果として、既存の送配電インフラを利用して、より多くのメガワットを償却できるようになり、地域のエネルギー供給全体が効率化され、住民のエネルギーコストも下がる傾向にあるという論理です。

この視点は、AIインフラが単なる電力消費の主体ではなく、新たな発電能力の誘因となり、地域全体のエネルギー効率とコスト削減に貢献し得る、という前向きな可能性を示唆しています。AIの電力需要は挑戦であると同時に、エネルギーインフラの近代化と低コスト化を加速させる触媒となり得るのです。

1.3. Crusoe Energyの三本柱:データセンター、GPU、そしてトークン

Crusoe Energyは、この新たなAIインフラの地平を切り拓くために、多層的なビジネスモデルを展開しています。ロックミラー氏は、顧客に販売し収益を上げている製品は実質的に以下の3つであると述べます。

  1. データセンター(ファシリティ): GPUを物理的にホストし、効率的に冷却・電力供給するインフラ。
  2. GPU(計算能力): AIワークロード実行の核心となるグラフィックス処理ユニット。
  3. トークン(AIサービス): GPUが生成する知能、すなわちAIモデルからのアウトプットやマネージド推論サービス。

この中で、ロックミラー氏は「データセンター全体の中で最も価値があるのはGPUなんだ」と指摘します。しかし、Crusoe Energyの真の強みは、これらの層を垂直統合し、エンドツーエンドで価値を提供できる点にあります。この垂直統合戦略こそが、急速に変化するAI市場において、同社に持続的な競争優位性をもたらす鍵となるのです。

1.4. 「ほとんどの堀(参入障壁)は幻想にすぎない」

この発言は、ベンチャーキャピタリストが常に問いかける「Moat(堀)」、すなわち持続的な競争優位性に対するロックミラー氏の率直な見解を反映しています。彼は、特にテクノロジーの進化が加速する現代において、多くの参入障壁は一時的なものに過ぎず、「幻想」であると喝破します。

この考え方は、Crusoe Energyが市場の変化に迅速に適応し、常に革新を追求する文化の根底にあります。固定された「堀」に安住するのではなく、絶えず変化する「チェス盤」の上で、いかに素早く動き、効率的に適応できるか。これこそが、長期的な成功を収めるための真の戦略であると、彼は示唆しているのです。


2. 経営哲学の源泉:登山家スピリットと起業家としての成長

チェイス・ロックミラー氏の経営哲学は、彼の個人的な経験と深く結びついています。特に、経験豊富な登山家であるという彼のバックグラウンドは、Crusoe Energyの企業文化と戦略形成に大きな影響を与えています。

2.1. 「登山家のように考える」文化とビジネスへの応用

ロックミラー氏は、登山から学んだ教訓をCrusoeの核となる価値観の一つである「登山家のように考える」という文化に根付かせていると語ります。では、この「登山家のように考える」とは具体的に何を意味するのでしょうか。

  1. 変化への備えと適応性: 登山では、天候や地形など状況が常に変化します。そのため、変化に備え、それに対応する柔軟な計画が必要となります。これは、デジタルと物理の両方の世界で事業を展開し、絶え間なく進化するAI市場で生き残るCrusoe Energyにとって不可欠な要素です。
  2. 包括的な計画性: 山頂を極め無事に帰還するためのプランAだけでなく、天候の変化、装備の故障、パートナーの体調不良、雪崩といったあらゆる不測の事態に備えたプランB、C、Dが必要となります。ビジネスにおいても、主要な戦略だけでなく、あらゆるリスクを想定した危機管理計画が重要であることを示唆しています。
  3. 忍耐力と内なる強さ: 遠征は長く、過酷で骨の折れるものです。困難な状況を耐え抜き、目標を達成するためには、内なる力を奮い立たせる必要があります。これは、長期的なビジョンを持ち、困難な課題に直面しても諦めずにやり遂げる起業家精神に通じます。
  4. 安全文化: 「登頂は任意だが、下山は義務」という登山の格言が示すように、安全を最優先する文化は極めて重要です。Crusoe Energyでは、物理的な怪我だけでなく、プラットフォームへのデジタル攻撃といったリスクも想定し、安全対策に徹底的に取り組んでいます。

この「登山家のように考える」哲学は、Crusoe Energyが直面する複雑で挑戦的なAIインフラ構築の道を、着実に、そして安全に進むための羅針盤となっているのです。

2.2. 経済的成功が起業家精神に与える影響

ロックミラー氏は、Crusoeを立ち上げる前に経済的な成功を収めていたことが、会社作りに対する考え方に大きな影響を与えたと語ります。マズローの欲求段階説に触れ、生活の最低限のニーズが満たされている状態であれば、失敗のリスクを恐れずに、より大きな勝負やリスクを取れるようになる、と説明します。

「何だってできると感じられた。まるで真っ白なキャンバスのようでした。」この言葉は、経済的な安定がもたらす精神的な解放と、それによって可能となる無限の可能性を示しています。裕福な起業家が失敗を恐れずに革新に集中できるという彼の見解は、起業家精神における経済的基盤の重要性を強調しています。

2.3. 人生の目的の変化:物理学者から金融、そして起業へ

チェイス・ロックミラー氏のキャリアパスは、彼の知的探究心と変化への適応能力を浮き彫りにします。かつては理論物理学者として宇宙の神秘を探求することを志し、MITやロスアラモス国立研究所で研究に没頭していました。しかし、その業界の動きの遅さに気づき、よりペースの速い仕事への欲求が芽生えます。

目的を見失ったと感じた彼は、次に「金持ちにでもなるしかないな」と考え、クオンツ金融の世界へ。そこで数学の問題を解くことで大金を稼ぎます。しかし、経済的な欲求が満たされた後、「さて、次はどうしようか」という問いに直面し、困難な課題に取り組み、情熱を傾けられる会社を立ち上げるという選択肢を選びます。これがCrusoe Energy誕生の原点です。

この遍歴は、彼が常に挑戦を求め、自身の情熱と目的に忠実である姿勢を示しています。そして、その過程で培われた分析力と問題解決能力が、現在のCrusoe Energyの経営に生かされていることは想像に難くありません。

2.4. ビットコインからAIへの「ピボット」の真実とChatGPTの衝撃

外部から見れば、Crusoe Energyはビットコインマイニングによる廃棄エネルギーの収益化から、AIインフラへと事業を大きく転換(ピボット)したように見えます。しかし、ロックミラー氏は、社内では創業当初からAIプラットフォームを構築することが常に目標であったと明かします。

彼のキャリア全体がAIや機械学習のアルゴリズムに取り組むことで形成されており、AIがあらゆる産業を根本から変革する「メタサイエンス」になると確信していました。そして、その規模になると計算能力、ひいてはエネルギーがボトルネックになるという認識が、Crusoe Energyの創業理念につながったのです。

当初、ビットコインマイニングは、低コストで豊富なエネルギー資源を収益化する「最良のエンジン」でした。しかし、水面下ではAIプラットフォームの構築が着々と進められていました。転換点となったのは、2022年11月30日のChatGPTのローンチです。「世界を揺るがすツイートのようなもの」と評されるこの出来事が、AIが到来し、爆発的なユースケースの増加が確実になった瞬間であり、ロックミラー氏の世界観を大きく変えました。

ChatGPTの衝撃後、Crusoeはビットコイン関連のデータセンターの進化、すなわち「ファイブナイン(99.999%)」の信頼性が不要なAIワークロードの特性に注目。安価で冗長性の低いデータセンターでも、AI計算に対応できるという認識を深め、AI対応データセンターの設計・開発、そしてエネルギー資源の確保に大きく投資をシフトしました。これは、単なるピボットではなく、創業当初からのビジョンが、外部の環境変化によって一気に顕在化した瞬間だったと言えるでしょう。


3. AIデータセンターの建設現場から:供給制約と垂直統合の力

AI時代の到来は、既存のインフラ供給能力に大きな圧力をかけています。データセンターの建設現場では、多岐にわたる制約とボトルネックが顕在化しており、Crusoe Energyはこれに独自の垂直統合戦略で対抗しています。

3.1. 深刻な供給不足と「モグラ叩き」のサプライチェーン

今日、AIインフラ業界が直面する最大の課題の一つは、GPUを接続してAIワークロードを実行できる場所が単純に不足していることです。ロックミラー氏はこれを「GPUを接続する場所がない」と表現し、究極的な供給制約であると指摘します。

大規模なAIデータセンターを支えるサプライチェーンは、「モグラ叩き」のような状態にあります。あるボトルネックを解消すれば、また別の地点で新たなボトルネックが発生するという状況です。半導体不足、電力供給の制約、熟練労働者の不足、許認可プロセスの遅延など、多岐にわたる問題が連鎖的に発生し、建設プロジェクトの遅延やコスト増加を招いています。

3.2. 垂直統合がもたらすスピード、コスト、イノベーション

Crusoe Energyがこうしたサプライチェーンの課題にどのように対処しているかを示す顕著な例が、配電センターの自社製造です。アビリーンで200MWを超えるコンピューティング容量を持つ最初のデータセンター建設を1年で完了させると約束した際、中電圧配電センターのリードタイムが市場で100週間という絶望的な状況に直面しました。

しかし、Crusoeは「自分たちでこれをどれだけ早く作れるか?」と問いかけ、意図的に電気製造の垂直統合を進めていた社内チームが、部品調達から製造までを28週間で実現しました。これは、他社の最も早い入札(2年半)と比較しても圧倒的なスピードです。

この垂直統合には、複数の重要な利点があります。

  1. 圧倒的な柔軟性: 致命的なボトルネックが発生した際に、自社リソースで解決できるため、プロジェクトの障害を取り除く柔軟性が格段に高まります。
  2. 真のコスト把握: 部品一つ一つ、製造プロセス全体のエンドツーエンドのコストを詳細に把握できるようになります。これは、イーロン・マスクが提唱する「イディオット・インデックス」(原材料コストと完成品価格の乖離)の概念にも通じ、無駄を排除し、効率的なAI工場を構築する上で不可欠です。
  3. イノベーションのプラットフォーム: 「原材料を持ち込んで、世界中で好きなものを何でも構築できる」という第一原理からスタートできるため、特定のワークロードに最適化されたデータセンター設計や機器を、ゼロから自由に考案し、構築することが可能になります。例えば、アビリーンのキャンパスは、1ギガワット規模のコンピューターとして設計され、一つのまとまったワークロードを処理できるよう、相互接続されたGPUクラスターのコアが最適化されています。

電気機器製造自体は、通常それほど利益率の高いビジネスではありませんが、現在の供給不足により利益幅は広がっています。しかし、Crusoeにとっての決定的な優位性は、利益の積み上げよりも、「可用性」と「イノベーションのプラットフォーム」を確保できる点にあるとロックミラー氏は強調します。

3.3. AIインフラを制する二大要素:エネルギーと労働力

ロックミラー氏は、AIデータセンターの構築における最大の供給制約として、エネルギーと労働力の二つを挙げます。

  1. エネルギー: コンピューティングに利用可能な電力が不足しており、これがAI工場を拡大する上での主要なボトルネックとなっています。安価で豊富なエネルギー源を見つけることが、Crusoe Energyの核となる戦略です。
  2. 労働力: アメリカ国内の熟練した職人(電気技師、溶接工、配管工、建設作業員)の数には限りがあり、これがもう一つの重要な制約です。エネルギー源を確保できたとしても、実際にAI工場を稼働させるために必要な労働力をその場所に集められるかが課題となります。

英国を例にとり、エネルギー価格の高さと労働力不足を指摘する質問に対し、ロックミラー氏は米国における電力価格は世界的に競争力があると反論します。一方で、中国の労働力は米国よりもはるかに安価であることは認めつつも、AIインフラの構築は、これらの制約を乗り越え、いかに効率的に進められるかが勝負の鍵となります。


4. 政策、地域社会、そして誤解の解消:AIインフラの持続可能性

AIデータセンターの急速な建設は、地域社会や政策当局との間で摩擦を生むこともあります。チェイス・ロックミラー氏は、これらの懸念に真摯に向き合い、データに基づいた事実によって誤解を解消し、データセンターが地域社会の「良き管理者」であるべきだと主張します。

4.1. データセンターを巡る政策論争と地域住民の懸念

ロックミラー氏は、政策や規制を「問題」と分類するのではなく、「うまく対処していくべきもの」と捉えています。無法地帯を望まず、適切な政策が整備されることを支持する一方で、迅速な開発との間に生じる摩擦も認識しています。彼がインフラの多くを「製造」するという考えを支持するのも、大規模な建設プロジェクトに伴う許認可プロセスの複雑さを避けるためでもあります。

政策は極めて地域密着型であり、地域住民の主な懸念は以下の点に集約されます。

  • 「雇用は生まれるのか?」
  • 「エネルギーコストが上がるのではないか?」
  • 「地域の水をすべて使い切ってしまうのではないか?」
  • 「空気が汚染され、子供たちが病気になるのではないか?」

つまり、データセンターが地域の良き管理者であり、良き市民として、実際に地域社会に価値を生み出しているかどうかが問われているのです。

4.2. データに基づいた誤解の解消:水とエネルギー

ロックミラー氏は、データセンターに関する最も一般的な誤解のいくつかを、具体的なデータで覆します。

  1. 水の使用量に関する誤解: 「データセンターが世界の水をすべて使い果たしている」という主張に対し、彼は「全くの間違い」と断言します。最新のAI工場設計では、水の使用量はほぼゼロに近いのです。テキサス州アビリーンのCrusoeの巨大施設(各140MW)を例に挙げ、その年間水使用量は一般住宅約10軒分程度であり、主な用途はスタッフのトイレや手洗い、植栽への散水であると説明します。 重要なのは、Crusoeが「クローズドループ型」の冷却システムを採用している点です。冷却水はラック内を循環し、屋外のチラー(冷却装置)で熱を放出し、再び循環します。新たな水が大量に消費されることはありません。水の使用に関する議論は「完全に誤り」であると強調します。

  2. エネルギー価格上昇に関する誤解: データセンターが地域のエネルギー価格を押し上げるという懸念に対しても、ロックミラー氏はデータに基づき反論します。彼が指摘するように、大規模なデータセンターが建設された市場では、一般的にその地域のエネルギー価格は「下がっている」傾向にあるのです。 これは、データセンターが新たな発電容量への投資を促進し、送配電インフラの利用効率を高めるためです。結果として、より多くのメガワットが償却され、地域住民のエネルギーコストが下がるというメカニズムです。Crusoe Energyは、こうしたエネルギー需要を支えるために、新たな発電設備の稼働を強く支持しています。

これらのデータに基づいた説明は、データセンターが環境に与える影響や地域経済への負荷に関する、根拠のない不安を払拭する上で極めて重要です。

4.3. 地域経済への多大な貢献

データセンターは、地域社会に多岐にわたる経済的恩恵をもたらします。

  1. 雇用創出: 建設段階では、電気技師、溶接工、配管工、建設作業員といった熟練したブルーカラー労働者に大規模な雇用を生み出します。これは米国の「再工業化」の大きな復活を象徴するものです。運営開始後も、長期的な常雇用の仕事が生まれます。
  2. 税収: データセンターは、莫大な固定資産税や法人税を地域にもたらします。アビリーンの例では、Crusoeがテイラー郡とアビリーン町の税収の3分の1以上を占め、警察、消防、道路、学校といった地元サービスを一変させ、学校制度への税収を2倍以上に増やしていると語ります。
  3. 地元経済の活性化: 建設作業員や運営スタッフが地域に流入することで、レストラン、カフェ、ホテル、その他の地元サービスでの消費が増加し、地元企業は好景気を享受します。

これらの波及効果は、データセンターが単なる電力消費施設ではなく、地域経済の成長を牽引するエンジンとなり得ることを示しています。

4.4. 建設に至らないデータセンター計画の実態と政治化

計画されているデータセンターの約50%が実際には建設されず、稼働に至らないという業界の認識に対し、ロックミラー氏も「妥当な数字」と同意します。その主な阻害要因は、許可や権利の取得、土地の確保、地元の電力会社との大規模な負荷接続契約の締結、あるいは新しい発電施設を導入する場合の大気汚染防止許可の取得など、多岐にわたります。

さらに、データセンターは予期せぬ形で政治的な道具として利用されるようになっています。米国の中間選挙で中心的な争点となり、意見が分かれるトピックになっているとロックミラー氏は述べます。その背景には、AI時代に対する人々の不安があります。「将来自分に仕事があるのだろうか」「世の中の役に立つ仕事をして、それに対して報酬を得られるのだろうか」といった正当な懸念が、AIの物理的形態であるデータセンターに向けられているのです。

このような状況に対し、彼は「データセンターは地域にとって有益な資産であり、建設するコミュニティで歓迎されるべきだ」という、ある意味「不人気な考え」を提唱します。事実に基づいた情報提供と、地域社会への真摯な貢献を通じて、誤解や不安を解消していくことが、AIインフラの持続可能な発展には不可欠であるというメッセージです。


5. GPU経済の深層:減価償却リスクと「AIスーパーメジャー」戦略

AIインフラの核心であるGPUは、その高額な投資と急速な技術革新のため、経済性の理解が極めて重要です。Crusoe Energyは、このGPU経済の課題に、独特の垂直統合戦略とポートフォリオアプローチで対応しています。

5.1. コモディティ化するGPU時間と多角的な収益ポートフォリオ

ロックミラー氏は、GPUの1時間あたりの価格が一種の「取引されるコモディティ」のようになっていると指摘します。ComputeExchangeやOrnといったプラットフォームが登場し、コンピューティングを取引可能な資産として扱う動きも見られます。このコモディティ価格の変動に対し、Crusoe Energyは多様なサービスとリターンを組み合わせたポートフォリオでリスク管理を行っています。

Crusoeの収益ポートフォリオは、主に以下の3つの形態で構成されています。

  1. 長期契約: 支払能力のある優良顧客との5年契約など、長期にわたって容量を貸し出す形態です。これにより、安定したキャッシュフローと回収期間が見込めます。
  2. 短期契約: より高利益率の短期契約も存在しますが、契約終了時の更新リスクが伴います。
  3. マネージドAIサービス: Crusoeのマネージド推論や、サーバーレスのファインチューニング製品などが含まれます。これは、開発者向けに最先端のオープンソースモデルを微調整したり、アプリケーションの拡張に合わせて推論ベースのトークンを提供したりするサービスです。これらの契約は通常、期間がはるかに短く、Crusoeにとってより高い利益率をもたらします。

この多角的なポートフォリオ戦略により、Crusoeは異なる利益構造を持つ事業を組み合わせ、全体として健全な利益率を確保し、GPU投資のリスクを分散しています。

5.2. 「AIスーパーメジャー」構想:石油・ガス業界からの学び

Crusoe Energyの垂直統合戦略を理解する上で、ロックミラー氏が提示する「AIスーパーメジャー」構想は極めて示唆に富んでいます。彼はAIインフラを、石油・ガス市場のバリューチェーン全体に類似した市場と捉えています。

石油・ガス業界には、ExxonやChevronのような「スーパーメジャー」が存在し、油田の掘削・生産(アップストリーム)、輸送(ミッドストリーム)、精製・販売(ダウンストリーム)といったバリューチェーン全体を垂直統合しています。彼らは、石油価格の変動に対するヘッジを意識的に行わないことで知られていますが、これは垂直統合されているがゆえに、本質的にヘッジされている状態にあるからです。石油価格が下がればアップストリームの利益率は低下しますが、ガソリンやプラスチックといったダウンストリーム製品の利益率は上昇するという形で、全体として利益が平準化されます。

ロックミラー氏は、AIインフラにおいても同様の現象が起きていると指摘します。

  • アップストリーム: 電力(エネルギー供給)
  • ミッドストリーム: データセンター、GPU(物理インフラ、計算能力)
  • ダウンストリーム: トークン、AIサービス(最終製品、知能の提供)

電力、データセンター、チップ、サービスといった各分野で利益率が変動する中で、Crusoeはこれらのバリューチェーン全体を垂直統合することで、AI時代のExxonのような「AIスーパーメジャー」を構築しようとしています。これにより、市場の変動に対して柔軟に対応し、持続的な収益性を確保できる体制を目指しているのです。

現在の最も利益率が高い層は、マネージドGPUやマネージド・コンピューティング・クラスターであり、これは単純に供給が大幅に不足しているためだとロックミラー氏は語ります。

5.3. 「テイク・オア・ペイ」契約の性質とAI経済の強靭性

多くのGPUレンタル契約で見られる「テイク・オア・ペイ(引き取り義務)」という契約形態は、顧客がリソースを利用するかどうかにかかわらず、その対価を支払うことを契約するものです。消費者需要の減退が懸念される中で、この契約がどうなるかという問いに対し、ロックミラー氏は「それほど悲観的には考えていない」と答えます。

その理由は、AIが経済の非常に多くの分野を変革するからです。ChatGPTのような特定の消費者向けアプリケーションの需要が一時的に鈍化したとしても、AIは科学的発見、新素材、新薬の開発など、人々の生活を根本から向上させる変革を可能にすると彼は楽観視しています。「今は人類の未来において最も(技術レベルが)低い地点であり、これからさらに向上していくのだ」という視点は、AI経済全体の強靭性に対する彼の深い確信を表しています。

5.4. チップ減価償却リスクへの対処と世間の誤解

高価なGPUチップのライフサイクルと減価償却リスクは、AIインフラ事業者にとって常に大きな懸念事項です。現在、業界標準の減価償却サイクルは6年とされていますが、Crusoe Energyのビジネス哲学は、インフラ(データセンター、エネルギー、チップ)に対して長期的な投資を行うというものです。

チップの減価償却リスクに対し、Crusoeは「マネージドAIサービスへの投資」という形で対応しています。サービス利用者が実際に使っている基盤チップや計算資源を抽象化するビジネスモデルを構築することで、より長期間にわたって持続可能な新しい収益源を開拓できると考えています。最先端のシリコンに対する需要は常に存在し続けますが、同時に、旧世代のチップであっても、より低いコストで知能を提供できるなら、依然として価値があるという見方です。サービス群を通じてチップを長期間収益化することで、最終的に減価償却サイクルを6年以上延長できるとCrusoeは信じています。

ロックミラー氏は、チップの購入や減価償却について世間が誤解している点として、「計算能力を価値や経済的に有益なサービスへと変える、アプリケーションや開発者の創意工夫」を過小評価していることを挙げます。2023年にH100などの本格的な調達を開始した際、「3年後にこれが価値を持っているか分からない」という懐疑的な反応が多く寄せられましたが、実際には3年後のHopperの利用価格は当時よりも高くなっています。これは、AI技術の進化と応用が、初期の懸念を上回るペースで進んでいることを示唆しています。


6. 未来を拓く:需要予測、効率化、そしてマネージド推論の進化

AIインフラの未来は、単なるハードウェアの展開にとどまらず、需要予測の精度、計算の効率化、そして知能をサービスとして提供するマネージド推論の進化にかかっています。

6.1. 顧客対話に基づく需要予測と「ジャストインタイム」インフラ

AIインフラは、その膨大な投資規模ゆえに、需要予測が極めて困難です。ロックミラー氏は、Crusoe Energyが「顧客との対話を通じて予測を積み上げて」いると語ります。顧客中心の組織として、最終的に顧客にソリューションを提供することに注力しています。

しかし、今日の課題は、AIインフラの稼働開始までの期間が延びているため、顧客もより遠い将来の需要予測を求められるようになっていることです。これは特に、初期段階の企業やスタートアップにとって大きな負担となります。「2028年の計算リソースを今から確約するよう求められるのは、永遠に等しい」と彼は表現します。

この課題に対し、Crusoe Energyが注力しているのは、「ジャストインタイム」でAIインフラを提供することです。具体的には、特に小規模なクラスター向けに、小型でモジュール化されたAIデータセンターを展開し、トークン生成までの時間やGPU管理クラスターの提供時間を短縮することを目指しています。これは、業界全体のゲームチェンジャーとなり、より多くの企業がAIの恩恵を受けられるようになることを意味します。

6.2. AI/AGIのブレイクスルーと変化の確実性

「未来がこれほど不透明だと感じた瞬間はありましたか?」という問いに対し、ロックミラー氏は「それほど不透明だとは感じていません」と答えます。彼は、モデル開発サイクル全体において大きなブレイクスルーがあったと感じており、「スケーリング則が正しかったことが証明され続けている」と指摘します。

チューリングテストがかつて不可能と思われた課題であったにもかかわらず、軽々と超えられてしまったこと。そして現在、ミレニアム懸賞問題のような何十年も未解決だった難問がAIによって解かれつつあること。これらの事実は、AI/AGIの能力が想像を絶するスピードで進化していることを示しています。

もちろん、悪質なエージェントの出現や、業界全体の揺らぎ、将来の仕事のあり方の不透明性といった懸念は存在します。しかし、ロックミラー氏は、AIが仕事と生産性の根幹をなすエンジンとなり、状況を劇的に変えていくという点については「不確実ではない」と確信しています。「AIが全体的な生産能力において、人間と同等かそれ以上の能力を確立しつつある」という彼の言葉は、AIによる変化の確実性を強く示唆しています。変化の内容には不確実性があるが、変化そのものが起こることに疑いの余地はない、というのが彼の見解です。

6.3. 「最も低コストで知能を生成する者」が勝つ時代

投資家のギャビン・ベイカー氏が「最も低コストで知能を生成できる者が勝つ」と述べていることに触れ、ロックミラー氏は、その単位として「トークンあたりのコスト」が「良い指標だ」と同意します。ただし、すべてのトークンが同じように作られているわけではなく、同じ価値単位を持っているわけではないという留保もつけます。

この時代において、人々が最適化する対象は、以下のような多岐にわたる要素だと彼は説明します。

  • スループット: 特定のモデル用途において1秒あたりに生成できるトークン量。
  • 最初のトークンまでの時間(レイテンシ): 応答速度の速さ。
  • 最初から最後のトークンまでの時間: 全体的な処理速度。
  • GPU利用率: GPUを常に稼働させ、アイドル状態をなくすこと。

Crusoeの垂直統合戦略は、プロセス全体で多くの利益を積み上げ、構築における柔軟性を高めることで、これらの指標における優位性を確立することに貢献します。

6.4. GPU利用率最大化の技術:KVキャッシュ管理の重要性

GPUの効率的な利用は、「最も低コストで知能を生成する」ための決定的な鍵となります。GPUはデータセンター全体の中で最も価値があり、最も高価なリソースであるため、「常に稼働させておく必要がある」とロックミラー氏は強調します。アイドル状態のGPUは、文字通り「お金を燃やしている」のと同じだからです。

その観点から、GPUの効率を最大化する重要な側面の一つが「メモリ管理」、特に「KVキャッシュの管理」です。KV(キー・バリュー)キャッシュは、大規模なニューラルネットワークにトークンが入力される際、以前に計算された出力トークンの答えを記憶しておくことで、再計算を省き、処理速度を向上させる仕組みです。

KVキャッシュは非常に大きくなる可能性があり、チップ内のHBM(High Bandwidth Memory)容量を大幅に超えて拡張することがあります。そのため、複数の異なるGPUやHBM層、さらにはシステムメモリであるDRAMやNVMe(ソリッドステートドライブ)、さらにはクラスターのオブジェクトストレージ層までを含め、これらを効率的に管理し、データを極めて効率的に移動させることが重要です。この高度なメモリ管理技術こそが、推論を効率的に提供し、GPUをフル稼働させ、レイテンシやスループットの指標で真価を発揮するための決定的な鍵となるのです。

6.5. マネージド推論市場の多様性とCrusoeのユニークな価値

「すべての推論プロバイダーが同じではない」とロックミラー氏は述べ、SG LangやvLLMといった汎用的なオープンソースプロジェクトがある一方で、Fireworksのような専門的な推論プロバイダーも存在すると指摘します。Crusoeはスタック全体を通じて複数の層で競合するとしながらも、「AIインフラスタック全体を見渡せば、競合するよりも協力できる方法の方がはるかに多い」という視点を強調します。石油・ガス業界の例と同様に、バリューチェーンの中で競争する部分もあれば、協力して市場全体を拡大する部分もあるという考えです。

また、「オープンソース vs クローズドソース」の議論においては、クローズドソースのフロンティアモデルに多くの資金が投じられている一方で、トークン生成数ではオープンソースモデルの方が多くなっていると現状を分析します。彼は、オープンソースが今後非常に重要で価値のあるものになると考えており、データ主権の観点から人々が自分たちのモデルや知能を自ら所有したいと考えることは重要であると述べています。未活用のプライベートデータがまだ膨大に存在し、それを活用することで劇的な性能向上が期待できるからです。

中堅企業から大企業まで、多くの企業が独自のデータで独自のモデルを持つ世界が来るのかという問いに対し、ロックミラー氏はその可能性を認めつつも、フロンティアモデルに対する需要は常になくならないと見解を示します。将来は、クローズドソースのフロンティアモデルと、オープンソースを使って自らモデルを所有するアプローチの「組み合わせ」になるだろうと予測します。CognitionやHarveyのような企業が独自のデータを活用してドメイン特化型モデルを構築している例を挙げ、このアプローチが今後も拡大していくことを示唆しています。

5年後のマネージド推論市場の展望として、ロックミラー氏は「企業がインテリジェンスに簡単にアクセスできるようにする」ことが重要だと語ります。それは、彼ら自身のインテリジェンス、つまり特定のユースケースに合わせたドメイン特化型のカスタムモデルをホスティングし、彼ら独自のプライベートなデータを大量に使って事後学習させることかもしれません。マネージド推論の重要な点は、多くのGPUや多様なデータリポジトリ、そしてクエリのルーティング先や使用するモデルの選定といった、サービス管理に伴うインフラの複雑さを抽象化してくれることにあります。これにより、企業はAIの利用に集中し、その恩恵を最大限に引き出すことができるようになるでしょう。


7. リーダーの洞察:仕事、人生、そしてAI時代の本質

チェイス・ロックミラー氏のインタビューは、彼自身の個人的な哲学や、現代社会が直面する大きな課題に対する深い洞察にも及びました。彼の言葉からは、単なるビジネスリーダーにとどまらない、多角的な視点と人間性が滲み出ています。

7.1. 子育てと仕事の両立:優先順位の力

ロックミラー氏が「素晴らしい父親である」と友人や関係者から評されることについて問われると、彼は「それは本当に、優先順位の問題です」と答えます。多忙なCEOでありながらも、子供たちと過ごす時間を人生最大の喜びの一つとし、それを最優先するために意識的な努力をしています。

例えば、子供たちの寝かしつけに間に合うように深夜便をよく利用したり、週末はサッカーコーチや水泳サポートなど、子供たちの活動に時間を捧げたりしています。また、会社メンバーには「連絡のつかない時間帯」を明確に設けていると語ります。ベイエリアの自宅にいるときは、朝の7時から8時までは会議を入れず、子供たちの朝食を作り、学校の支度をさせ、一日を元気に過ごせるよう送り出す時間を確保しているのです。

この姿勢は、仕事の成功と家庭の幸福は二律背反ではないという力強いメッセージを発しています。限られた時間を最大限に活用し、最も大切なものにエネルギーを注ぐ「優先順位の力」が、彼の人生と経営の両輪を支えていることが伺えます。

7.2. 彼の「不人気な考え」:データセンターは地域社会に有益である

「あなたが多くの人から反対され、不人気になってしまうような考えは何ですか?」という問いに対し、ロックミラー氏は「おそらく現時点では、データセンターは地域にとって有益な資産であり、建設するコミュニティで歓迎されるべきだという点ですね」と即答します。

この考えは、前述の「政策、地域社会、そして誤解の解消」のセクションで詳細に説明された、データセンターがもたらす経済的、エネルギー的、そして教育的な利益に基づいています。しかし、AI時代への不安や誤情報が蔓延する中で、データセンターに対する感情的な反発が起こりやすいのも事実です。彼のこの「不人気な考え」は、事実とデータに基づいた真実を語ることの重要性を改めて示唆しています。

7.3. 所得格差への見解と価値創造の本質

所得格差や資産格差に関する懸念について問われると、ロックミラー氏は「心配していません」と答えます。彼は、隣人を羨むような心理は人間の本質的な性質であるとしつつも、「経済発展を促すような巨大なプロジェクトがある場合、それが行われない場合よりも、実際には全員がはるかに大きな恩恵を受けている」という見解を示します。

価値の集中が前例のないレベルになっているという指摘に対しては、「世界のために生み出されているあらゆる価値について考えてみてほしい」と反論します。会社の時価総額も一つの指標だが、豊かな知能によって生み出され、世界経済に莫大な生産性の向上をもたらす価値は、時価総額の何倍もの価値を創出していると強調します。彼の視点は、個人の富の再分配よりも、経済全体のパイを拡大し、社会全体の生産性を向上させることによる恩恵を重視するものです。

7.4. 彼の考えが変わったこと:「参入障壁は幻想」

この12ヶ月で考えが変わったこととして、ロックミラー氏は「長期的で根深い競争優位性を何がもたらすかという点ですね」と語ります。多くのVCが問いかける「参入障壁(Moat)は何か」「長期的な強みは何か」という問いに対し、彼は「多くの参入障壁は『幻想』だ。ほとんどの参入障壁は存在しません」と、再び挑発的な見解を述べました。

彼がそう考える理由は、「それらのほとんどは一時的なもの」であり、特にテクノロジーの進歩やAIモデルの能力が加速している現在においてはなおさらだという点です。結局のところ、目の前で絶えず変化するチェス盤のような状況に対し、いかに素早く動き、効率的に適応できるかどうかが全てであるという結論に至っています。この洞察は、Crusoe Energyが固定的な優位性に安住せず、常に市場と技術の変化に対応し続ける姿勢の根底にあるものです。

7.5. Crusoeの将来と彼が尊敬する人物

Crusoe Energyが2028年末までに上場するかという質問に対し、ロックミラー氏は明言を避けつつも、「会社として、データセンターやAIファクトリーの建設、大規模なGPUクラスターの展開など、多額の資本が必要になります。これからの世界経済の価値を創出する、インテリジェンスのインフラ層を築くためです。それには膨大な資本が必要です。上場することには多くの利点があり、大規模な資本リソースにアクセスできるようになります」と述べ、究極的には公開市場にいたほうが会社のためになると考えていることを示唆しました。問題は「いつそうするのが我々にとって理にかなっているか」というタイミングの問題であるとしています。

現在取締役会にいない人物で、迎え入れたいと思う人物として、彼は「マイケル・デル」の名前を挙げました。彼自身がマイケル・デルという人間に対して非常に大きな敬意を抱いており、彼が築き上げたビジネス、優れたビジネスの直感、そして素晴らしい家庭人としての側面に深い尊敬の念を抱いていると語りました。

7.6. 2018年当時の自分への驚きと感謝

最後に、「2018年当時のチェイスは、今のCrusoe社を見て何が最も信じられないと思うでしょう」という質問に対し、ロックミラー氏は「このすべてが上手くいったという事実自体に驚くでしょうね」と答えます。AIクラウドプラットフォームの構築は、壮大で大胆、そして野心的なものであり、「エネルギー・ファースト」という物語が結実し、実際にエネルギーがインテリジェンス層を拡大する上でのボトルネックになるという考えが、これほどの規模で実現するとは、8年前にはほとんど信じられなかったことだと語ります。

創業当初、「150人ほどの従業員を抱えるという考えは、ほとんど想像もつかないような数」であった会社が、今日では「2,000人に迫る規模」に成長したことへの驚きと、何よりも「人々が私たちに時間を投資してくれている」ことへの深い感謝の念を表明しました。自身のキャリアで最も生産的な数年間をCrusoeに賭けてくれている従業員たちの存在が、彼にとって最も価値のある投資であり、この偉大な挑戦を支える原動力となっているのです。


結論:AI時代のインフラを再定義するCrusoe Energyのビジョン

チェイス・ロックミラー氏へのインタビューは、AIインフラの現状と未来、そしてそれを支えるリーダーの深い洞察に満ちたものでした。Crusoe Energyは、従来の常識を覆す以下の主要なビジョンと戦略を通じて、AI時代の中核を担うインフラを再定義しようとしています。

  1. 分散型AIインフラの推進: 中央集権から脱却し、安価で豊富なエネルギー源の近くにAI計算能力を分散させることで、効率性と持続可能性を両立させます。
  2. エネルギーコストの真実の追求: データセンターの建設が地域のエネルギー価格を下げるという逆説を実証し、AIインフラがエネルギーインフラの近代化を促進する触媒となる可能性を示します。
  3. 垂直統合による強靭なサプライチェーン: 「モグラ叩き」のようなボトルネックが多発するAIインフラサプライチェーンにおいて、垂直統合戦略を徹底することで、スピード、コスト効率、そしてイノベーションの自由度を最大化します。
  4. 地域社会との共生: データに基づき、データセンターの水使用量やエネルギー価格への影響に関する誤解を解消し、税収、雇用創出、地域経済活性化を通じて、データセンターが地域社会の「良き管理者」として貢献することを目指します。
  5. 「AIスーパーメジャー」構想: 石油・ガス業界の成功モデルから学び、エネルギー、データセンター、GPU、トークンのバリューチェーン全体を垂直統合することで、市場の変動に強く、持続的な成長を実現する企業体を目指します。
  6. GPU経済と減価償却リスクへの革新的アプローチ: GPU時間をコモディティと捉え、多様な収益ポートフォリオとマネージドAIサービスを通じて、減価償却リスクを管理し、チップの長期的な価値を最大化します。
  7. 未来への確固たる信念: AI/AGIのブレイクスルーとスケーリング則の正しさに確信を持ち、変化の内容には不確実性があるものの、AIがもたらす社会変革そのものには疑いの余地がないという力強いメッセージを発します。

チェイス・ロックミラー氏の「登山家のように考える」哲学は、Crusoe Energyが直面する困難な道のりを乗り越え、絶えず変化に適応し、長期的なビジョンを追求するための羅針盤となっています。彼のリーダーシップとCrusoe Energyの革新的なアプローチは、AIが私たちにもたらす無限の可能性を解き放ち、より生産的で豊かな未来を築くための、強固な基盤を構築していると言えるでしょう。

AI時代の夜明けにおいて、Crusoe Energyのような企業がどのようなインフラを構築し、どのような価値観を提示するのか。それは、私たちの社会と経済のあり方を根本から変える力を持つことになります。彼らの挑戦と成功は、これからも世界中の注目を集め続けることでしょう。