GetYourGuide創業者ヨハネス・レックが語る、逆境を乗り越え4.5億ドルを調達するまでの「野生のストーリー」と欧州テックの未来
導入: 旅行体験の未来を切り拓く、一人の起業家の軌跡
世界中の旅行者に「忘れられない体験」を提供するプラットフォームとして、GetYourGuideはその名を確立しました。その背後には、スイス連邦工科大学(ETH)で生物化学と神経生物学を専攻していた若き学生が、いかにしてオンライン旅行業界の変革者へと成長したかという、驚くべき物語があります。GetYourGuideのCEO兼創業者であるヨハネス・レック氏の旅は、単なる成功譚ではありません。それは、数々の失敗、資金繰りの苦闘、そしてCOVID-19パンデミックという未曾有の危機を乗り越え、最終的にソフトバンク・ビジョン・ファンドから4.5億ドルもの巨額を調達するに至った、まさに「野生のストーリー」です。
本記事では、ヨハネス・レック氏への独占インタビューを通じて、GetYourGuideがどのようにして現在の地位を築き上げたのか、その具体的な成長戦略、困難を乗り越えた資金調達の裏側、そして彼が提唱する欧州テックエコシステムの未来像まで、深い洞察と共に探ります。彼の言葉からは、起業家としての本質、リーダーシップの進化、そして最新テクノロジーがビジネスにもたらす具体的な影響についての貴重な学びが得られるでしょう。専門的な視点と分かりやすさを両立させ、読者の皆様が自身のビジネスやキャリアに活かせるような洞察を提供することを目指します。
セクション1: アイデアの源泉と初期の試行錯誤 – 北京のホテルから生まれた「体験の共有」
始まりは友情と旅行の失敗
GetYourGuideの誕生は、一見すると何の変哲もない、しかし決定的な旅行体験に根ざしています。2007年から2008年にかけ、スイス連邦工科大学(ETH)の学生だったヨハネス・レック氏は、共同創業者となるタオと共に北京への学生代表団旅行に参加しました。この旅でヨハネスは、個人的な失敗から後にGetYourGuideの核となるアイデアを着想します。
彼はフライトを一日早く予約してしまい、グループよりも先に北京に到着しました。初めての異国の地で、ホテルの部屋に閉じこもったヨハネスは、Googleを使って「何かできること」を探しましたが、何も見つけられず、孤独と退屈を感じていました。しかし翌日、タオが合流すると状況は一変します。タオはまるで地元の人のように北京の街を案内し、胡同での北京ダック体験や万里の長城への訪問など、ヨハネスにとって忘れられない一日を演出しました。
この「地元の人々の目を通して都市を見る」という体験は、ヨハネスに強烈なエピファニー(ひらめき)を与えました。スイスに戻った二人は、「旅行者が地元の人々と同じように体験を楽しめるようなコミュニティとウェブサイトを構築しなければならない」と強く感じ、GetYourGuideの原型となるアイデアを練り上げました。
最初のプロダクトの失敗とピボット
彼らが最初に構築したのは、「誰もがガイドになれる」ことをコンセプトにしたピアツーピアの旅行コミュニティサイトでした。しかし、これはヨハネス自身が「悲惨な失敗だった」と語る結果に終わります。2年間でわずか3~5件の予約しかなく、そのうち3件は、学生起業家としての彼らに憐れみをかけたヨハネスの母親によるものだったという逸話は、初期の苦闘を象徴しています。
この時期、彼らは「Couchsurfing」のような宿泊シェアリングのアイデアも検討しましたが、「誰も他人の家に泊まらないだろう」と考えて断念しました。後にサンフランシスコでCouchsurfingが大成功を収めたことを考えると、皮肉な判断でした。
この最初の失敗は、彼らが「プロダクトマーケットフィット」を見つけられていなかった典型的な例です。市場調査が不十分で、あくまで学生目線でのアイデアに固執していたことが、当時の課題でした。
未開拓市場の発見と「オールイン」の決断
しかし、この失敗から大きな学びを得ます。彼らは、ヨーロッパには巨大な「体験提供者(体験型観光サービスを提供する企業や個人)」市場が未開拓のまま存在することに気づいたのです。ロンドン・アイ、マダム・タッソー、ハリー・ポッターツアーといった、世界中の観光客に人気の高いアトラクションや体験は数多くあれど、2009年から2010年当時、それらのほとんどはオンライン予約に対応していませんでした。
「これはデジタル化されていない巨大な市場だ」。この確信が、彼らを次のピボットへと突き動かしました。彼らは、一般の人がガイドになるコミュニティではなく、「プロの体験提供者向けのオンラインマーケットプレイス」へと方向転換することを決意します。
大学卒業を控えたヨハネスとタオは、この未開拓市場の可能性に賭け、「オールイン」の決断を迫られました。当時の資金調達環境は厳しく、アイデアとごく初期のプロトタイプしか持たない学生に投資するVCは皆無でした。そこでヨハネスは、両親に家の抵当を入れて資金援助を頼むという、若き起業家にとって究極の選択をします。
「失敗は選択肢ではない」という信念
2年間の失敗を経験しながらも、なぜ彼らは「今度こそはうまくいく」と確信できたのでしょうか。ヨハネスは、その最大の理由として「共同創業者との強固な絆」を挙げます。互いに信頼し、共に働くことの喜びが、どんな困難も乗り越える原動力となっていました。
さらに、彼は元F1チャンピオンのニコ・ロズベルグの言葉を引用します。「レース中に壁を見てはいけない。道路を見ろ。壁を見たら壁にぶつかる」。この言葉は、彼らの「深い集中」と「失敗は選択肢ではない」という揺るぎない信念を象徴しています。「私たちは最後までやり遂げる」という強い意志が、彼らを突き動かしたのです。
初期サプライヤーの開拓と成長の兆し
「オールイン」後、彼らの最初の任務は、地道なサプライヤー開拓でした。手当たり次第に電話をかけ、訪問する「コールドコーリング」からスタート。ヨハネス自身がザルツブルクを訪れ、ホップオンホップオフバスツアーと契約を交わした経験は、当時の泥臭い営業活動を物語っています。
幸運にも、彼らはローマのバチカンツアーを提供する旅行代理店と早期に契約を結ぶことができました。当時、バチカンツアーをオンラインで販売しているところは皆無であり、これがGetYourGuideにとって大きなブレイクスルーとなります。オンライン予約が次々と入り始めた瞬間は、今でも鮮明に覚えているとヨハネスは語ります。その後も、マダム・タッソーやロンドン・アイといった有名アトラクションを運営するマーリン・エンターテイメント・グループなど、多くのサプライヤーがGetYourGuideを通じてオンライン販売を開始しました。
2010年には、初の年間純収益が約50万ドルに達し、急速な成長を見せ始めました。しかし、旅行ビジネスには季節性があります。夏には売上が伸びるものの、冬には大きく落ち込むため、VC資金がなかった初期の1~2年間は、毎年冬が来るたびに資金ショートの危機に直面し、文字通り「破産寸前」の綱渡りの日々が続きました。彼らはまだ、真の安定には程遠い状況だったのです。
セクション2: 資金調達の苦闘とブレイクスルー – 「VCからの100回の拒否」を越えて
欧州VCエコシステムの黎明期と「コピーキャット」の罠
GetYourGuideが初期の成長を見せ始めた2010年から2011年当時、ヨーロッパのベンチャーキャピタル(VC)シーンは、今日の活況とはかけ離れた黎明期にありました。この状況は、ヨハネス・レック氏にとって、資金調達における最大の障壁の一つとなります。
「私たちは米国市場のコピーではなかった」という点が、VCからの拒否反応を招く最大の要因でした。当時のヨーロッパ、特にベルリンでは、Rocket Internetのような「米国の成功モデルを模倣し、欧州市場で展開する」という「コピーキャット」戦略が主流でした。ヨハネスが当時の著名な投資家と話した際も、「米国における同等のビジネスは何か?」と問われ、「前例がない、私たちは新しいことを試している」と答えると、門前払いされたと言います。体験型マーケットプレイスという概念が、まだVC業界に浸透していなかったのです。
結果として、GetYourGuideは100回以上ものVCからの拒否に直面しました。さらに、米国のVCからは「シリコンバレーに移転しなければ資金は出せない」という条件を突きつけられることも少なくありませんでした。しかし、ヨハネスはヨーロッパに留まることを選択し、この「不毛の時代」を粘り強く耐え抜きました。
転機:Brent Hobermanとの劇的な出会い
資金調達が絶望的と思われた状況で、GetYourGuideに転機が訪れます。それは、lastminute.comの創業者であるBrent Hobermanとの出会いでした。ヨハネスは、LWEBというスタートアップカンファレンスでステージに立つBrent Hobermanに目をつけます。イベント終了後、彼は大胆にも直接Brentに声をかけ、「私は旅行業界の者です。あなたはlastminute.comを創業されました。ぜひお話させてください」とビジネスカードを受け取ります。
その後、送ったコールドメールが実を結び、ロンドンでの面会が実現します。しかし、当時多忙を極めていたBrentのオフィスで、ヨハネスは4時間も待たされた挙げ句、与えられたミーティング時間はわずか10分でした。この限られた時間で、ヨハネスはGetYourGuideのビジョンを情熱的に語ります。「私たちは旅行体験のマーケットプレイスを創造しています。これは旅行業界における次の巨大なフロンティアであり、まだ誰も開拓していません」。
Brent Hobermanの反応は、ヨハネスにとって忘れられないものとなりました。彼は、「lastminute.comの創業時、Booking.comをシードステージで買収する機会を逃し、今でもそれを後悔している。この間違いは二度と繰り返さない。あなたに投資しよう」と即座に決断したのです。これがGetYourGuideにとって初の外部資金であり、100万ドルのシード投資(プレマネー評価500万~600万ドル)となりました。
「ブランドVC」のシグナリング効果と「GP」の重要性
このBrent Hobermanからの投資が、その後の資金調達における大きな転機となります。彼の紹介により、GetYourGuideは米国VCとのミーティングの機会を得られるようになります。特にSpark CapitalのパートナーであるAlex Finkelsteinが、GetYourGuideのビジネスモデルに強い関心を示しました。
そして2013年、Spark Capitalがリードする形で、GetYourGuideはシリーズAで1400万ドルを調達します(プレマネー評価3000万~3500万ドル)。これは当時のヨーロッパのスタートアップとしては破格の規模でした。この時点でGetYourGuideは年間純収益約200万ドルに達し、年率2~3倍の堅調な成長を見せていました。テイクレートも25%と、ビジネスモデルの健全性が証明されつつありました。
ヨハネス・レック氏は、この経験からVCからの資金調達に関する重要な教訓を語ります。「Sequoia Capital、Index Ventures、Spark Capitalといった著名なブランドVCからの投資は、次のラウンドの資金調達を劇的に容易にする『シグナリング効果』がある」と彼は強調します。彼らのキャップテーブルに名を連ねることで、信頼性が高まり、優秀な人材の採用も容易になるというのです。
しかし、それ以上に重要なのは「GP(ゼネラルパートナー)の長期的なコミットメント」であると指摘します。多くのGPは10年以内にファンドを去ってしまう可能性があるため、創業時にファンドを立ち上げたGPや、長期的な関係を築けるGPを選ぶべきだと助言します。実際にGetYourGuideの初期投資家であるAlex Finkelstein(Spark Capital)とFergal Mullen(Highland Europe)は、それぞれがファンドの共同創業者であり、現在もそのファームに留まっています。彼らの長期的な視点と継続的なサポートが、GetYourGuideの成長にとって極めて重要だったと、ヨハネスは振り返ります。このようなGPとの関係性は、単なる資金提供者以上の価値をもたらすのです。
セクション3: 成長痛と再起 – 「ほぼ会社を失いかけた」教訓とBooking.com創業者からの助言
一夜にしての「セレブ」感覚と最大の過ち
シリーズAで1400万ドルという巨額の資金を調達したGetYourGuideは、一夜にして「名もなきスタートアップ」から「スタートアップシーンの注目株」へと躍り出ました。この突然の成功は、ヨハネス・レック氏の人生と経営に大きな影響を与えます。彼は当時を振り返り、「突然セレブになったような気分だった」と語ります。誰もがGetYourGuideとビジネスをしたがるようになり、GoogleやMetaの幹部からも電話がかかってくるようになりました。
しかし、ヨハネスはこの時期こそが「人生で最大の過ちを犯した瞬間」だったと告白します。彼は、当時まだ未熟な起業家として、潤沢な資金と外部からの過度な注目によって、冷静な判断力を失いかけました。具体的には、「ボード会議でVCの意見に耳を傾けすぎた」ことが最大の失敗だったと反省します。彼らは日々のビジネスで機能している自分たちの戦略ではなく、VCが提唱する「より長期的で広範なビジョン」に盲従してしまったのです。
戦略の拡散と不適切な人材採用が招いた危機
VCの助言は、多岐にわたりました。「サプライヤー向けにSaaS製品を構築すべき」「複数の市場に同時に展開すべき」「新しい顧客セグメントやサプライヤーセグメントにも進出すべき」「そして、これらを実現するために多くのシニア人材を雇用すべき」というものでした。
ヨハネスは、この助言が「シリーズAの企業が、適切なマネジメント経験もないのにこれら全てを実行しようとすること」は「最悪の行為だ」と断言します。スタートアップは「狭く深く」掘り下げ、核となるプロダクトマーケットフィットを徹底的に追求すべきだったのです。
結果として、GetYourGuideは「広範に手を出しすぎ」てしまいます。さらに、大規模な成長企業や公開企業で成功した経験を持つ「間違ったタイプの人材」を多数採用してしまいました。これらの人材は、まだ組織が未熟で、日々泥臭い業務をこなし、迅速な意思決定と実行が求められるシリーズAのスタートアップの文化には合いませんでした。
当然の結果として、成長は鈍化し、経費は急激に膨れ上がっていきました。シリーズA調達からわずか1年後、GetYourGuideは危機的状況に陥り、会社全体の30%にあたる人員を解雇せざるを得なくなりました。これは、ヨハネスにとって極めて苦渋の決断であり、会社が本当に失われかけた瞬間でした。
救世主:Booking.com創業者Case Kolenの登場
会社が存続の瀬戸際に立たされていた絶望的な状況で、GetYourGuideに奇跡的な転機が訪れます。ある金曜の夜、Netflixを見ていたヨハネスに、Booking.comの伝説的な創業者兼CEOであるCase Kolenから一本の電話がかかってきたのです。CaseはGetYourGuideのビジネスに興味を持ち、翌朝9時にはベルリンのオフィスに来ると告げました。
土曜の朝、9時にはCaseがオフィスに現れ、ヨハネスと共にホワイトボードに向かいました。CaseはGetYourGuideのビジネスの数字、コホート分析、サプライヤー構造など、すべてを一日かけて深く分析しました。ヨハネスは、そのセッションを「ジェダイのグランドマスターと部屋にいるようだった」と回想します。Caseの質問は深く、的確で、ヨハネスは彼の深い洞察力に圧倒されました。
その日の終わりに、Caseは驚くべき提案をします。GetYourGuideの取締役会に加わり、個人的に100万ドルを会社に投資するというのです。このタイミングは、ヨハネスがまさに人員削減を行い、会社を再構築しようとしていた時と重なっていたため、まさに「神の啓示」とも言える出来事でした。Caseは、ヨハネスが直面している課題を自らの経験から理解し、適切な指導を与えられる唯一の人物だったのです。ヨハネスは後にCaseに「あなたからは父親から以上に多くのことを学んだ」と伝えるほど、彼の存在は決定的なものでした。
Case Kolenからの「絞り込み」の教訓
Case Kolenはヨハネスに、Booking.comでの経験から得た最も重要な教訓を伝えました。それは、「やりすぎないこと(Don't do too much)」そして「コアに集中すること(Focus on the core)」でした。
Caseは、Booking.comでも長年「体験」市場に目を向けていたが、常に自身が「NO部署」の責任者として、魅力的に見えるイノベーションプロジェクトに「NO」を突きつけ、コアビジネス(宿泊予約)への徹底的な集中を促していたと語ります。彼は、多くの創業者が自社のコア製品の可能性を過小評価し、魅力的に見える多くの「セクシーな」プロジェクトに手を出しすぎる傾向があると指摘しました。しかし、結果としてどれも中途半端に終わり、企業の成長を阻害してしまうのです。
この教訓から、ヨハネスはスタートアップの初期段階では、「狭く深く」掘り下げ、核となるプロダクトマーケットフィットを徹底的に磨き上げ、それをスケールさせることに集中することが最も価値があるという学びを得ます。
CEOとしての成長とボードの「導き方」
この苦い経験を通じて、ヨハネスはCEOとして大きく成長します。彼は、「各ステージに合った人材」の重要性を痛感しました。NetflixやMeta、Googleといった大規模企業で成功した人材が、30~50人規模のスタートアップで活躍できるとは限らないのです。早期ステージの企業には、日々の業務に深く関わり、迅速な意思決定と実行が求められる「起業家精神旺盛な人材」が必要不可欠です。
Case Kolenの助言と人員削減、そして戦略の再構築により、GetYourGuideは再び「コア」へと焦点を戻します。具体的には、コア事業である「アトラクションチケットとガイドツアー」に集中し、市場も「欧州の主要都市(ローマ、パリ、ロンドン)」に絞り込みました。新しい高価な役員を採用する代わりに、社内の優秀な人材を昇進させ、彼らに責任と権限を与えました。彼らはたとえ経験が浅くても、現場の状況をよく理解し、高いモチベーションを持っていました。
この再集中戦略は劇的な効果をもたらします。需要が回復し、成長率は再び年率100%以上に。ユニットエコノミクスも大幅に改善しました。そしてわずか6~12ヶ月後、GetYourGuideはSpark CapitalとHighland Europeが共同リードする形で、次のシリーズB(約2500万ドル、プレマネー評価9000万~1億ドル)を円滑に調達します。Spark Capitalは、GetYourGuideが危機を乗り越え、会社を再構築したことに深く感銘を受けていました。
ヨハネスは、この時期に「ボードの意見にただ従うのではなく、自らの意見を持ち、ボードを導く」姿勢こそが、VCからの信頼と尊敬を得る上で重要だと気づきました。明確な戦略と、それを実行する揺るぎないリーダーシップが、シリーズB以降の資金調達において「数字」と並んで最も重要な要素となることを証明したのです。
セクション4: グローバル展開とパンデミック危機 – SoftBankからの大型調達と「セコイアの木」の精神
成長の継続と米国市場への挑戦
シリーズB調達後、GetYourGuideは数年間、欧州市場での「深化」戦略を継続し、着実に成功を収めました。サプライヤーと需要ベースを拡大し、ヨーロッパ内のより多くの国々へとサービスを広げていきました。
この時期、彼らは米国市場にも一部進出します。ヨハネス・レック氏はこの米国進出について、後に「時期尚早だったかもしれない」と振り返ります。米国は巨大な市場であり、その攻略には膨大なリソースが必要となります。しかし、GetYourGuideは過度に無理をすることなく、現地の足がかりを築くことに成功しました。この継続的な成長と、戦略的な市場開拓が、2019年の大規模資金調達へと繋がっていきます。
SoftBank Vision Fundからの巨額調達
2019年、GetYourGuideは再び、そして今度は桁違いの規模での資金調達を実現します。ソフトバンク・ビジョン・ファンドとシンガポール政府系ファンドTemasekから、総額約4億5000万ドルを調達したのです(当時の評価額は15億~16億ドル)。この資金の一部は、初期の株主からのセカンダリー購入にも充てられました。
この大規模調達の背景には、当時のVision Fundの主要メンバーの存在がありました。彼らの中にはAirbnb出身者も多く、Airbnbが体験型旅行市場で多額の投資を行いながらも成功を収められなかった経験がありました。彼らはGetYourGuideをこの分野の「イノベーションリーダー」と認識し、この巨大な体験市場を現実のものとするために、巨額の資金を投入する決断をしました。
孫正義氏との驚くべき会談の舞台裏
世間では「孫正義氏が30分で5億ドルを投資する」といった逸話が語られることが多いですが、GetYourGuideのケースは、より伝統的なグロースエクイティのデューデリジェンスプロセスを経たものでした。しかし、投資プロセスの最終段階で、ヨハネスは孫正義氏との直接の面談を実現します。
会談は、サンフランシスコの孫氏のプライベートな家で行われました。部屋にはナポレオンの絵画が飾られていたとヨハネスは鮮明に記憶しています。ヨハネスは、孫氏が「P&L(損益計算書)」とマーケットプレイス事業の財務構造、収益性、評価額について驚くほど深く関心を持っていたことに衝撃を受けます。世間の「クレイジーな投資家」というイメージとは異なり、孫氏は極めて財務に精通した、現実的な質問を投げかけてきたというのです。
そして会談の後半では、孫氏の「製品ビジョン」が炸裂します。2019年当時、既に孫氏は「AIがこのビジネスをどう変えるか」「未来のUX、パーソナライズ、VRの活用」といった、極めて先見の明のある質問を投げかけていました。たとえば、ルーブル美術館での体験がVRによってどう変わるか、顧客のミーティングポイントをどう効率的に見つけさせるか、といった具体的な例にまで言及したといいます。ヨハネスは、孫氏が友好的であると同時に、驚くほど財務に強く、同時に極めてビジョナリーな思想家であったと語り、その洞察力に深く感銘を受けました。この会談後、投資は正式に決定されました。
パンデミックという未曾有の危機
この4億5000万ドルの大型調達からわずか6ヶ月後、世界はCOVID-19パンデミックという未曾有の危機に襲われます。このタイミングでの資金調達が、結果としてGetYourGuideを破産から救う奇跡的な要因となります。
2020年2月のボード会議では、SoftBankやTemasekといったアジア系の投資家が、既にアジアで進行していたロックダウン状況から危機を警告し、事業継続計画の策定を促しました。しかし、当時のヨハネスたちは、2015年のパリ同時多発テロなど、これまでの危機を乗り越えてきた経験から、「今回も何とかなるだろう」と楽観視していました。
しかし、そのわずか3週間後、現実は彼らの想像をはるかに超えるものでした。GetYourGuideの売上は「文字通りゼロ」になったのです。数万件あった1日の予約数は15件にまで落ち込み、ウェブサイトには誰も訪れなくなりました。600~700人もの従業員を抱えながら収入ゼロという状況は、ヨハネスにとって「高速道路で時速100マイルで壁に激突する」ような衝撃でした。彼は最初、現実を受け入れられず、「アナリティクスが壊れているのでは」とさえ思ったといいます。10年以上かけて築き上げてきた会社が、一瞬にして消え去るかもしれないという恐怖に直面しました。
「外科医」モードでの危機対応と「セコイアの木」の精神
絶望的な状況の中、ヨハネスはすぐに「外科医」モードに切り替えます。「すべてが壊れた。車は完全に破壊され、患者は生き残らなければならない。私は患者を助けなければならない」という冷静な視点を持つことで、感情に流されずに戦略的な思考を始めました。
投資家の一部からは「全従業員を即座に解雇し、現金を温存せよ。その後、ゼロから会社を再構築すればよい」という過酷な助言も受けました。しかしヨハネスは、この助言には従いませんでした。CFOと共に複数日にわたる議論の末、GetYourGuideは独自の危機対応計画を策定します。それは「危機がどれくらい続くか」という複数のシナリオに基づき、「危機後の反発に備え、会社を再構築する」という、長期的視点に立ったものでした。
ヨハネスは2020年3月には、全従業員にメールを送り、「これは大規模な危機だが、同時にとてつもない機会でもある」と語りかけます。そして、パンデミック後にGetYourGuideが真っ先にゲートから飛び出し、サプライヤーを支援し、製品を改善し続ければ、「パンデミック前よりもはるかに良い会社になれる」と説きました。このビジョンを伝えるために使われたのが、「セコイアの木」のメタファーでした。カリフォルニアのセコイア国立公園を妻と訪れた際に学んだように、山火事の後、養分豊富な土壌と日光を得てセコイアの木が最も大きく成長するように、パンデミック後にGetYourGuideをより強く成長させるという決意を示したのです。
社員との共闘と驚異的な回復
この「セコイアの木」のビジョンに、従業員たちは驚くべき反応を示しました。特にエンジニアリングとプロダクト部門の社員は、給与削減と引き換えに株式を受け入れることを提案。平均で30%以上の給与を削減し、一部のリーダーシップ層では80%に達した者もいたといいます。これは、社員たちが会社への深い信頼と信念、そして共有されたビジョンを持っていた証拠でした。
また、ドイツ政府の時短労働制度も活用し、人件費を抑制。これらの対策により、GetYourGuideはパンデミックの2年間で人員削減を15~20%に留め、エンジニアやプロダクト担当者は一人も解雇されませんでした。これは、ゼロ収益の期間が1年以上続いたにもかかわらず、です。
この期間中、GetYourGuideは製品を再構築し、サプライヤーとの関係を強化しました。多くのサプライヤーがオフラインからオンラインへの移行を余儀なくされたため、GetYourGuideはより有利な契約を結び、主要なアトラクションやテーマパークとの直接契約を増やしました。
2020年と2021年は厳しい年が続きます。特にヨーロッパは長期的なロックダウンに見舞われ、売上は2019年の半分程度に低迷しました。しかし、米国市場は堅調な国内旅行需要に支えられ、GetYourGuideの需要の一部を牽引しました。
そして2022年初頭、世界中でCOVID-19のオミクロン株が比較的穏やかな変異株と認識され、規制緩和が進むと、「人々は旅行に戻るだろう」というヨハネスの予想は的中します。2021年末から2022年3月にかけて、GetYourGuideの売上は驚異的な10倍成長を記録。そして2022年には、パンデミック前(2019年)の2倍の取引量を達成するまでに回復したのです。
ヨハネスは、「パンデミック中に全ての正しい手を打てた」と振り返ります。巨額の資金調達、そしてそれを基盤とした社員とサプライヤーとの共闘、さらに製品改善への継続的な投資が、GetYourGuideを未曾有の危機から救い、かつてない成長へと導いたのだったのです。
セクション5: GetYourGuideの現在と未来 – キャッシュフロー経営とAIのインパクト
ブレイクイーブン達成と「規律ある成長」
COVID-19パンデミックからの劇的な回復を経て、GetYourGuideは新たなステージへと進化しました。2023年にはさらに1億ドルの資金を調達しましたが、この頃には既に「ブレイクイーブン」を達成しており、この新たな資金に手を付けることなく事業を運営できたといいます。
現在のGetYourGuideは、パンデミック前の5倍の規模に成長し、黒字化も達成しています。これにより、「独自のキャッシュフロー」でイノベーションに投資できるという、企業として極めて健全で理想的な状態にあります。ヨハネス・レック氏は、この経験から資金調達と投資に関する重要な教訓を語ります。
彼は、創業初期の「過度な資金調達」が、希薄化を招くだけでなく、組織の規律を緩め、無駄な投資を誘発する可能性があると警鐘を鳴らします。「利益を出す企業は、自社のキャッシュを投資する際に、より規律が強制される」というのです。この「制約」こそが、企業をより集中させ、効率的なイノベーションを促すための「素晴らしい制約」であると説きます。彼は、起業家が「投資して、あとは運任せ」という姿勢で、成果の上がらないプロジェクトを漫然と続けるのではなく、収益性を意識した投資の重要性を強く訴えます。
セカンダリー売却の哲学
2019年のSoftBankラウンドでのセカンダリー売却は、ヨハネスにとって「非常に役立った」経験でした。それ以前は「オールイン」の姿勢を示すため、セカンダリー売却に強く抵抗していたといいます。しかし、この売却によって得た資金は、パンデミックという未曾有の危機に直面した際に「冷静さ」をもたらし、経営判断に役立ったと語ります。彼自身、両親からの借金を抱えていましたが、その借金を「君の遺産だ」と返済を拒まれるほど、彼らは純粋な支援者でした。
ヨハネスは、適切なセカンダリー売却額について「会社や成熟度にもよるが、数百万ドル程度が適切だろう」と提言します。それは「二度と働く必要がない」ほどの金額であるべきではなく、ライフスタイルを過度に変化させるべきではないと忠告します。豪華な生活やプライベートジェットは不要であり、そのような「紙上の富」に惑わされず、質素な生活を維持し、成功を再投資することの重要性を強調します。
エンジェル投資家としての学び:「成功の多様性」と「市場に応じた文化構築」
ヨハネスは現在、30~40社にエンジェル投資を行っており、TravelPerk、Trade Republicといった成功事例も輩出しています。この投資活動を通じて彼が得た最大の学びは、「成功への道は一つではない」ということでした。
以前は、GetYourGuide独自の文化や運営モデルに絶対的な自信を持っていたといいます。しかし、Trade Republicのように「創業者が製品開発を完全に集中管理し、よりタフでハッスルな文化を持つ」企業が非常に成功しているのを見て、自身の「世界観」が変わったと語ります。
彼の洞察は、「異なる市場は異なる文化を必要とする」というものです。GetYourGuideのようなホスピタリティ産業は、顧客に「忘れられない体験」を提供するため、「人間らしい」文化が必要です。一方、フィンテックやSaaSのような産業は、異なるアプローチが成功しうる。市場と顧客、そして従業員の動機に合わせた文化構築の重要性を語ります。これは、起業家が自社の市場特性を深く理解し、それに適した組織文化を意図的に作り上げることの重要性を示唆しています。
AIがGetYourGuideに与えるインパクト
最新技術、特にAIは、GetYourGuideのビジネスに既に劇的な変革をもたらしています。ヨハネスは、その効果が特に「サプライヤーサイド」で顕著であると強調します。
以前は、体験商品のアップロードには数日を要していました。説明文、写真、集合場所、ツアー行程、利用条件など、多岐にわたる複雑な情報を手動で入力し、複数のチェックボックスを埋める必要があったためです。しかしAIの導入により、サプライヤーはURLを貼り付けるか、あるいは関連ファイルをアップロードするだけで、製品情報を自動生成・最適化できるようになりました。これは「純粋な魔法のようだ」とヨハネスは表現するほどの効率化です。
その他にも、AIは価格設定の最適化、在庫管理の効率化、そして過去のデータに基づいた体験改善の提案など、GetYourGuideのプラットフォーム全体の運用を劇的に改善しています。将来的には、エンジニアの数は増えるものの、AIによる生産性向上が極めて大きいため、想定よりは少ない人数で済むだろうと予測しています。AIは単なる自動化ツールではなく、ビジネスの核となる意思決定と運用プロセスを根本から変革する力を持っていることを、GetYourGuideは実証しています。
未来のサプライヤー戦略:ショーとイベント市場の可能性
GetYourGuideが今後深く踏み込みたいと考えているのが、「ショーとイベント」市場です。ヨハネスは、観光客にとって現地のスポーツイベント(例:ロンドンでアーセナルやチェルシーのサッカー試合を観戦する)や、コンサート、演劇は、その都市を体験する上で非常に重要な要素であると指摘します。
これは、従来の「チケット販売市場」とは異なる、よりマージンの高い「観光客向けホスピタリティチケット」というニッチを狙うものです。このようなチケットは、単なる入場券ではなく、特別な体験やサービスを含んでいることが多く、観光客はそれに対して高い支出を厭いません。
クラブ側にとっても、GetYourGuideのようなプラットフォームを通じてチケットを販売することには大きなメリットがあります。国際的なブランド構築、真のファン層の獲得、そしてイベント時に高い消費を行う観光客を誘致できるという点です。ヨハネスは、この市場が今後数年間で大きく成長する可能性を秘めていると見込んでいます。GetYourGuideは、AIによるサプライヤー側の効率化と、この新しい市場セグメントへの戦略的拡大により、旅行体験プラットフォームとしての地位をさらに強化しようとしています。
セクション6: 欧州テックエコシステムの課題と未来への提言 – 「人間らしい繋がり」の創造
CEOとしての自己変革と「持続可能な働き方」
GetYourGuide創業から15年、ヨハネス・レック氏はCEOとして大きな自己変革を遂げました。彼は、その最大の変化は「より謙虚になったこと」だと語ります。自身の欠点や間違いを認識し、補完的なスキルを持つチームの重要性を理解するようになったのです。創業初期の「猛烈な自信」は会社を前進させる推進力となりましたが、時には排他的になり、イノベーションを阻害したこともあったと反省しています。
働き方についても、初期の週7日働き詰めるようなスタイルから、現在は「持続可能な成長」のために異なるアプローチをとっています。彼はCEOを「システム」と捉え、自身のユニークな強み(特に戦略策定の洞察力)に集中するために、内省や外部との対話の時間を意識的に確保しています。
「働きすぎがスタートアップを破壊することもある」と彼は指摘します。一定の規模に達した企業では、「持続可能な労働時間と高い集中力」のバランスが極めて重要であり、それこそがCEOが長期的に最高のパフォーマンスを発揮するための鍵だと説きます。彼自身も、スポーツをする時間を増やし、家族との時間を大切にすることで、この高圧的な環境でのエネルギーレベルを維持していると言います。彼にとって、仕事はもちろん重要ですが、人生の長い道のりの中で、子供たちや家族との時間はそれ以上に価値のあるものだと考えています。
欧州テックエコシステムの構造的課題
ヨハネスは、欧州のテックエコシステムが直面する構造的な課題に対し、強い危機感と同時に、変革への熱意を表明します。
- 圧倒的な資金不足: 欧州のVC投資額は年間約500億ドル程度であり、米国の2000億ドル超と比較して圧倒的に少ないのが現状です。特に成長ステージの企業にとっては、大規模な資金調達が困難を極めます。彼は、ドイツが年金制度に年間1000億ドルもの補助金を投じているにもかかわらず、VCへの投資はわずか70億ドルに過ぎないという現状を批判し、「これは未来ではない」と強く訴えます。
- グローバルスケール経験を持つシニア人材の不足: 欧州には、GetYourGuideのように「数千万人の顧客にサービスを提供し、100億ドル以上の企業価値を持つビジネスを構築した」経験を持つシニア人材(特に最高製品責任者(CPO)のようなリーダー職)が極めて少ないと指摘します。GetYourGuideでも、最高レベルの人材はシリコンバレーから招聘せざるを得ないのが現状です。
- 高スキル人材誘致を妨げる行政の障壁: 官僚主義的な「レッドテープ」が、高スキル人材の誘致を阻害しています。ヨハネスは、Netflixの元CTOをドイツに招聘する際、多額の報酬を提示したにもかかわらず、ビザ取得に半年を要したという実体験を語ります。サンフランシスコの領事館の予約が6ヶ月先まで埋まっていたため、ドイツ外務省に直接電話して手配してもらう必要があったといい、これは欧州のテックエコシステムが抱える根深い問題を示しています。また、高スキル人材への税制優遇措置が不足している点も課題です。
- 政治的安定と市民社会の重要性: 彼は、欧州における極右勢力の台頭は、欧州の多様性と魅力を損ない、国際的な人材を遠ざける要因となると深く懸念しています。健全で包括的な市民社会の存在が、才能ある人々を惹きつけ、イノベーションを促進するために不可欠であると強調します。
未来への提言:欧州の「ユリーカの瞬間」を掴め
ヨハネスは、米国の政治的・社会的な不安定さ(例:トランプ政権の台頭)が、欧州にとって「世界中のタレントを引き寄せるユリーカの瞬間(好機)」であると強調します。欧州の最大の強みは「住みやすさ」であり、ロンドン、ベルリン、ミュンヘンといった魅力的な都市には、多くの人々が住みたいと願っています。
この好機を逃さず、欧州は積極的な政策を打ち出すべきだと提言します。
- VC資金の大幅増額: 米国レベルに匹敵するVC資金の投資を政府レベルで推進すべき。
- 高スキル人材への税制優遇と規制緩和: コンピューターサイエンスの学位を持つ人材には、5年間の税金免除やストックオプションへの非課税など、大胆な優遇措置を導入すべきだと主張します。そして、ビザ取得プロセスなどの官僚主義的な障壁を徹底的に取り除く必要があります。
- 欧州の魅力を再構築し、世界の人材を惹きつける: 極右思想に反対し、包括的で進歩的な社会を構築することで、欧州のブランド力を高めるべきだと考えます。
ヨハネス自身の役割は、政界入りすることではなく、GetYourGuideを世界的な大企業に成長させること、そしてテクノロジーリーダーとして欧州の未来について発言し、教育することだと考えています。彼は、富の不平等については欧州は米国ほど深刻ではないと指摘し、問題は「資金の投資先」であり、高齢者世代だけでなく、若者世代への投資を増やすべきだと強く主張します。
究極のビジョン:「人間らしい繋がり」の創造
ヨハネス・レック氏が最も記憶されたいこと、それは「より人間らしい繋がりを創造した」ことです。GetYourGuideを通じて世界中の旅行者に忘れられない体験を提供し、人々を繋ぐこと。そして、分断ではなく、人々が互いに関わり合い、共に発展していくより良い欧州の未来を築くこと。彼の深い情熱は、単なるビジネスの成功を超え、「人間らしい繋がり」という普遍的な価値の創造に向けられています。
クイックファイアの質問からの学びの集約
- ボードに加えたい人物: ジェフ・ベゾス。Amazonの創業者であり、マーケットプレイス構築における彼の厳格な顧客中心主義と深いビジネス洞察力は計り知れない価値がある。
- 将来のエンジニア数: AIによる生産性向上により、数は増えるものの、以前の想定よりも少ない人数で済むだろう。
- AIのインパクト: サプライヤー側の製品登録、価格設定、在庫管理、体験改善提案など、劇的な効率化と最適化をもたらしている。
- 将来の投資分野: 「ショーとイベント」市場。特に観光客向けのホスピタリティチケットは高マージンで、観光客が求める体験の重要な一部となる。
- 最も影響力のあるエンジェル投資家: Booking.com創業者のCase Kolen。彼の助言はGetYourGuideの危機からの回復に決定的な役割を果たした。
- CEOとしての変化: 創業初期の強い自信から、自身の欠点を認識し、補完的なリーダーシップを重視する謙虚さへと変化した。自信は推進力になったが、時には排他的だったと反省。
- 新規親へのアドバイス: 完璧な親やCEOになろうとしないこと。仕事と家庭のバランスを見つけることが最も重要。子供は仕事以上に人生で大切な存在。
- GetYourGuideは最後の仕事か?: おそらくそうなるだろう。これほど情熱を傾けられる仕事は他にない。
- 最終的なレガシー: GetYourGuideと欧州の未来への貢献を通じて、「人間らしい繋がりを創造した」人物として記憶されたい。
結論: 変革の旅は続く
ヨハネス・レック氏とGetYourGuideのストーリーは、起業家精神、適応力、そして揺るぎないリーダーシップの重要性を雄弁に物語っています。北京でのささやかなひらめきから始まり、数々の試行錯誤、資金調達の苦闘、そしてパンデミックという未曾有の危機を乗り越え、GetYourGuideは旅行体験の未来を切り拓くグローバルプラットフォームへと成長しました。
彼の言葉からは、テクノロジーとビジネスが、いかにして人間の体験を豊かにし、社会の課題を解決しうるかという深い洞察が伝わってきます。AIによる効率化は単なるツールではなく、ビジネスモデルを根本から変革し、より多くの人々に価値を届ける手段となっています。また、欧州のテックエコシステムが抱える構造的な課題への彼の提言は、日本のスタートアップエコシステムにとっても示唆に富むものでしょう。
ヨハネス・レック氏の「野生のストーリー」は、私たちに多くの学びを与えてくれます。それは、失敗を恐れずに挑戦し、市場の変化に適応し、そして何よりも「人間らしい繋がり」という本質的な価値を追求し続けることの重要性です。彼の旅はまだ続いており、GetYourGuideが今後、旅行体験の未来をどのように形作っていくのか、目が離せません。彼の言葉から得た洞察を、ぜひ皆様自身のビジネスやキャリアに活かしてください。