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Personio CROが語る「AI駆動型GTMチーム構築の5つの教訓」:SaaS企業がAIを戦略の中心に据える方法

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SaaS業界は常に技術革新の波に乗り、ビジネスのあり方を再定義してきました。そして今、AIはGo-To-Market(GTM)戦略のあらゆる側面を根底から覆す可能性を秘めた、新たなフロンティアとして注目されています。しかし、単に最新ツールを導入するだけでは、真の変革は訪れません。AIを組織文化、プロセス、そしてデータ基盤に深く統合することで、企業は競争優位性を確立し、持続的な成長を実現できるのです。

今回のSaaStr AI Annual Summitでは、PersonioのCRO(最高収益責任者)であるPhilip Lacor氏が登壇し、「AI駆動型GTMチームを構築するためのステップ・バイ・ステップのプレイブック」と題し、その具体的な道のりとそこから得られた5つの重要な教訓を共有しました。従業員数1,500名を擁し、ミュンヘンに本社を置く欧州のリーディングHR・給与計算プラットフォームであるPersonioが、どのようにしてAI-Powered GTMへの変革を推進しているのか、その詳細を深く掘り下げていきます。


Part 1: PersonioのAIジャーニー:AI Surge Weekから戦略的変革へ

PersonioのAIへの道のりは、2023年5月に開催された画期的な社内イベント「AI Surge Week」から始まりました。これは、CEOであるHanno氏と共同創業者が主導し、全社員がLLM(大規模言語モデル)にアクセスし、その可能性を探索する機会を提供するという、まさに全社的な取り組みでした。

この1週間のイベントでは、OpenAI、Mistral、AWSといったAI業界を牽引する企業から専門家が招かれ、最新のAI技術に関する講演が行われました。社員はLLMに触れるだけでなく、エンジニアの支援を受けて実際にAIエージェントを構築するプロジェクトチームを結成しました。この取り組みは「大成功」と称され、社内はAIの話題で大いに盛り上がりました。イベント後も、社員の約90%が毎週LLMを利用するようになり、AIの活用が急速に浸透しました。

この「AI Surge Week」は、ボトムアップでAIへの興味と利用を促進する素晴らしい機会となりました。しかし、Philip Lacor氏は、真の組織的変革を達成するためには、単なる個人の利用促進だけでは不十分であり、より体系的で「トップダウン」のアプローチが必要であるという認識に至ります。


Part 2: AI駆動型GTMチーム構築のための5つの教訓

Philip Lacor氏は、PersonioがAI-Powered GTMチームへの変革を進める中で得られた、以下の5つの重要な教訓を共有しました。これらは、あらゆるSaaS企業がAIをGTM戦略に統合する上で指針となるものです。

教訓1: リーダーシップが変革を牽引する:実験からスケールへの移行

AIの導入は、しばしば個々の従業員が新しいツールを試すというボトムアップの動きから始まります。しかし、Philip Lacor氏が強調するように、この実験段階から組織全体でのスケール、そして真の変革へと移行するためには、トップダウンの強力なリーダーシップが不可欠です。

例えば、AIを活用した新しいワークフローを導入する際、従業員はツールの使い方を学ぶ意欲があるかもしれません。しかし、そのワークフローを組織全体に展開し、既存の業務プロセスを根本的に変更するためには、経営層による明確なビジョンの提示と、それに伴うリソースの再配分、そして予算の確保が必要となります。GTMの変革は、単に営業担当者がより良いメールを作成するだけでなく、リード生成、顧客エンゲージメント、アップセル・クロスセル、顧客サポートといったGTM活動全体に影響を及ぼします。これらの領域で大きな変更を加えるには、各部門のリーダーが協調し、戦略的な意思決定を下す必要があるのです。

AIの導入は、単なる技術導入ではなく、組織の根本的な変化を伴うため、CEOやCROのようなトップリーダーが自ら率先してAIの可能性を信じ、その推進者となることが、成功への第一歩となります。

教訓2: クロスファンクショナルな連携が成功の鍵

Philip Lacor氏は、AIをGTMに統合する上で、データ&システムチーム、RevOpsチーム(GTMエンジニアを含む)、そしてビジネスチーム(マーケティング、セールス、カスタマーサクセス)が密接に連携する「クロスファンクショナルなアプローチ」が不可欠であると強調します。

Personioでは、この目的のために「AI-Powered GTMワーキンググループ」を立ち上げ、約15名のメンバーで構成されています。このグループには、各部門からデータドリブンな思考を持ち、テクノロジーに精通したメンバーが参加しています。過去の経験から、データチームがビジネスコンテキストを十分に理解せずにLLMベースのモデルを構築し、期待通りの効果が得られなかった事例があったため、このような多機能チームの重要性が浮き彫りになりました。

データ&システムチームは、GTM活動に必要なデータインフラとシステムを構築・管理します。RevOpsチーム内のGTMエンジニアは、AIツールとビジネスプロセスの橋渡し役となり、自動化と最適化を推進します。そして、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスといったビジネスチームは、AIがもたらす価値を最大化するためのビジネス要件を提供し、AIソリューションの導入と運用を主導します。これら3つの要素が連携することで、技術的な専門知識とビジネスの深い理解が融合し、高品質で実用的なAIソリューションが生まれるのです。

教訓3: 優先順位付けのフレームワーク:どこから始めるか?

AIの活用には無限の可能性がありますが、どこから着手すべきか、初期のアイデアが多すぎて混乱に陥ることも少なくありません。Philip Lacor氏は、この課題を解決するために、優先順位付けのためのフレームワークの必要性を説きます。Personioでは、主に2つのシンプルなフレームワークを採用しました。

  1. JTBD (Job-To-Be-Done) アプローチ:

    • JTBDは、「顧客が製品を『雇用』して達成したい目的」に焦点を当てる考え方ですが、Personioではこれを「各GTMロールが達成すべき仕事」として適用しました。
    • SDR(営業開発担当者)、セールス、カスタマーサクセス、ソリューションエンジニアなど、GTMにおける各役割の日々の業務を詳細に分析します。
    • 例えば、アカウントマネージャーの「シャドーイング」を実施したところ、彼らが顧客情報を得るために7〜8種類の異なるシステムを横断し、1日に2時間半もの時間を費やしていることが判明しました。これはまさにAIが解決すべき大きな課題です。
  2. カスタマージャーニーへのマッピング:

    • JTBDで特定された各役割の「仕事」を、顧客が企業と接する「カスタマージャーニー」(アウェアネス、コンシダレーション、購買、オンボーディング、リテンション・エクスパンション)の各フェーズにマッピングします。
    • これにより、「成長における問題点」や「ビジネスにおける最大のギャップ」が明確になります。例えば、アウェアネス段階でのSDRのリサーチ、購買段階でのWin/Loss分析、リテンション・エクスパンション段階でのクロスセル機会の特定などです。
    • このマッピングを通じて、どこにAIを導入すれば最大のビジネスインパクト(パイプライン増加、コスト削減、顧客満足度向上など)をもたらすかを特定し、優先順位を決定します。

この2つのフレームワークを組み合わせることで、初期のアイデアがスパイラル的に増大するのを防ぎ、最も影響の大きい領域に焦点を当ててAIソリューションの開発を進めることが可能になります。

教訓4: GTMにAIの文化を醸成する

AIを組織に深く根付かせるためには、単なるツールの導入やプロセスの変更だけでなく、従業員がAIを積極的に活用し、その恩恵を信じる「文化」を醸成することが不可欠です。Philip Lacor氏は、文化変革の古典的な公式「効果(Effectiveness)=品質(Quality)×受容(Acceptance)」を引用し、AIがどれほど優れたものであっても、組織に受け入れられなければその効果は限定的であることを強調します。

Personioでは、AIを日常の習慣にするために、以下の3つのアプローチを実践しています。

  1. ロールモデリング(Lead it):

    • リーダー自らがAIツールを積極的に使用し、その有効性を実証します。Philip Lacor氏自身も、ディールレビューの際にGongを活用し、AIが生成したアカウントブリーフを営業担当者に参照させることで、PowerPoint資料を不要にし、より効率的でデータに基づいた議論を促しています。リーダーが自らAIを活用する姿を示すことで、チーム全体のAIに対する信頼と利用意欲が高まります。
  2. 共有とインスピレーション(Show it, Celebrate it):

    • 社内で開発されたAIエージェントの成功事例を積極的に共有し、他のチームメンバーにインスピレーションを与えます。例えば、顧客への提案資料をパーソナライズするAIアシスタントや、RFP(提案依頼書)への回答を支援するAIアシスタントなどの事例を発表することで、全社的なAI活用への関心を高めています。これにより、仲間がどのようなAIを構築し、いかに業務を効率化しているかを知ることで、他のメンバーも新たなAI活用のアイデアを出すようになります。
  3. 報酬(Reward it):

    • AI-Powered GTMの推進に貢献したチームや個人を表彰することで、AI文化の定着を促進します。Personioでは、年次の「President's Club」に、AI分野で最も優れた貢献をしたチームや個人に与えられる特別枠を設けています。これにより、AI活用が単なる業務改善ではなく、キャリアアップにつながる重要な要素であることを明確に示し、積極的な参加を促しています。

これらの取り組みを通じて、Personioは従業員の好奇心を刺激し、AIを活用することへの安心感を与え、GTMプロセス全体にAIを浸透させる文化を構築しています。

教訓5: 優れたAIは「既存のスタック+独自のコンテキスト」から生まれる

AIをGTMに導入する際の最後の、そして最も重要な教訓は、単に市場に出回る最新のAIツールを導入するだけでは不十分であり、**「既存のGTMスタックと、企業固有のビジネスコンテキスト」**を組み合わせることで、真に価値のあるAIが生まれるというものです。

Philip Lacor氏は、AIツールの多くが万能薬ではないことを指摘し、ワークフローやデータ、その他のシステムに多くの事前作業が必要であると述べます。Personioでは、既存のGTMスタック(Gong、Snowflake、Salesforce、Qualified、Amazon BedrockなどのLLM)を「スーパーチャージ」することに焦点を当てました。

  1. 既存データの活用とクレンジング:

    • AIの品質はデータの質に大きく左右されます。PersonioはSalesforceに格納された顧客データ(顧客との会話記録、メール、営業メモなど)をSnowflakeに集約しました。しかし、初期のSalesforceデータには3分の1もの重複が含まれており、まず自動重複排除機能の導入と、数ヶ月をかけたプロスペクトデータベースのクレンジングから始めました。外部データソースも統合し、データをクリーンアップし、接続することで、GTM AIの基盤を強化しました。
  2. GTM固有の知識によるLLMのトレーニング:

    • 汎用的なLLMだけでは、企業固有のビジネスコンテキストやGTM戦略に合わせた最適な出力を生成することはできません。Personioは、以下のGTM固有の知識をLLMに注入し、厳密なトレーニングを行いました。
      • ICP (Ideal Customer Profile) 定義: 理想的な顧客像に関する詳細な情報。
      • ピッチデッキ: 営業が使用する製品紹介資料。
      • オンボーディングプロセス: 新規顧客が製品を使いこなすまでの手順。
      • 製品トレーニング資料: 製品機能や利用方法に関する詳細なドキュメント。
    • この企業固有の知識がLLMに組み込まれることで、AIはPersonioの製品、顧客、販売戦略に特化した、より関連性の高い正確な情報を提供できるようになります。
  3. データの鮮度維持:

    • AIモデルは、学習したデータが古くなると性能が低下します。Philip Lacor氏は、データの鮮度維持が常に課題であり、これをどのように解決していくかが今後の重要なテーマであると述べています。

要するに、AIの真の力は、最新のAI技術と、企業が長年培ってきた独自のデータ、そしてそれを支える既存のシステムとプロセスを組み合わせることで発揮されるのです。これは、企業が外部のAIソリューションに飛びつく前に、自社のデータ基盤とビジネスコンテキストを深く理解し、それらをAIで強化するための準備が必要であることを示唆しています。


Part 3: 実践!Personioの4つのAI駆動型GTMユースケース

Philip Lacor氏は、前述の5つの教訓を踏まえ、Personioで実際に導入されている4つのAI駆動型GTMユースケースを具体的に紹介しました。

ユースケース1: AI駆動型顧客インテリジェンス「Win/Loss分析」

  • 課題: 従来の営業ツールでは、ディールの勝敗理由について表面的な情報しか得られず、深い洞察が不足していました。営業担当者がSalesforceに手動で入力する「Lost Cause」「Lost Driver」「Lost Details」のような項目は、しばしば「Other」で埋められ、具体的な改善策に結びつきませんでした。また、バトルカード(競合対策資料)もすぐに古くなるという問題がありました。
  • 解決策: Personioは、Gong(顧客との会話データ)、Salesforce(CRMデータ)、メールデータといった顧客とのあらゆる接点から得られる情報をSnowflakeに集約しました。そして、この膨大なデータとPersonio固有のGTM知識(ICP定義、ピッチデッキなど)で「GPT for GTM」をトレーニングしました。このAIは、全ての成約・失注ディールを分析し、失注理由、成約理由、競合に関する深いインサイトを自動で生成します。
  • ビジネスへの影響と将来性: このGPT for GTMは、営業担当者がディールの結果をより深く理解するのに役立ち、また、バトルカードを動的に更新することで常に最新の競合情報を保つことができます。Philip Lacor氏は、このアプローチが将来的には「GTM AI Brain」へと進化し、担当者のコーチング、顧客体験の最適化、マーケティングキャンペーンの改善、クロスセル機会の特定、製品ロードマップへのフィードバック、そして競合分析など、GTM戦略のあらゆる側面をAIがサポートする未来を描いています。

ユースケース2: 拡張SDRリサーチアシスタント

  • 課題: Personioの拡張SDR(Sales Development Representative)チームは、既存顧客へのアップセルやクロスセル、新規製品の提案を担当しています。約15,000社の顧客基盤を持つ彼らは、顧客の契約状況、アカウントヘルス、過去のエンゲージメント履歴など、関連する顧客情報を収集するために、1日あたり最大2時間を費やしていました。この手作業によるリサーチは非効率的で、貴重な営業時間を奪っていました。
  • 解決策: Personioは、Salesforceと連携するAIアシスタントを開発しました。SDRはSalesforceの顧客ページからアカウント名を入力するだけで、AIがSnowflakeから関連する10〜20のシステムにアクセスし、必要な情報を瞬時に収集します。AIは収集した情報を、クロスセル提案に最適なフォーマットで整理し、さらに「このアカウントで取るべき次の一手」に関する具体的なレコメンデーションまで提供します。例えば、「このアカウントはグリーン(良好)なので、この製品を提案すべき」といった具体的なアドバイスです。
  • ビジネスへの影響: このAIアシスタントの導入により、SDRのリサーチ時間は1日2時間からわずか15分へと劇的に短縮されました。その結果、SDRが生成するパイプラインは約2倍に増加しました。これは、AIがルーティンワークを自動化し、従業員がより価値の高い活動に集中できるようになった典型的な成功事例と言えます。

ユースケース3: インテントシグナル

  • 課題: アウトバウンド営業において、適切なアカウント、適切な担当者、適切なメッセージで、適切なタイミングでアプローチすることは非常に困難です。特に「いつが最適なタイミングか」を特定することは、長年の課題でした。
  • 解決策: Personioは、自社のデータサイエンスチームが開発した動的なインテントスコアを活用しています。このシステムは、以下のような複数のシグナルに基づいて、各プロスペクトアカウントが購買サイクルに入っている可能性をリアルタイムで評価します。
    • ウェブサイト訪問履歴: 特定の製品ページを頻繁に訪れているか。
    • 過去の顧客: 過去にPersonioの製品を使用していた担当者が競合他社に移ったか。
    • G2/Trustpilotのレビュー: 競合製品のレビューをチェックしているか。
  • これらのシグナルを毎日更新し、各アカウントにインテントスコアを付与します。営業担当者はSalesforce上で、アカウントスコア(ICPとの合致度)、担当者情報、そしてこのインテントスコアを一元的に確認できます。さらに、インテントの強さに応じて「炎のアイコン」が表示され、視覚的に優先順位を把握できます。
  • ビジネスへの影響: 営業チームは、AIが示す「ホットな」アカウントにタイムリーにアプローチできるようになり、アウトバウンド活動の効率と効果が大幅に向上しました。これにより、限られたリソースを最も可能性の高いリードに集中させることが可能になります。

ユースケース4: AIチャット / AI SDR「Nia」

  • 課題: 顧客は24時間365日、製品に関する疑問やデモ予約の要望を持っていますが、従来の営業チームやサポートチームでは、常にリアルタイムで対応することは困難でした。
  • 解決策: Personioは、ウェブサイト上で動作するAIチャットコンシェルジュ「Nia」を導入しました。Niaは、以下のような機能を備えています。
    • 製品情報提供: 顧客からの製品に関する質問にリアルタイムで回答します(例: 「最低価格はいくらですか?」)。
    • デモ予約: 顧客がデモを希望した場合、Niaが即座に営業担当者のカレンダーと連携し、ミーティングを予約します。顧客は金曜日の夜11時といった時間でもデモを予約できるため、リードを逃すことがありません。
  • 品質管理と継続的な改善: AIチャットボットは完璧ではありません。Philip Lacor氏は、Niaが当初、誤った法的アドバイスを提供したり、競合他社を不適切に貶したりする問題に直面したことを正直に語っています。この課題に対処するため、PersonioはSDRリードであるAmelie氏が責任者となり、以下のサイクルでNiaを継続的に改善しています。
    • 毎日の出力レビュー: Niaのチャット履歴を毎日確認。
    • 構造化されたフィードバックの適用: Niaの回答に対する具体的な改善フィードバックをシステムに反映。
    • リアルタイムでのテスト: 変更が即座にNiaのパフォーマンスに反映されるかを確認。
    • ルールとガードレールの更新: Niaの振る舞いを制御するルールを継続的に微調整。
  • ビジネスへの影響: Niaは導入から約6週間で、1,484件の会話を処理し、138件のミーティングを予約しました。これは、AIが顧客体験を向上させ、営業チームの負荷を軽減し、リード獲得を加速する強力な手段であることを示しています。AIのトレーニングには多大な労力が必要ですが、その投資は、リアルタイムかつ高品質な顧客エンゲージメントという形で報われます。

まとめ: AIが導くGTMの未来と、今取るべき行動

Philip Lacor氏は、これまでの教訓とユースケースを踏まえ、AIがGTMにもたらす未来について、以下の最終的な考察を提示しました。

  1. ROIは即座ではないが、非線形かつ複利効果がある:

    • AIへの投資対効果(ROI)は一夜にして現れるものではありません。しかし、その効果は、顧客エンゲージメント速度の向上、顧客維持率の改善、パイプラインの質の向上、勝率の増加、そして従業員の業務負担軽減といった多岐にわたる領域で現れます。
    • さらに、AIの学習と改善は複利効果をもたらし、導入後時間が経つにつれて、その恩恵は指数関数的に増大していきます。
  2. AIには日々の監視と継続的な微調整が不可欠:

    • AIモデルは完璧ではなく、常にフィードバックと調整が必要です。特にAIチャットボットのように顧客と直接対話するシステムは、日々の監視と「トレーニング」なしには、その品質と信頼性を維持することはできません。これは、AIが一度導入したら終わりではなく、継続的な投資と運用が必要なことを意味します。
  3. SaaS企業にとってのダーウィン的瞬間:

    • AIの台頭は、SaaS企業にとって「ダーウィン的瞬間」であり、変化に適応できる企業のみが生き残ります。Philip Lacor氏は、以下の3つのカテゴリを提示しました。
      • AIネイティブ企業: AIを創業当初から中核に据えている企業。
      • AI-First SaaS企業: 既存のSaaS企業がAIを戦略の中心に据え、製品、プロセス、文化に深く統合している企業(Personioが目指す姿)。
      • SaaSネイティブ企業: 従来のSaaSモデルに固執し、AIへの適応が遅れている企業。
    • チャールズ・ダーウィンの言葉「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」を引用し、変化への適応が最も重要であることを強調しています。

GTMリーダーへの提言:

AI時代において、GTMの役割は大きく変化します。データドリブンな意思決定、テクノロジーの活用、そして顧客体験への深い理解がこれまで以上に求められます。一部のGTMチームは、AIによる自動化で人員が再配分されたり、役割が変化したりするかもしれません。

Philip Lacor氏は、GTMの専門家に対し、「AIに『リーンイン』(積極的に関与する)すること」を強く推奨します。AIに関するポッドキャストを聞き、記事を読み、新しいツールを試すことで、この急速に進化する分野の最前線に立つことができます。AIは、あなたの仕事のあり方を変えるだけでなく、あなたのキャリアパスそのものを形作るでしょう。

SaaS業界におけるAIの競争は熾烈を極めますが、Personioの事例が示すように、戦略的なアプローチ、クロスファンクショナルな連携、文化の醸成、そして継続的な改善を通じて、企業はAIを真の成長エンジンへと変えることができるのです。