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AIエージェント時代のクラウドを築く:AWS CEOマット・ガーマンが語る未来戦略

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テクノロジーの進化は止まることを知りません。特に近年、生成AIの急速な発展は、私たちの働き方、ビジネスのあり方、そして社会そのものに変革をもたらそうとしています。その最前線で、AIエージェントが自律的にタスクを遂行する「エージェントエコノミー」の到来が現実味を帯びてきています。このような変革の時代において、その基盤を支えるクラウドインフラストラクチャはどのような進化を遂げ、どのような未来を描いているのでしょうか。

今回は、AWSのCEOであるマット・ガーマン氏の貴重なインタビューから、AWSがAIエージェント時代に向けてどのようにクラウドを構築し、未来のテクノロジーを形作っているのかを深掘りしていきます。EC2の初代ゼネラルマネージャーとしてAWSの黎明期からその成長を牽引してきたガーマン氏の洞察は、AI時代のクラウドの重要性、具体的な機能、ビジネスへの影響、そして将来性を理解するための羅針盤となるでしょう。

AWSの軌跡:EC2からAIエージェント時代のクラウドリーダーへ

マット・ガーマン氏の言葉は、AWSの並外れた成長物語から始まります。彼は2006年にEC2の初代GMを務め、当時まだその可能性が手探りだったクラウドコンピューティングの概念を現実のものとしました。それから約18年が経ち、AWSの年間収益は1,690億ドルに達し、37%という驚異的な成長率を維持しています。この数字は、AWSが単なる技術サービスプロバイダーではなく、世界のビジネスインフラの中核を担う存在へと成長したことを物語っています。

ガーマン氏は、この成功の背景には「まだ初期段階にある」という認識があると述べます。現在でも、膨大な量のワークロードがオンプレミスで稼働しており、日々のコンピューティング需要は増大し続けています。AIからの「追い風」とクラウドへの「移行」という二つの大きなトレンドが、AWSのさらなる成長を後押ししているのです。

スタートアップとの共創:AWSの生命線

AWSの歴史を語る上で不可欠なのが、スタートアップとの関係です。ガーマン氏は、2005年のインターンシップ時代にAWSにとって最も興味深い顧客がスタートアップであると分析した経験を振り返り、創業当初からスタートアップが「事業の中核の生命線」であったことを強調します。

スタートアップがAWSに惹かれる理由は明確です。AWSは、インフラストラクチャを提供するだけでなく、企業を立ち上げ、運営し、将来的に拡張するためのアーキテクチャ設計に関するアドバイスも提供します。これは単なるビジネス上の戦略に留まらず、ガーマン氏は「今日のスタートアップ企業は明日の企業である」という長期的な視点を持っていることを示唆します。実際、AWSの収益の30~40%は、かつてスタートアップだった企業からもたらされていると推定されており、この共生関係の強固さがうかがえます。

スタートアップはテクノロジーの最先端を行くイノベーターであり、AWSのサービスをさらに進化させるための重要なフィードバックを提供します。「彼らは、何をすればもっと速くできるか、何をすれば目標を達成できるかを言ってくれる」という言葉は、顧客のニーズに応えるAWSの姿勢を象徴しています。銀行やヘルスケア企業、政府機関よりも早く限界を押し広げるスタートアップの要求が、5年後の大企業が求める技術や機能へとつながる波の先駆けとなるのです。

スタートアップのニーズの変化:GPUとスケール

しかし、スタートアップのニーズも時代とともに変化しています。以前はゆっくりと反復を重ねる形で成長していたスタートアップが、今では初日から数億ドルの資金調達と10億ドルの評価額を持つことも珍しくありません。この「アイデアの規模と野心」の増大は、より多くの資本と、より高価なリソース、特にGPUを必要とします。

一方で、変わらないニーズもあります。スタートアップは、規模が拡大した際のアーキテクチャ、セキュリティ、パフォーマンス、機能性について、初日から真剣に考えています。単に新しいクラウドに移行するのではなく、AWSのような堅牢なサービス群と広範な機能、そして成長に伴って必要となる「機能の深み」を求めているのです。AWSが提供するシームレスな移行パスと、スケールアップの容易さは、スタートアップにとって大きな魅力であり続けています。

AIエージェントのためのクラウドインフラ:進化する要件とAWSの回答

AIエージェントが私たちの日常業務に深く浸透するにつれて、クラウドインフラストラクチャは新たな要件への適応を迫られています。ガーマン氏は、「エージェントだけでなく人間ともうまく連携できるクラウド」の重要性を強調し、AWSがどのようにこの変革に対応しているかを具体的に説明します。

エージェント特有の要件への対応

AIエージェントは、非常に広範囲なスケールで、高速なパフォーマンスと低レイテンシーを要求します。特に興味深いのは、人間が気にしないような「テールレイテンシー」にエージェントが非常に敏感であるという指摘です。エージェントは、数ミリ秒の遅延によってワークフローがブロックされる可能性があるため、基盤となるエンジンが高速でスケーラブルであることが不可欠です。ガーマン氏は、AWSのエージェントワークフローが他のどこよりも優れたパフォーマンスを発揮する傾向があると自信を示します。

AWSは、エージェントが簡単に作業できる明確に定義されたAPIインターフェースを提供することにも注力しています。そして、AgentCoreやBedrockのようなエージェント構築用に設計された新しいサービスを導入しています。さらに、AWS Contextというプレビュー中のサービスは、エージェントが様々なデータレイク(Aurora、S3など)から必要なデータを容易に見つけられるように、コンテキストレイヤーを構築することを可能にします。これにより、データの保存場所を意識することなく、エージェントが横断的にデータにアクセスできるようになります。

使いやすさの向上と基盤の再考

エージェントが「すべてのコードを書き、データベースやメールサーバーを選択してくれる」という未来が語られる中で、AWSは既存の「レガシーサービス」をどのように再設計しているのでしょうか。ガーマン氏は、コアとなる基盤コンポーネントは非常に良い状態にあるとしつつも、「使いやすさ」のレイヤーについて多くの検討を行っていると述べます。

例えば、新しいAWSアカウントの立ち上げ体験は劇的に改善されました。クレジットカードなしでGmailアカウントでサインアップでき、VPCやIAMロールなどの複雑な設定を意識することなく、30秒以内にフル機能のAWSアカウントを起動できるようになっています。これは、エージェントが短期間で多くのリソースを立ち上げ、破棄するようなユースケースにおいて、摩擦を最小限に抑える上で極めて重要です。また、初期のシンプルなアカウントから、将来的に必要となるであろう高度な機能(組織の構築、微調整など)へとシームレスに移行できる仕組みも提供されています。

一方で、エージェントが使用するインフラストラクチャの「一時的な性質」への対応は、AWSにとって興味深い課題です。エージェントはデータベースを素早く作成し、短期間で破棄したいと考える場合があります。従来のプロダクションデータベースが必要とするファイブナインの耐久性は、このユースケースでは「過剰設計」となる可能性があります。AWSは、素早く作成・破棄でき、リソースの無駄が少ない一方で、必要であれば耐久性を持ち、大規模なプロダクションデータベースに成長できるようなインフラストラクチャの実現に取り組んでいます。

新たなビルディングブロック:サンドボックスと権限管理

エージェント時代に必要となる「まったく新しいビルディングブロック」についても、AWSは積極的に検討・構築を進めています。その代表的なものが「コンピューティングサンドボックス」、「ゲートウェイ」、そして「エージェントのアクセス許可とユーザーやサービスロールのアクセス許可」です。

エージェントには、単に広範な権限を与えるのではなく、タスクを実行するための非常に時間制限のある短期的な、きめ細かいアクセス許可が必要です。また、エージェントの活動を隔離し、予期せぬ挙動からシステムを保護するためのサンドボックス環境も不可欠です。ここで、AWSが約10年前に開発したFirecracker(マイクロVM技術)が重要な役割を果たします。Firecrackerは、非常に迅速に起動でき、優れたセキュリティ境界を持ちながら、従来のVMのような仮想化オーバーヘッドがほとんどないため、エージェント専用のサンドボックス環境として理想的です。

これらの取り組みは、AWSが既存の強みを活かしつつ、AIエージェントが求める新たな要件にきめ細かく対応することで、未来のクラウドインフラをリードしていくという強い意志を示しています。

GPU供給の課題とAWSの戦略的投資

AIエージェント時代の到来は、GPUに対する爆発的な需要を生み出しています。最先端の研究所が利用可能なすべてのGPUを消費する一方で、AWSは明日の企業となる新しいスタートアップを育成したいという二律背反の課題に直面しています。

供給制約と大規模投資

GPU供給が直面する制約は多岐にわたります。膨大な設備投資費用(2026年までに2,200億ドルと予測)、データセンターの建設速度、電力供給、メモリやチップの入手可能性など、サプライチェーンのあらゆる段階がボトルネックとなり得ます。特に電力に関しては、AWSが自社で発電所や再生可能エネルギープロジェクトに投資し、長期的な電力計画を立てなければならないほど、その重要性が増しています。

このような状況の中、AWSは需要に対応するため、途方もない規模の投資を行っています。最近では、今後数年間で「200万個のNvidia GPUを購入する」と発表しました。この膨大なキャパシティ確保の取り組みは、AI時代のインフラを支えるAWSの覚悟を物語っています。

バランスの取れた割り当て戦略

GPUの需要が供給をはるかに上回る中で、AWSはリソースの割り当て戦略に「意図的に」取り組んでいます。フロンティアラボ(Anthropic, OpenAI, Metaなど)のような大規模顧客とのパートナーシップを重視しつつも、単にすべてのキャパシティを大手企業に売却する道は選択していません。

ガーマン氏は、「エコシステム全体を成長させ続けたい」という強い願望を表明しています。少数のGPUを必要とする大企業顧客(Salesforce, JPMCなど)と、明日の大企業となるスタートアップのために容量を確保することに、非常に意識的です。現在、リクエストの約60%に対して何らかの形で「はい」と答えることができており、地域や構成に多少の調整が必要な場合もあるものの、最大限のリソース割り当てに努めています。

この戦略の背景には、AWSの投資哲学があります。ガーマン氏は、「バブル」への懸念がよく寄せられる一方で、AWSの投資が「非常に良い投資」であると確信していると述べます。その理由は、AWSが多様なアプローチを取っており、特定の顧客へのキャパシティ集中度が低いこと(一桁台のパーセンテージ、NeoCloudなどのプロバイダーとは対照的)、そしてAWSのサービス群が、企業がプラスのROIを得ている本番ワークロードを中心に利用されていることにあります。これらのワークロードはなくなることがなく、企業がAIへの支出を止めるような「バブル」は存在しないという見方です。

長期的なサプライチェーン管理

GPU供給の課題は、単にチップの確保に留まりません。データセンターの建設、電力、メモリ、ネットワークコンポーネント、さらにはコネクタのような小さな部品に至るまで、サプライチェーン全体のあらゆる要素が制約となり得ます。AWSは、この多層的なサプライチェーンを管理するために、数万から数十万のコンポーネントを追跡し、サプライヤーとの連携、自社での直接管理、そして地理的な多様性も考慮に入れた計画を立てています。タイの洪水によるディスクドライブ危機のような過去の経験から学び、10年以上前から将来の制約を予見し、包括的なサプライチェーン管理体制を構築してきた成果が今、発揮されているのです。

また、データセンター建設についても、AWSは地域社会への貢献を重視しています。再生可能エネルギーの導入、水資源の効率的な使用(主に空気冷却)、高収入雇用の創出、そして税収による地域経済への貢献など、データセンターが地域にとって良い存在であることをもっと明確に伝えていく必要があるとガーマン氏は強調します。

AWSのチップ戦略:パフォーマンスとコスト効率の追求

AWSの革新の歴史を語る上で欠かせないのが、自社開発チップへの取り組みです。パフォーマンス、コスト効率、そしてセキュリティを最大化するため、AWSはハードウェアスタックの深い部分にまで手を広げてきました。

Nitroの誕生と仮想化の革新

この物語は、約13~14年前の「Nitro」の誕生に遡ります。AWSは、仮想化がリソースに与える大きな負荷を認識し、お客様がベアメタルに近いパフォーマンスを求めていることを理解していました。そこで、まずネットワーク仮想化をオフロードカードに引き出すことで、ネットワークパフォーマンスをベアメタルに近づけました。

さらに、ストレージ仮想化もオフロードできないかと検討する中で、ARMコアを搭載したオフロードカードを開発していたAnnapurnaチームと出会います。AWSはこのチームを買収し、ネットワークとストレージの仮想化をすべて取り除き、仮想化オーバーヘッドが一切ない「ベアメタルサーバー」をAPIを介して提供できる、より大きなカードの開発を依頼しました。これがNitroシステムです。

Nitroは、パフォーマンスの大幅な向上、リソース利用効率の改善、そしてセキュリティ分離の強化という大きなメリットをもたらしました。VMが実行されている物理サーバーにAWSのオペレーターが一切アクセスできないことを正当に保証できるようになったことは、セキュリティ面で画期的な進歩でした。Nitroは過去10年間、AWSの大きな差別化要因であり続けています。

Gravitonの成功とAI専用チップTrainium/Inferentia

Nitroの開発を通じて、ARMコアを搭載したオフロードカードが大きな進歩を遂げたことを受け、AWSはこれをサーバーそのものに転用するというアイデアに至ります。こうして誕生したのが、自社開発のARMベースCPU「Graviton」です。

初代Gravitonは当初、高性能ではなかったものの、お客様は「ARMサーバーが欲しい。これは非常に興味深い」と興奮しました。AWSは、ARMコアの速度向上と電力使用率の交点を見極め、エコシステムを推進する役割を担いました。その結果、Gravitonは今や大ヒットしています。毎年、他のどのタイプのチップよりも多くのGravitonチップが出荷されており、20%安く、20%優れたパフォーマンスを実現しています。トップ100社の顧客の90%以上がGravitonを何らかの形で利用しており、コスト削減とパフォーマンス向上の両面で大きな成果を上げています。システム全体をGravitonに移行し、サーバー数を半分に削減しながらパフォーマンスを向上させた事例もあるほどです。

約5~6年前、AWSはAIコンピューティングの台頭を予見し、AIのトレーニングに特化した最初のチップの開発に着手しました。これが「Trainium」です。現在、第3世代のTrainiumチップが市場に投入されており、素晴らしい結果を出しています。キャパシティは完売状態で、来年末頃まで予約で埋まっているほどです。AWSは、スタートアップがTrainiumのキャパシティを利用できるよう、リソースを確保する方法も模索しています。

当初、推論用にはInferentia、トレーニング用にはTrainiumというチップがありましたが、モデルが巨大化するにつれて、Trainiumが現在市場で最高の推論チップであることが判明しました。絶対的なパフォーマンスとコストパフォーマンスの両面で優れており、Bedrockの推論の大部分を支えています。Trainiumはトレーニングチップとしても優れており、多くの顧客がトレーニングモデルだけでなく、その使用方法にも関心を持っています。そして、Trainium3、特にTrainium4のリリースに向けて、大規模なトレーニングクラスタの未来に大きな期待が寄せられています。

これらの自社開発チップ戦略は、AWSが顧客に最高のパフォーマンスとコスト効率を提供するため、ハードウェアとソフトウェアの両面でイノベーションを追求し続けるという強いコミットメントを示しています。

企業におけるAIエージェント導入の現状と未来

AIエージェントの導入は、企業の業務プロセスに大きな変革をもたらす可能性を秘めていますが、その道のりは決して平坦ではありません。ガーマン氏は、企業がAIエージェントから多くの価値を得ているとしながらも、現在のエージェントは「比較的シンプルで分かりやすく、まだ自律的ではない、つまり人間が関与している」段階にあると指摘します。

ワークフローの「再考」の重要性

企業がAIエージェントの真価を引き出す上で最も重要な課題の一つが、「ワークフローの再考」です。多くの企業は、既存のワークフローを単にAIエージェントに置き換えようとしますが、これでは真の価値は生まれません。ガーマン氏は、「単に複製するのではなく、グリーンフィールドの(白紙の状態から考える)アプローチで、問題を全く異なる方法で解決する方法を考える」ことの重要性を強調します。

人間が問題を解決する方法と、AIエージェントが問題を解決する方法は大きく異なります。エージェントは、非常に多様な方法を試し、目的を達成することができます。企業は、エージェントがその能力を最大限に発揮できるよう、問題解決のプロセスを根本から見直す必要があります。このアプローチは、スタートアップ企業が新しい市場を創造する際にも共通する思考法であり、既存企業も同様の変革を求められています。

自律型エージェントの信頼性と安全性

もう一つの大きな課題は、自律型エージェントの「信頼性」と「安全性」です。企業は、エージェントが意思決定を行い、本番システムに影響を与えることを信頼できると感じる必要があります。適切なガードレール、データに対する適切な権限、そして致命的なミスを犯さないという確信がなければ、企業は自律型エージェントの導入に躊躇するでしょう。

AWSは、この「不安」を解消するために、顧客と協力して新しいテクノロジーや機能を設計・開発しています。エージェントが適切な権限を持ち、適切なサンドボックスを使用し、適切なガードレールが設定され、人間が介入する余地が適切に確保されるような機能の構築に多大な投資を行っています。これは、AIエージェントが企業環境で安全かつ責任を持って機能するための基盤を築く上で不可欠な要素です。

評価と運用の課題、そしてAWSの支援

AIエージェントの導入と運用には、評価、テスト、継続的な改善のループ、そしてデータラベリングといった新たな課題が伴います。企業は、エージェントが本番環境で実際にどのように動作するかを近似できる評価システムを構築し、ドリフトが発生しないようにバックテストを行う方法を学ぶ必要があります。

これらの課題は複雑であり、現在のところ、多くの企業は解決策を見出せていません。そこでAWSは、FTE(Full-Time Equivalent)チームを活用して、顧客を支援する体制を強化しています。このFTEチームは、単にコンサルティングサービスを提供するだけでなく、顧客が「責任を持って取り組む準備ができている」状態になるよう、評価方法やデータ取得方法を45日以内にトレーニングする「教える」アプローチを取っています。これは、顧客が外部の労働力に永続的に依存するのではなく、自律的にAIエージェントを運用できるようになることを目指しています。

オープンモデルとプライベートデータ戦略

AIモデルの選択肢として、大規模な最先端モデル(クローズドフロンティアモデル)と、オープンソースモデルを自社データで微調整するアプローチ(オープンウェイトモデル)があります。ガーマン氏は、「顧客や企業にとってデータは最も貴重な資産である」という認識を強く持っており、だからこそAWSはBedrockを当初から「データがVPCから決して出ない」ように設計したと述べています。

Bedrock内での実行では、データはモデルプロバイダーに戻されず、プロバイダーがプロンプトを見ることもありません。データは信頼できる環境内に留まります。この強固なデータ保護が、OpenAIワークロードを含む多くの企業がBedrockに移行している理由であり、Bedrockのビジネスが爆発的に成長している要因です。

AWSは、オープンモデルとクローズドフロンティアモデルの両方を提供し、AgentCoreのようなビルディングブロックを通じて、Bedrock内外で必要なモデルでエージェントを簡単に構築できる環境を提供しています。また、オープンウェイトモデルのサポートも本格的に強化しており、顧客が独自のデータと専門知識を持って、より低価格で高性能なモデルを構築できるよう、SageMakerを介したトレーニングと推論ホスティングの機能を継続的に改善していく考えです。SageMakerは、この新しいAI時代において、カスタムモデル構築プラットフォームとして新たな活路を見出しています。

AIセキュリティ:脅威と機会

AIエージェントの普及は、AI拡張リスクやセキュリティの脆弱性に関する新たな懸念も生み出しています。企業CEOは、エージェントを安全に展開し、その制御をどのように確保するかという問いに直面しています。AWSは、エージェントが適切な権限を持ち、サンドボックスやガードレールを通じて意図しない行動を防ぐ機能を構築することで、この問題に対応しています。

さらに、AWSはAI自体をセキュリティ対策に活用することにも注力しています。最近発表された「Continuum」サービスは、強力なAIモデルを使用して顧客の環境全体をスキャンし、これまで見つけられなかった脆弱性を発見するだけでなく、顧客の環境コンテキストに基づいて脆弱性の優先順位付けを支援します。ガーマン氏は、顧客がいずれ「人間の速度ではなく、機械の速度でセキュリティを必要とするようになる」と予測し、AIを活用したセキュリティの可能性に大きな期待を寄せています。

AWS社内におけるAIエージェントの革新

AWSは、顧客にAIエージェントの力を提供するだけでなく、自社組織内でAIエージェントを積極的に活用し、業務プロセスを革新しています。

Amazon Quick:全従業員へのAI展開

AWSは、社内版AIエージェント「Amazon Quick」を全従業員に展開しています。これにより、人事、財務、ソフトウェア開発など、あらゆる部署で生産性が飛躍的に向上しています。例えば、人事チームは、従来数週間かかっていた作業をエージェントが数時間で完了できるようになり、チーム計画やリソース管理により集中できるようになりました。財務チームは、税務規則の取得やコンプライアンス確保のためにエージェントを活用しています。

「ソフトウェア開発者によってブロックされていたものが、実際にビジネス部門の人々がブロックを解除し、より迅速にイノベーションを起こせるようになったのは、本当に素晴らしいことだ」というガーマン氏の言葉は、AIエージェントが組織全体のイノベーションを加速させる可能性を示しています。Quickは、小規模なスタートアップから世界最大規模の企業まで、あらゆる顧客が企業データにアクセスしてエージェントや機能を簡単に適用し、業務を加速させるというメリットを享受できることを社内で実証しています。

「エージェントファースト」の開発アプローチと組織の変化

AWSが社内で最も大きな成果を上げている分野は、「ソフトウェア開発」です。AIエージェントの活用により、ソフトウェア開発のスピードと製品開発のスピードが劇的に向上しました。AWSは、常に機能を迅速に展開することで知られていますが、ここ1年ほどでそのスピードはさらに加速しています。

特に注目すべきは、「フロンティアチーム」と呼ばれる開発アプローチです。これは単なるコード補完ではなく、「エージェントファースト」のアプローチであり、エージェントがすべてのコードを書き、人間はエージェントのチームを管理し、それを推進するだけです。この新しい開発パラダイムは、顧客向けのイノベーションのペースを飛躍的に速めています。

この変化は、組織構造にも影響を与えています。以前は特定の能力を長期間所有する10人規模のチームがあったかもしれませんが、今では3~4人の「ポッド」と呼ばれる少人数チームが非常に迅速に何かを構築し、別のプロジェクトや問題へと移動できるようになっています。AWSのような大規模な組織が、俊敏性と柔軟性を保ちながら、構築したものを運用し、維持する方法を考えることは、現在進行形の実験であり、従業員にとっても「より速く構築してより多くのことができる」という力になる楽しい変化だとガーマン氏は語ります。

結論: AIエージェントが拓くクラウドの未来

マット・ガーマン氏のインタビューは、AIエージェントが拓くクラウドの未来について、多角的かつ深い洞察を提供してくれました。AWSは、創業当初からスタートアップとの共創を重視し、顧客のニーズに応える形で進化を遂げてきました。AIエージェント時代の到来は、クラウドインフラストラクチャに新たな要求を突きつけていますが、AWSはこれに対し、GPUへの大規模投資、自社開発チップ(Nitro, Graviton, Trainium)戦略、エージェント固有のビルディングブロック(サンドボックス、権限管理)、そしてデータ保護を最優先するBedrockのようなサービスを通じて、包括的に対応しています。

また、企業がAIエージェントの真価を引き出すためには、単なる自動化ではなく、ワークフローの根本的な「再考」が必要であるというガーマン氏の指摘は、ビジネスリーダーにとって重要な示唆を与えます。そして、自律型エージェントの信頼性と安全性、評価・運用の課題に対し、AWSはFTEチームによる支援やAIを活用したセキュリティサービス(Continuum)で応えています。

AWS社内でのAIエージェント活用事例、特にAmazon Quickの全従業員への展開と「エージェントファースト」の開発アプローチは、AIが生産性向上とイノベーション加速にどれほど貢献できるかを示す強力な証拠です。組織構造までもがAIによって変化していく中で、AWSは顧客と共に、この新たなフロンティアを切り拓こうとしています。

AIエージェントが当たり前になる未来において、AWSは、その基盤となるクラウドインフラを提供し続けることで、イノベーションを民主化し、あらゆる規模の企業が未曾有の成長と変革を実現できるよう支援していくでしょう。マット・ガーマン氏の言葉は、AWSがこの壮大な未来を現実のものとするための、揺るぎないコミットメントと戦略的なビジョンを持っていることを明確に示しています。