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非コンセンサス投資は過大評価されているのか?VC業界の深淵なる議論を探る

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ベンチャーキャピタル(VC)の世界では、常に新たなイノベーションと、それを支える投資戦略が議論の中心となります。その中でも、近年特に注目を集めているのが「非コンセンサス投資」の是非を巡る議論です。多数派の意見に逆らい、まだ誰も気づいていない潜在的な価値を見出すこと。これこそがベンチャー投資家の醍醐味であり、成功の秘訣だと信じる者は少なくありません。しかし、本当にそうでしょうか?それとも、それは危険な幻想に過ぎないのでしょうか?

先日、Twitter上で「非コンセンサス投資は危険だ」という発言が火種となり、VC界隈で活発な議論が巻き起こりました。本記事では、この議論を深く掘り下げ、非コンセンサス投資が持つ多面的な側面、市場の効率性、ファウンダー(創業者)への影響、そしてVC業界の将来性について、複数の専門家の視点から詳細に分析していきます。

第1章: 論争の火種 – マーティンの警鐘「非コンセンサス投資の危険性」

議論の口火を切ったのは、長年の経験を持つ投資家マーティンです。彼の問題提起は、「非コンセンサス投資を行うことは危険なアイデアである」というものでした。このツイートは、「VC界隈にちょっとした実存的危機を引き起こした」と表現されるほど、大きな波紋を呼びました。

マーティンは、自身のツイートの真意について、次のように説明しています。「不注意に書かれたものではあったが、私が言いたかったのは、コンセンサスに気づかないことは悪いアイデアだということだ。」彼は、VCとして10年間で約200件の投資に関わってきた経験から、VCが企業をどう見ているかについて視野が狭いことは非常に危険だと指摘します。その理由は、スタートアップが次の資金調達(フォローオンキャピタル)に大きく依存しているためです。

この感覚は、彼がかつてアカデミックの世界で論文を書いていた頃の経験に似ていると言います。どんなに素晴らしい研究であっても、プログラム委員会がどう評価するかを考慮しなければ、論文は採択されません。同様に、VCが次の資金調達を成功させるためには、市場のコンセンサス、つまり他の投資家がどう評価するかを無視できないという現実があります。

マーティンの核となる主張は、「早期市場は実際にはかなり効率的である」というものです。人々が思っているよりもずっと効率的であるため、「もしあなたが自分の見解において一人であるなら、何かを見落としているだけかもしれない」と彼は警告します。これは、多くのVCが抱く「人とは違う視点を見出す」というアイデンティティに真っ向から挑戦するものであり、まさに「実存的危機」を引き起こすに足るものでした。彼は、コンセンサス投資が良いアイデアだとは決して言わないが、コンセンサスに無関心であることは危険だと明確に区別しています。

第2章: 非コンセンサスからの逆転劇 – レオの異論と成功体験

このマーティンの意見に対し、友人でベンチャー投資家のレオは、一部同意しつつも、自身の経験から異なる視点を提示します。レオは、「最終的にはコンセンサスに達する必要がある」という点ではマーティンに同意します。資本市場に依存する以上、誰も資金提供を望まない会社を存続させることは非常に困難だからです。

しかし、レオは自身の最高の投資の多くが「非コンセンサス」側から生まれたと語ります。彼は、自分が他の誰も持っていないような「とんでもなく素晴らしい洞察力」を持っているからではなく、これらの企業は初期段階で「証明点(Proof Points)」がないために苦戦することが多かった、と謙虚に説明します。そして、一度成功の兆しが見えれば、バリュエーションは急騰し、その段階でも良いリターンは得られるものの、初期段階での投資に比べればはるかに低くなると指摘します。

ここでレオは、伝説的な投資家ピーター・ティールの言葉を引用します。「アップラウンドが速く高ければ高いほど、もっと投資すべきだ。なぜなら、それが『機能している』ということだからだ。」これは、市場が評価する企業は、その評価に値する可能性が高いという、ある種の市場効率性を受け入れる姿勢を示唆しています。たとえ高値で参入したとしても、その後の成長で十分なリターンが得られる可能性もあるという視点です。

この対話は、非コンセンサス投資が成功した場合の「爆発的なリターン」と、コンセンサス形成後の「堅実なリターン」という二つの投資機会の存在を示唆しており、VCの投資戦略の多様性を浮き彫りにします。

第3章: 「コンセンサス」とは何か?定義を巡る複雑な議論

「非コンセンサス投資」という言葉自体が曖昧であるため、議論はすぐにその定義へと移ります。マーティンは、自身のツイートが「技術的なツイートではなく、言葉が正確ではなかった」ことを認め、結果として「コンセンサスが何を意味するのか分からない」という状態が生じたと述べます。

特に、Airbnbのような成功事例が初期には「非コンセンサス」だったという意見に対して、マーティンは反論します。彼は、企業が「タフラウンド(資金調達が困難だったラウンド)」を経験したことと「市場コンセンサス」を混同しないよう注意を促します。たとえば、Keith Raboisが挙げたリスト(Airbnb等)を見てみると、それらは「MITの創業者、既知の分野」の企業であり、資金調達額も市場の中央値よりはるかに高かった可能性を指摘します。YC(Y Combinator)出身の企業も多く含まれています。

マーティンは、こうした事例を「この会社は資金調達に苦戦した」という逸話として捉えるのは簡単だが、それは彼が言おうとした「市場は実際には非常に効率的だ」という精神とは異なる、と主張します。もし市場が効率的で、それが良い企業であれば、その価格は高くなるはずであり、それを認識しないのは「市場ではなく自分自身を打ち負かしている」ことになると説明します。つまり、他の投資家よりも「良いディール」を探すのではなく、「良い企業」を探すべきであり、価格がその判断を左右すべきではない、というのが彼の本質的なメッセージです。

レオもまた、Andurilのような企業が「非コンセンサス」と見なされることに対し疑問を呈します。Palmer Luckey(Oculus VRの創業者)のような「2度目の創業者」であり、数十億ドルのExit経験を持つ人物が立ち上げた会社が、本当に「非コンセンサス」と呼べるのか?彼の視点では、それは「コミュニティがいかに内向きであるか」を示しているに過ぎないと批判します。初期の資金調達ラウンドが非常に高価であったことも、その主張を裏付けます。

この議論は、「非コンセンサス」という言葉が、誰の視点から、どの時点での評価を指すのかによって大きく異なることを示しています。表面的な「困難なラウンド」と、真に「市場の誰もが理解していない価値」を見出す非コンセンサス投資とは、本質的に異なるものです。

第4章: 市場効率性と人間の心理:投資の裏側にある二つの顔

VC市場の効率性に関する議論は、さらに深く掘り下げられます。マーティンとレオは、ホットなラウンドの企業が次のラウンドでも成功する傾向があるかどうか、データ分析によって検証しようと試みています。マーティンは、「高いアップラウンドの最も良い相関関係は、前のラウンドがホットだったという事実だ」と仮説を立てています。もしこれが正しいなら、市場は実際にはかなり効率的であり、前のラウンドの投資家が次のラウンドの成功を予見していたとさえ言えます。

しかし、レオは「より多くの機会がどこにあるか」という問いを投げかけます。少数のホットな企業が常に素晴らしいラウンドを繰り返す一方で、数千の「ホットではない」企業の中から、将来的にホットになる企業が生まれる可能性を指摘します。つまり、「誰も見ていない企業を見つけること」と「明らかに良い企業に入り込むこと」のどちらが容易か、という問いです。

さらにマーティンは、「高価格のラウンドでさえ、ホットなディールを過小評価しているのではないか」という興味深い問いを提起します。もしホットなディールが良い企業であるためにホットなのであれば(市場が効率的であるという前提)、そしてその高価格ラウンドがリターンの大部分を占めるのであれば、市場は効率的ではない、なぜならその企業を過小評価しているからだ、という逆説的な見解です。ただし、これには「ゼロになる可能性」というリスク調整の要素が含まれるため、必ずしも過小評価されているとは言えないかもしれません。

この背景には、企業の価値を決定する二つの視点があります。一つは、企業が生産する価値によって決まる「生産的資産としてのビュー(Productive Asset View)」です。マーティンはこの視点に近く、「投資家は非常に賢く、良い会社を知っていて、そのために支払う」と信じています。もう一つは、企業の良し悪しとは別に、「人々が良いと考えるもの」が存在するという「人間の認識(Human Perception)」によるビューです。レオは、この側面もまた真実であると考えています。

この「人間の認識」が特に顕著に現れるのが、セクターの流行です。レオは、自身の10年以上のVC経験の中で、eコマース、AI、ディープテック、防衛、ロボティクスといったセクターが、「寵愛を受けたり、受けなかったり」するのを何度も見てきました。例えば、eコマースのファンダメンタルズが大きく変わらなくても、Dollar Shave Clubのような成功事例が出れば、突然バリュエーションや投資意欲が急騰する、といった現象です。これは、投資の意思決定において、単なるファンダメンタルズだけでなく、流行や集合的な心理といった「人間的な要素」がいかに重要であるかを示唆しています。

第5章: ファウンダーの視点:資金調達のジレンマと「消化不良」の恐怖

マーティンのツイートは、ファウンダーにとっての非コンセンサスであることのリスクについても言及していました。ファウンダーは、18〜24ヶ月以内、あるいはそれよりも早く次の資金調達を行う必要があります。もし皆がその会社をパスしたり、他の投資家がディールしたがらないと公言されたりすれば、次のラウンドに悪影響が出ることは避けられません。

マーティンは、このツイートが引き起こした「社会学的研究」が最も興味深い側面だと語ります。経験の浅い投資家が「大手VCはコンセンサス投資をしている」と誤解したり、レオやKeithのようなデータに基づく議論が展開されたりする中で、彼が最も注目したのはファウンダーからの反応でした。彼は「とんでもない数のDM」を受け取ったといい、その多くが「全くその通りだ」という内容だったそうです。

ファウンダーは、非コンセンサスであることが危険だというこの緊張感を肌で感じています。彼らはVCに合わせる必要があり、VCのパターンマッチングによる反応に日々対処しています。マーティンは、ファウンダーは「実際のプロダクト市場でアルファを得るためには、非コンセンサスでなければならないが、資金調達の際にはコンセンサスに見える必要がある」というジレンマに直面していると結論付けます。

ここでレオは、非コンセンサスであることの「メリット」も指摘します。資金調達が困難な場合、ファウンダーは資金をより倹約的に使う傾向があり、次のラウンドが不確実であれば、企業はより堅実な成長戦略をとると考えます。これに対しマーティンは、「ほとんどの企業は『飢餓』ではなく『消化不良』によって失敗する」という、ピーター・ティールの有名な言葉を引用し、強く同意します。つまり、あまりにも簡単に多額の資金を調達し、実際の市場(顧客ベース)の声に耳を傾けず、多くの悪い習慣を身につけた結果、資金が尽きてしまうという状況です。

特に2021年のVC市場の過熱期を振り返ると、数十億ドルの「ミーム・バリュエーション」で資金調達を行った企業の多くが、結果的に「資本の最大規模の損失」となった可能性が高いとマーティンは推測します。この視点は、コンセンサス投資や過剰な資金調達が、ファウンダーにとって必ずしも良い結果をもたらすとは限らないことを示しています。倹約的な経営が、長期的な成功の鍵となることもあるのです。

第6章: 変化するVC市場:効率化の波と新たな機会

VC市場は時間とともに変化し、より効率的になっているのでしょうか?そして、それが非コンセンサス投資にどのような影響を与えるのでしょうか?

レオの見解は興味深いものです。彼は、非コンセンサス企業にとっては市場がより効率的になっている、と見ています。なぜなら、より多くの投資家が存在することで、何をしようとしているかを理解し、評価してくれる投資家を少なくとも一人か二人は見つけやすくなるからです。一方で、コンセンサス企業、つまり既にホットな企業にとっては、「市場は非効率的になり始めている」と彼は指摘します。10枚のタームシート(投資条件書)が提示されるような状況では、企業の公正価値をはるかに超える価格がつけられることがあり、これはファウンダーにとっては素晴らしいことですが、投資家にとっては必ずしもそうではありません。

マーティンは、コンセンサスがバブル化し、企業が過剰な資金を調達して失敗する「失敗モード」があることを認めます。また、現在のAIブームのように、一部の分野に不必要なほどの楽観主義が集中し、他の優れた企業が資金調達に苦しむ「不必要な悲観主義」が存在する市場の側面も認めます。しかし、全体として「平均的な投資」を見ると、市場は時間とともに「はるかに効率的になっている」と感じていると語ります。より多くの資金がより定期的に投入され、価格が最終的に公正な価格に収束しているという見方です。

AIブームは、この市場の変化を象徴する出来事です。OpenAI、Anthropic、Cursorといった企業は驚異的な成長を遂げており、市場にはそれを後押しする確かなシグナルが存在します。レオも、AI企業の中には過去の成長率の常識を覆すほどのスピードで成長している企業があることを認めます。しかし同時に、AI企業は「モート(競合に対する堀)」が弱いという課題も抱えています。今日1億ドルのARR(年間経常収益)を達成しても、明日には競合の優れた製品によって5000万ドルに落ち込む可能性もゼロではありません。

また、ディープテック分野では、防衛やヒューマノイドロボットのように、短期間で急激なバリュエーションの高騰が見られることがあります。レオは、ウクライナ紛争後の防衛セクターの過熱を例に挙げ、企業のファンダメンタルズが変わらないにも関わらず価格が2~4倍になった結果、投資を一時停止したと語ります。

さらに、市場規模(TAM: Total Addressable Market)の巨大さが投資判断を歪める現象についても議論が及びます。もしターゲット市場が数兆ドル規模の人間労働市場などであれば、どんなに実現可能性が低くても「もし成功したら」という理由だけで、どんな価格でも正当化されてしまう可能性があります。マーティンは、自律走行車産業に1000億ドルが投入されたにもかかわらず、ユニットエコノミクスがUberと同程度であるという現実を挙げ、究極的なユニットエコノミクスに対する明確な「投資論文(thesis)」がないまま投資が行われるケースがあることを指摘します。これは、VCが時に、目先のブームや巨大な市場規模に惑わされ、冷静なビジネス判断を見失う可能性を示唆しています。

第7章: 拡大するアウトカムとファンドメカニクス:ハイリスク・ハイリターンの時代

現代のVC投資においては、成功した企業のアウトカム(Exit時の企業価値)がかつて想像もしなかった規模に拡大しているという現実があります。マーティンは、YouTubeやInstagramが「数十億ドルで買収された高価な買収」と見なされていた時代から、わずか数年で「兆ドル企業」がさらに増えるであろう現在に至る変化を指摘します。

彼自身の創業した企業が12億ドルで買収された事例も、このアウトカムの拡大を象徴しています。当時、ARRが1000万ドル未満での12億ドルという評価は「全くクレイジーだ」と言われましたが、買収から3年半後にはVMware内で6億ドルのランレート、現在では20億ドルに達するビジネスユニットへと成長しました。これは、当時の「高値」が、最終的な成長から見ればむしろ「過小評価」であった可能性を示唆しています。

この現象は、VCが支払う価格が、企業の潜在的なアウトカムに比べて低すぎるのではないか、という問いを生み出します。もしベンチャーキャピタルが常に高いリターンを生み出す資産クラスであるならば、そしてトップの投資がこれほど巨大なリターンをもたらすのであれば、現在支払われている価格はまだ低いとさえ言えるかもしれません。

しかし、この主張には「ファンドメカニクス」という現実的な制約が立ちはだかります。もし勝者には高額な価格を支払うべきだとするならば、ファンドサイズはさらに巨大化し、これまでとは異なる「LP資本(リミテッド・パートナーからの出資)」のプールを解放する必要が生じます。SoftBank、Tiger Global、Insight Partnersといったファンドは、まさにこの仮説に基づき、大規模な資金を調達し、積極的な投資を行いました。これらの「実験」の結果は賛否両論でしたが、マーティンは、彼らの失敗が「価格が高すぎたため」とは必ずしも言えず、マクロ経済サイクルや、彼らが伝統的なシリコンバレーのインサイダーではなかったことなど、他の要因があった可能性を指摘します。

今日のVC業界では、Thrive、Founders Fund、そしてAndreessen Horowitz自身もより大規模なファンドを組成しており、これは「機会が拡大している」ことへの市場の対応と解釈できるかもしれません。レオは、過去20年間で1000億ドル以上の企業はまだ限定的であると指摘しつつも、Stripe、Data Bricks、Coinbase、OpenAIといった企業がAndreessen Horowitzのポートフォリオに名を連ねるなど、その数は決して「稀」ではなくなっているというマーティンの反論を受け入れます。

この章の核心は、「1ドルのVCの利益が、高価格で投資された企業から得られたのか?」というマーティンの問いに集約されます。彼は「勝者は非常に突出しているため、その答えはおそらくイエスだろう」と推測します。もしそうであるならば、「価格裁定」を探すのではなく、「勝者である企業」に投資することこそが、リターンを得る上で最も重要な要素となります。

第8章: VCのアイデンティティと「創造的破壊」の使命

議論の終盤では、VCのアイデンティティと、彼らの役割が社会に与える影響へとテーマが広がります。マーティンは、「多くのVC投資家のアイデンティティが、非コンセンサスであること、つまり他者が見えないものを見抜く能力と結びついている」と指摘します。これは、巨大で潤沢な資金を持つ他のプレーヤーと競争し、ディールを獲得する上で、VCが自己認識を維持するための重要な要素となっています。

このため、彼は「コンセンサス/非コンセンサス」という言葉が個人のアイデンティティに深く関わるため、より客観的に「ホットなラウンドか、そうでないか」「競争的なラウンドか、そうでないか」「企業が機能しているか、いないか」という表現を使うことを提案します。

レオは、もしVCの世界が純粋なコンセンサスによって支配されるようになれば、「資本コスト」が唯一の差別化要因となり、投資の面白みが失われるだろうと懸念します。皆が同じ価値を見出し、最も低いリターンを受け入れる者が勝つという世界では、イノベーションは起こりにくいと彼は考えます。

マーティンはさらに深く掘り下げ、PE(プライベートエクイティ)投資や公開市場投資が「生産性」よりも「予測可能性」を重視する傾向があることを批判します。彼らは既存企業を維持し、成長よりも安定を優先するため、イノベーションを阻害する「負の力」として作用する可能性があると語ります。対照的に、VCは常に「成長」に焦点を当て、ダウンサイドリスクではなくアップサイドに投資するため、「人類にとって純粋なポジティブな力」であると強く主張します。彼は、既存のものを破壊し、新しいものを創造する「創造的破壊」の力を信じており、VCへの資金流入は社会全体の進歩に貢献すると考えます。

レオもこの意見に同意し、iPhoneのボタンレスデザインやUberのような「顧客にとっては非コンセンサス」だった製品こそが、真に破壊的なイノベーションを生み出してきたと指摘します。しかし、マーティンはここでも区別を強調します。「最高の企業自体は顧客にとっては非コンセンサスであるが、投資市場はそれとは異なる」と彼は言います。投資家はグループとして、最終的に破壊的な企業を特定し、投資してきた、という見方です。VCが「愚かだ」「トレンドを追いかけている」と言われることもあるが、全体としては市場の動きは賢明であり、非コンセンサスなプロダクトの価値を見出す力があるというものです。

エリックは、個人のインセンティブとエコシステム全体の利益が必ずしも一致しないという重要な点を補足します。VCはより多くの資本、ファウンダーはより少ない競争を望むかもしれないが、競争こそが製品を向上させ、スタートアップエコシステム全体に価値をもたらす「ダーウィン的なプロセス」であると語ります。「癌を解決するのは、VCにもっとお金が入り、企業に投資されることだ」というマーティンの情熱的な言葉は、VCが単なる金儲けの手段ではなく、社会を進歩させる使命を帯びた存在であるという、彼らの深い信念を物語っています。

結論: 非コンセンサス投資の真実と、未来への問い

「非コンセンサス投資は過大評価されているのか?」この問いに対する単純な答えは、存在しないことが明らかになりました。それは、投資家の経験、ステージ、ファンドサイズ、そして市場の状況によって、その意味合いとリスク・リターンが大きく変わる、多面的なテーマです。

マーティンとレオの議論は、今後のデータ分析によってさらに深まる可能性があります。彼らは現在、「勝者」と「非勝者」にコホートされた企業の資金調達ラウンドが平均的に市場の中央値よりも高価であったか、そしてVCのリターンが主に高価格で投資された企業から得られているか、という2つの主要な指標を検証しようとしています。これらのデータが明らかになれば、市場が価値をどれだけ賢く評価しているのか、そして「価格裁定」ではなく「優れた企業」を探すことがどれほど重要なのかが、より明確になるでしょう。

レオの「私にとって最高の投資は、シードラウンドに時間がかかり、多くの人が理解せず、断ったものだった」という言葉は、非コンセンサス投資が持つ可能性を示唆しています。一方で、彼が「価格のためにパスしてしまった、後に100億ドル企業になった最高の投資」を後悔する経験もまた、価格が最終的なリターンに与える影響の複雑さを物語っています。

最終的に、この議論はVC業界が成熟し、進化している証拠でもあります。個々の投資家やファンドが、自身の戦略とアイデンティティを再定義し、変化する市場に対応しようと試みているのです。非コンセンサスであることの魅力と、市場のコンセンサスに適合することの現実的必要性。この二つのバランスをどう取るか、そして、いかにして真の価値とイノベーションを見出し、社会に貢献していくか。この問いに対する探求は、これからも続くことでしょう。VC業界のダイナミックな進化は、私たちに常に新たな視点と深い洞察を与えてくれるに違いありません。